Secret Kiss ── in the midnight
月光の睫毛がかすかに震えた。
蒼白い瞼の下から、夜空の色をした光彩が現れる。
「────……」
小さくため息をついて起きあがり、オリヴィエは乱れた髪を掻き上げた。肌を滑り落ち
たシーツを目で追うと、安らかな天使の寝顔が目に入る。
「ホントにまー気持ちよさそーなカオしちゃって……」
呆れたような声を出すオリヴィエの表情はこの上なく優しく、そして美しかった。
栗色のくせ毛に指を絡め、感触を楽しむようにもてあそぶ。もぞもぞと小さく身じろぎ
をして、けれどランディが目覚める気配はない。
両肘をついて覆い被さり、やわらかな髪から形の良い額に唇をそっと触れさせた。その
まま小鳥が野原を飛び跳ねるように、意志の強さを表す眉の根元、すっと通った鼻梁の先
端、少し逸れて頬骨にとキスを落としていく。
小さく息を洩らすものの目覚めないランディに愛しさが募る。息だけで笑うオリヴィエ
の瞳がきらりと光り、唇が月の舟の形に引き上げられた。
舌を伸ばし、緩く結ばれた唇の合わせを辿る。無意識のうちに応えるように開かれたそ
こから顔を上げ、代わりに指を押しつけた。
「ちゃんと起きないとあげないよ」
そんなことを言っても起きないのは承知の上だ。一人楽しげに笑みを洩らし、月光に照
らされた頬を撫でて、オリヴィエは再び天使の眠る夢の原へと舞い降りていった。
fin.
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