Secret Kiss ── in the morning
かすかな息苦しさに目を開けると、いつもとは少し違った景色がランディを待っていた。
「え……? っと、…………」
オリヴィエ様、だよな。
自分の腕が他の人を抱いて眠るわけがないのに、思わず確認をしてしまう。
顔を上に上げると、見慣れた金の髪と静かに息をする女神──と呼ぶにはいささか語弊
がある──の穏やかな寝顔があった。
それにしても、この体勢はどうしたものか。
ランディの目の前には、案外と逞しい、オリヴィエの胸がある。つまりオリヴィエが胸
の中にランディの頭を抱え込むようにして眠っているわけで。
「オリヴィエ様……、オリヴィエ、肩冷えちゃいますよ」
腕を伸ばして触れると、白い肩は案の定すっかり冷たくなっていた。
もぞもぞと腕の中から抜け出し起きあがる。女神の瞼に暁の使者が訪れる気配はない。
それでも万が一にも起こしてしまうことのないようにと、ランディはそっと、オリヴィ
エの肩と腰の下に手を入れ力をなくした身体を引き寄せた。
冷たい肩に唇を押し当てる。しばらくそのまま動かずにいると、唇の触れたところに温
もりが戻ってくる。唇の間から熱く濡れた舌を押しつけて、味わうように口づけを繰り返
すと、オリヴィエを温める以上に自分が熱くなってしまいそうで、ランディは慌てて顔を
離した。
自らを落ち着かせるように息をついて、髪を掻き上げる。
白い頬にかかる髪をそっと払って、目尻のほくろに唇を落とした。
シーツを持った手をオリヴィエの肩に回して、端から身体が出ていないことを確認する。
そのまま身を横たえると、ちょうど目の前に穏やかな寝顔があった。
驚いたように空色の瞳が見開かれ、すぐに優しい笑みを湛える。
そっと唇を触れ合わせ、ランディは微睡みの湖畔へと足を踏み出した。
fin.
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