Routine Holiday


 穏やかな陽差しのもとを歩いていると、時折涼やかな風が吹く。絶好のピクニック日和だ。公園の噴水を横目に学芸館に向かうアンジェリークの足取りも、自然と弾むようなそれになる。
「あっ、アンジェリーク! ちょうどいいところにいた!」
 聞き慣れた声に、アンジェリークはバスケットを抱えたまま振り返った。首を傾げると、優しい栗色の髪がかすかに揺れる。
「ランディ様。──おはようございます」
 微笑むと、風の守護聖ランディはアンジェリークの目の前1メートルほどのところで急停止して、しかし走ってきた勢いを殺しきれずにアンジェリークの肩を掴んだ。
「ぅわっ、ご、ごめんっ!」
 小さな悲鳴を聞いて、慌てて放した手を服の裾で拭う仕草をする。濃い栗色の髪からのぞく耳が赤くなっているのに気付き、アンジェリークはかすかに笑みを浮かべた。
「ランディ様? そんなに慌ててどうしたんですか?」
 アンジェリークが促すと、ランディははっとして顔を上げた。
「そうだ! ──アンジェリーク、ゼフェルを見なかったかい?」
「ゼフェル様ですか……? いいえ、今日はまだお会いしていませんけど……」
「そうか……。まったく、一体どこに行ったんだ……」
 顔をしかめて長めの前髪を掻き上げる。朝から走り回って探しているのだろう、額にはうっすら汗が浮かび、わずか癖のある髪の付け根を濡らしていた。
「ゼフェル様が何か……?」
 レイチェルだったら、「ゼフェル様ってば“また”何かやったんですか〜?」と聞いていただろう。ランディとゼフェルの追いかけっこは、聖地名物のひとつである──とは、麗しの女王補佐官ロザリアまでもが言っていることだ。
「え。──あ、違うよ、今日は。別にケンカしたわけじゃなくて。実は今日、マルセルと三人でルヴァ様のところに伺う約束してたんだけど、迎えに行ったら朝早くに出かけたって言われて……」
 ランディは小さくため息をついた。
「寝ぼすけなゼフェルが朝早く出かけるなんて、ぜったい昨夜は徹夜だったに違いないんだ。きっと俺が起こしに来ることを見越してどっかで昼寝してるんだろうけど……まったく、どこ行ったんだろう」
「ああ、それならクラヴィス様のお屋敷じゃありませんか?」
「え? クラヴィス様?」
「ええ。いつだったか、リュミエール様がそんなことを仰っていた気が……」
「そうか。ありがとうアンジェリーク! 早速行ってみるよ! 引き止めてごめんな」
 言うなり走り出して、しかしランディはすぐに身を翻して戻ってきた。
「そういえば、君は今日はどこか出かけるの? この先は……学芸館だよね」
「ええ。ティムカ様とメルさんと一緒に、ピクニックに行くんです。メルさんが見つけた素敵な花を見に行くんですよ」
「へぇ〜、いいな。今度俺たちにも教えてくれるかな。マルセルが喜ぶと思うんだ」
「ええ、もちろん。ティムカ様が、マルセル様にもお声をおかけしたらしいんですけど、──そうか、マルセル様の先約って、ランディ様たちのとお約束だったんですね」
「なんだ、マルセルのやつ、それならそうと言ってくれれば良かったのに。こんなにいい天気なんだもんな。やっぱり屋内で勉強会より、外でピクニックの方がいいよな」
 今からでもルヴァに掛け合えないかと、ランディは真剣に考え始めているようだった。ゼフェルに言わせると“くそ真面目”なランディだが、こういうときにはやはり遊びたい欲求の方が勝るらしい。弟のようにかわいがっているマルセルに、メルが見つけたという花を見せてやりたいという気持ちも多分にあるのだろうと、アンジェリークは頬を緩ませた。
「ランディ様、私、ティムカ様たちと一緒にゼフェル様お探しします。だからランディ様はルヴァ様とマルセル様をお誘いしていただけますか?」
 アンジェリークが提案を口にすると、ランディは空色の瞳を大きく見開いた。雲間から光が射すように、鮮やかな笑顔が満面に広がる。
「ありがとう! じゃあゼフェルのことは君たちに任せるよ。学芸館に行けばいいのかな?」
「そうですね、今日の行き先は湖の方だそうですから」
「よし! じゃあまた後で! ティムカとメルにもよろしく!」
「はい!」
 笑みを交わし、風を引き連れて去っていくランディの後ろ姿を見送って、アンジェリークは青空を見上げた。
 絶好のピクニック日和だ。
 アンジェリークは学芸館への道を走りだした。



fin.





こめんと(byひろな)     2004.5.24

はい、お待たせいたしました! と〜〜てもお久しぶりな(^^;)、アンジェ更新です。
だけどコレ書いたのずいぶん前だけどね……。1年以上……いや、2年近く前!?(^^;)
ひろなもメッセージ作成をお手伝いさせていただいている、ASOこと【Angelique Special Online】の、スタッフ応募の際のスキルシート用に書いたお話のうちのひとつです。
お題は「日の曜日に公園で女王候補と出会った守護聖(教官&協力者)」
……そうなると必然的に、守護聖はランディに(笑)。
や、別に、当初からランディを書かせていただけるということになっていたわけでは全くなかったんですが、かなりの高確率でランディを書くことにはなるだろうと……(笑)。つか、やっぱオコサマ系の方が書きやすいしね……。
で、スキルシートは結局どうなったかというと、──3つあったお題のうち、3つともがオコサマメインになってしまいました〜(爆笑) 。あとの2つも、追々UPしていきますね(1コずつUPで時間稼ぎか相川)。

そんでもって今回UPしたお題その1SS『Routine Holiday』。いつもの休日。
珍しくリモージュでなくてコレットです。おそらく温和ちゃん?(私が温和好みなので) とくにカップリング等は意識せず、みんな仲良しで。
SP2のほうが子供率高いので(笑)書いてて楽しい。わいわい賑やかv こういうオコサマ仲良しな話は書いていてとても楽しいです。純粋に。微笑ましい(笑)。……年寄り臭いコメントだな……(^^;)。

ASOで実際に書くメッセージは、こういう物語の形ではなく、守護聖(教官・協力者)から女王候補への台詞のみなので、また勝手も違うのですが(チェック班のキビシー検閲も入るしね)、参考までに、なんて。
ちなみに、スチル画と違ってメッセージは誰が誰の書いてるか見てすぐには分からないし、誰のどのメッセージはどのスタッフが書いてる、なんて細かく公表はしてないけど、ランディのイベント系メセは、わりかし相川が書いてることが多いです。つかLLEDは相川です(これはメルマガとかで公表されてるからココにも書いちゃう)。4人の女王候補ごとに例えを変えたりとか、楽しかったv(大変だったけど、それ以上に)
よかったら皆さんもプレイしてみてくださいね☆




アンジェTOP    P_Parlor総合TOP    CONTENTS    TOP

感想、リクエストetc.は こ・ち・ら