fioritura「マルセルさま!」 聞き慣れた声に呼び止められて、緑の守護聖マルセルは、淡い金色の髪を揺らして振り 向いた。 すみれ色の瞳に映るのは、金色のくせ毛を風に遊ばせた女王候補と……。 「アンジェ! ──に、ロザリアも……」 呟くと、胸の奥でことりと音がした。いつも凛とした、けれど優しいロザリアに、マル セルはいつしか女王候補に対する以上の親愛の情を抱くようになっていた。 だが、今日のロザリアは少々落ち着きがない。なにやら慌てた様子でアンジェリークを 咎める仕草をしている。 「……?」 マルセルが首をかしげている間に、アンジェリークはロザリアの腕を引っ張って駆け寄っ てきていた。 「ほら、ロザリア! 早く早く!」 「ちょっ、ちょっとアンジェリーク!? 引っ張らないでっ……」 ふりほどくようにぱっと手を放し、まるでアンジェリークの背後に隠れるように一歩後 ずさる。それでも背筋がきちんと伸びているのが、ロザリアらしいと言えばロザリアらし い。 「ロザリア? どうしたの……?」 問いかけると、ロザリアは小さく息を詰め、こほんと小さく咳払いをした。後ろ手に持っ ていた花を差し出して口を開く。 「先日、森の湖の近くを散策していましたら見つけましたの。──以前マルセル様がお好 きだと仰ってたのを思い出して」 「えっ……」 マルセルは目を大きく見開いた。 「それに……マルセル様の、お誕生日の頃に咲く花だと伺ったから」 「…………ロザリア……」 呆然とロザリアを見つめるマルセルに、ロザリアは白い頬を赤く染めて俯いている。 つられて赤くなった頬を押さえながら、アンジェリークが嬉しそうに微笑んだ。 「マルセル様。お誕生日おめでとうございます♪」 「アンジェ……」 「私もプレゼントにクッキー焼いたんですよ。リュミエール様のお部屋でティーパーティ ーの予定ですから、あとで二人で来てくださいね!」 そう言って駆けだして行った背中を見送って、マルセルは再びロザリアに目を向けた。 アンジェリークを呼び止め損ねたロザリアが、マルセルの視線に気づいてまた少し赤くな る。 可愛いな、思ってマルセルは自然と頬がゆるむのを感じた。花のつぼみがほころび始め ているのを見つけた時のような、胸の中があたたかく満たされるような感じがする。 「ロザリア。──ありがとう、僕、すっごく嬉しいよ」 「マルセル様……。喜んでいただけて光栄ですわ」 向けられた微笑みは、まるで綺麗な花のようだった。 fin. |
こめんと(byひろな) 2003.3.9 マルセルくんはっぴぃばーすでーい! ──って、遅い……(^^;)。 すいません、セイランさんといい、周助といい(別ジャンルじゃん)、岩井さんといい(これもまた)もう押せ押せになってます……。でも書きたい気はあるの!! んでもって突然マルロザです。ナゼ(笑)。 ちなみに当初の予定ではリュミマルだったのですが……ってそれもナゼって感じですか?(^^;) マルロザ。マルちゃんの歌『Lily White Lily』(あってる?)はたぶんマルリモがイメージなんだろうとは思うんですが、でも百合ってリモちゃんよりはロザりんのイメージ。──ていうか私的には百合なのはマルセルなんですが……(苦笑)。 なんつーか、ロザリアのほうがリモちゃんよりしっかりしているので、マルセルはロザリアに対しては「お姉さん」な印象を抱いていると思うんですよね。ほのかな憧れというか(笑)。自分がまだ守護聖のみそっかす扱いなのを気にしているのもあり。けどロザリアは、毅然としているように見えてその実けっこう背伸びしている部分が多いので(女王候補時代。特に前半)、それにマルセルが気づけば、マルセルくんの男の子の自覚もより強くなるのではo(^o^)o。 しっかりしてそうで純情なロザリアと、甘えっこそうでけっこう大胆な(笑)マルセル、かわいいCPだと思いますv あ。タイトル解説。『fioritura』(フィオリトゥーラ)はイタリア語で「開花」という意味です。語感が可愛いのと、ふたりのほのかな初恋が花開いた(笑)瞬間にかけて。 |