風の温度


 少し、風の温度が変わったのを、セイランは歩きながら感じていた。眩しい陽差しの似
合う夏から、郷愁を伴う秋へ、そして人恋しさに震える冬へ。
 季節は容赦なく移り変わっていく。
 セイランの周りでだけ。
 たったひとつの大切な思い出、たった一人の大切な人を置き去りに。


 短く息をついて、濃い藍色の髪を掻き上げる。自嘲の笑みを浮かべる青年がいることに
など構わず、季節は移り変わっていく。
「────ィ様」
 ふと肌寒さを覚え、立ち止まった。知らず口をついて出る一つの名前。
『セイランさん』
 ふわり、身体を包み込むあたたかな腕を感じた気がして振り返る。そんなはずはないの
に。
「セイランさん!」
 再び聞こえた幻聴に目を凝らし、人混みの中にその人を見つけた。
 栗色のやわらかな髪が風になびく。
「──やっぱり、セイランさんだ」
 足早に駆け寄りセイランの目の前三歩の位置で立ち止まる。
「ラン……ディ様……?」
「はい」
 記憶の中と少しも変わらない笑顔で、ランディはもう一度セイランの名を呼んだ。
「セイランさん、──会いたかった……」
 両手をセイランに差し伸べて。
 誘われるままに一歩を踏み出すと、次の瞬間セイランはあたたかな腕の中にいた。
 どうしてここに、とか、一体何をやってるのあなたは、とか、言いたいことはたくさん
あったが、心に浮かぶ端から腕の温もりに溶かされていく。
 身体の力を抜いて息をつき、わずかに逞しくなったように感じられる肩に額を押しつけ
目を閉じた。



                                    fin.
  



こめんと(from相川ひろな)     2001.10.9

アンジェ課長及びキラ姫を囲むオフ会(勝手に命名してるし・笑)に参加された皆様に勝手に押しつけた(笑)、噂のカラオケボックス超突発書きSS(笑)。
……ただ単に、ランセイ再会シーンが書きたかっただけ(数多のランセイソングに触発された・笑)。なので、このシーンの前後とかは、全然、まったく、カケラもございません(^^;)。──はっ!(^◇^ ;) これってもしや『やおい』(山ナシ・落ちナシ・意味ナシ)?
ランセイの醍醐味のひとつは、やっぱりこの会えないからこそ募る愛しさみたいなものだと思うのです。会いたくても会えないけど、それでもやっぱり離れていても感じる愛しさ。普段はひねくれたこと言ってばっかのセイランさんも、ふいに再会できたりしたら、こんな風に、素直になってしまったりするよね。

ところで、これ、オフ会に参加した人限定でフリーにしたのですが、そしたら奏さんがUPしてくれた上にイラストつけてくださいました! もう、めっっちゃしあわせですよ! あ、ランディくんやセイランさんはもちろん、ひろにゃんもです(笑)。ここからどうぞ♪




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