雪は降り止まない。四角く切り取られた窓から外を眺めていると、このまま永遠に、す
べてのものが時を止めてしまうかのように思えてくる。 
 こわれた映像装置のように、ひとつの場面を、くり返しくり返し。 
 そんなはずはないのに。 
 振り向いてベッドに歩み寄り、ティムカは床に座ってベッドの縁に身体をもたれさせて
いるゼフェルの頬に触れた。窓に触れていた手の冷たさに、ゼフェルが一瞬顔をしかめる。 
「冷てぇ。────外、寒いんだな」 
「ええ、そうですね。部屋の中はこんなにあたたかいのに」 
 薄手のシャツ一枚でも充分だ。ゼフェルに至っては、先ほどの行為の終わった後、脱い
だ服を手元に引き寄せたものの、そのまま抱えただけでベッドに寄りかかっている。 
「服、着ないんですか?」 
「……たりぃ」 
 本当にだるそうに返事をされ、ティムカは思わず謝罪の言葉を口にした。 
「おまえが謝ることじゃねーだろ」 
 ため息交じりの呟きも、やはりどこかだるそうだ。 
「でも……」 
「おまえさー、王サマなんだろ? そんな腰の低い王サマがいるかよ、もうちっとえらそー
にえばってろって」 
「あなたの前では王じゃありませんよ」 
 真面目な顔で告げると、ゼフェルは口端を歪めて笑った。 
「どっちにしろおめー、すぐに謝りすぎ、イイ子すぎ、オレに気ぃ遣いすぎ。ちったぁわ
がまま言えって、前にも言ったよな。──あ、さっきも言ったか」 
「わがままなら、さっき、一番のわがままを聞いてもらいました」 
 少しも寒くない部屋なのに、身体を包んだティムカの腕をあたたかいと感じる。目を閉
じて、ゼフェルは聞き分けの良すぎる少年王を鼻で笑った。 
「ヘッ。ばーか、そりゃあわがままじゃねぇだろ」 
「そうなんですか?」 
「そうだろ。だってよ、──────」 
 さすがにゼフェルが言いよどみ、床に投げ出した自分の手に視線を落とす。ぼそっと呟
かれた言葉は先刻耳にしたものと同じものだったが、改めて聞くと喜びよりも驚きの方が
大きく、ティムカは思わず腕の中のゼフェルまじまじと見つめ返していた。 
「ゼフェル様……」 
「──っ、だからっ! てめーはとにかく、っ!?」 
 喚いて立ち上がったゼフェルの身体を、再びティムカが抱きしめた。 
「ありがとうございます。──じゃあ、さっそく、ひとつわがまま言わせてください」 
「お、おぅ」 
「──もう一度、あなたに触れたい」 
 ゼフェルは一瞬言葉をなくし、紅い瞳が対応を決めかねたままティムカを見つめた。 
「……い、今?」 
 やがて返った問いに、ティムカはくすりと笑いをもらす。 
「冗談です。──でも、今のはわがままでしたよね?」 
「おまえな……。────まぁ、ま……な」 
 さすがに今はカンベンな。眉を寄せて、ゼフェルがぼそりと呟く。 
「はい」 
 聞き分けの良い返事をして、首すじに顔を埋める。 
 そのままティムカは、しばらくの間、ゼフェルの身体のあたたかさと、ぶっきらぼうな
手がぎこちなく髪を撫でる感触を静かに受け止めていた。 
  
  
 数日後。ようやくアンジェリークが回復した。旅が、再開されるのだ。終幕に向けて。 
「──いよいよ、だな」 
「ええ」 
 永遠の雪に閉ざされた街を発つ日を明日に控え、ティムカとゼフェルはひとつの窓から
夜空を見つめていた。 
 明日になれば、また闘いの日々が始まる。その先にある終幕のために、元通りの、日常
のために。 
 ゼフェルは聖地で鋼の守護聖に、そしてティムカは国に戻って、王位に就く。 
 今度こそ、もう会うこともないだろう。 
 けれどせめて、今だけ、ここにいる間だけ。 
「──するか?」 
 黙って口づけを受けたゼフェルが、低く息をひそめて尋ねた。 
「いいえ。明日は久しぶりの移動ですから、無理をさせたくありません」 
「へっ、相変わらずイイ子ちゃんな発言だな」 
「わがままは、そのうち言いたくなった時に言わせてもらいますから」 
  
  
 あなたの優しさを、あなたの熱さを覚えていたい。 
 暖炉の炎を映して揺れる瞳を、この雪に似た色の髪を。 
 あなたを奪いつくしたいと思ったことも、優しく抱きしめて口づけたいと思ったことも、
すべて。 
 この雪の中で感じたすべてのことを、僕は一生、忘れない。 
  
  


                                       fin.

   



こめんと(byひろな)     2001.4.7

りっひ〜に踏まれてしまった4000HITのキリリクは、なんと『ティム×ゼー18禁』でした。
ティムカの年は、13才でも16才でもどっちでも良いよと言われたのですが、どうせなら(?)13才で、と、…………しかし13才×17才の18禁て、どうよ?
なんか思ったより長くなってしまいました。えっちし〜んが(苦笑)。
しかも危うくりっひゃ〜が読めないくらいにヤバイ話になるとこだったし(汗)。
リクエストした本人が読めない話を書いてどうする、って感じで。
いや、無事にティムカちんが戻ってきてくれて良かった良かった。
しかし一応の資料として天レクのメモリアルブック見てたんですが、 オフィシャルの天レクティムカはまだ素直で可憐な(?)王太子様なのですよね〜。 トロワの腹にイチモツもニモツもありそ〜な男とは違って☆(爆)CDドラマ『虹の記憶』のティムも、素直なイイ子なのに……て、別にうちのティムやトロワティムが悪い子だと言うわけではありませんが(^^;)。
でもなんかトロワティムの片鱗が垣間見えてますね。もう会うこともないだろうとか 言っちゃって、会っちゃうし。
──どうします、わがまま言っちゃうらしいですよ?(笑)


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