Cotton Kiss


「あっ! ランディ見て、たんぽぽが咲いてるよ!」
 弾んだ声とともに腕を引かれ、ランディはマルセルの指差す先に見た黄色い花に頬を緩
ませた。
「ほんとだ。たんぽぽ見るとさ、春が来たんだなって気がするよな」
 もっとも聖地じゃいつでも春だけど。言ってランディが肩をすくめる。おどけた仕草に
微笑みを返して、マルセルは風に揺れるたんぽぽの正面にしゃがみ込んだ。覗き込むよう
に首を傾げると、細いはちみつ色の髪が華奢な背中を滑り落ちる。眩しそうに目を細めて
から、ランディもその隣に並んだ。
「ぼくの育ったトコね、ちょうどぼくの誕生日の頃にたんぽぽ咲くんだ。だからたんぽぽ
見つけると、もうすぐ誕生日が来るんだって思ってうれしくって」
「へえ、そうなんだ。ずいぶん早いな。俺の故郷じゃその頃はまだ寒くてコートが手放せ
ないよ。──たんぽぽが咲くのは、……う〜ん、そうだな、4月か……ああ、3月の下旬
くらいから咲いてたかな」
「へえっ、じゃあちょうどランディの誕生日のあたりだね」
 相づちを打って、マルセルがふと瞳を輝かせた。
「あ! じゃあたんぽぽって、ぼくたち二人の誕生日をお祝いしてくれる花なんだね!」
「ハハッ、そうだな。俺の故郷では俺の誕生日の頃に咲いて、マルセルの故郷ではマルセ
ルの誕生日の頃に咲くんだもんな。──嬉しいな、こんなマルセルみたいに可愛い花に祝っ
てもらえるなんて」
「えっ?」
「たんぽぽって、マルセルに似てないか?」
「そ、そう?」
「うん、似てる。明るくて、元気があって、可愛くて、見ると幸せになる感じ」
 にっこりと幸せそうに微笑まれて、マルセルの頬がかぁっと染まった。
「俺に元気を分けてくれる、太陽みたいなんだ」
「そうなの? ん……ありがとう。でも、ぼくにはそれは、ランディだけどな」
 続いた台詞に、マルセルが返した。
「あったかくて、強くて優しくて……。あのね、お花さんたちにお陽さまが必要なように、
ぼくにはランディが必要なんだよ?」
 ちょっと恥ずかしかったけれど、ちょっとだけ意識して言葉を選んでみたりする。ちら
り隣を見てみると、案の定ランディは赤くなっていた。
 やわらかく風に揺れる栗色の髪を掻き上げるように掴んで、困ったような顔で俯いて、
そして照れ笑い。
「──うん」
 向けられた微笑みに、マルセルもまた同じように笑みを返す。
 寄り添う二人の脇を風が通り過ぎ、たんぽぽの茎を揺らして綿毛のついた種を連れていっ
た。



                                        fin.


こめんと(by ひろな)          2002.4.24

はい、めさめさ久しぶりの、ラン誕企画更新です(滝汗)。──ランディごめんよう…………。
ちょっとどっかの中学生によろめいたりしていましたが(笑)、アンジェだって、まだまだ続けますよ!!
というわけで(?)、ランマルです。──書いたのずいぶん前なんですが。っつーか前回UPしたランセイと同じくらいに書き終わってはいたのですが。微妙に気に入らないところに手を加えたりしているうちに、こんなに遅くなってしまいました。でもいまだにちょっと微妙(-゛-;)。
ランマルは可愛く!がモットーです。らぶらぶです(笑)。春の陽差しの下でピクニック、なイメージ。もしくは幼稚園生のおままごと(爆)。いや、たぶん今時の幼稚園児の方が進んでいるかも知れません(^^;)。
そんでもって、花にたとえるならやっぱりたんぽぽかな。ひまわりもいいけど、たんぽぽの方がかわいいので。最初に書いたアンジェ話(ランマル『一言の勇気』)も、UP時に選んだ壁紙はたんぽぽの綿毛でした。最初っからイメージができあがっていたらしいですね。
ほんとはね、タイトル通り、ふたりにキスをしてもらおうと思っていたので。キスとは言っても、ほっぺにチュvで(笑)。 しか〜し〜、それすら恥ずかしくて書けませんでした〜〜(爆笑)。いや恥ずかしいんですよランマルって! 手ぇつないでんのとかだけでも恥ずかしいくてかわいいの。それがランマルの醍醐味(*^_^*)。どっかのイロモノカップルなんか、何百倍も(?)すごいことやってんのに全然恥ずかしくないのに。うひゃん!(謎)
次こそはランマルほっぺチュを!


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