glowing


 どんなに、恵まれた環境で、どれだけ平和なところで暮らしていたか、思い知らされた。

『俺、君を守るよ』

 この剣は、聖地を、陛下を、──愛する人を守るためのもの。

『俺は、君を守れる男になる』

 あの誓いは嘘じゃないけれど。

 栗色の髪をぐしゃりと掻き上げ、そのまま手を止めて。
 ランディは細く長く、息を吐き出す。

 ──守れなかった。君を。

 この剣は、
 宇宙の平和を脅かす敵を、君を傷つける敵を、倒すためのもの。


          *    *    *


「オスカー様!」
「どうした、ぼうや」
 アイスブルーの瞳を見上げ、口元を引き締める。
「剣の稽古をつけてください。お願いします!」
「──フッ、いいだろう」

 この剣は。
 君を、守るため。
 敵を、倒すため!

「──!」
 剣を握った手に鈍い痺れが走る。ランディは地面に突き刺さった剣を呆然と見やった。
「フ、惜しかったな」
「──ありがとう、ございました」
 まだ、右手が痛い。
 左手で剣を抜き、どさりと地面に座り込む。
 と、オスカーの手が伸びて、やわらかな栗色の髪をくしゃりと掻き混ぜた。
「わわっ」
「──髪、だいぶ伸びたな」
「切った方が、いいですか?」
 オスカーはひょいと肩をすくめた。
「邪魔になるようならな」
 踵を返して遠ざかる背中を、無言で見送る。
「────ランディ、」
「はい」
「──次は、俺を殺す気で来い。いいな」
「!? ──はいっ、ありがとうございます!」
 立ち上がり、去っていく背中に向かって頭を下げた。


     *    *    *


 ばさりとマントを後ろに払い、腰に帯びた剣を確かめて。
 ランディは歩き出す。
 真っ直ぐ前を見据えて。
 空色の瞳に、新たな決意を込めて。

 この剣は、君を守るため。
 君の守る世界を守るため。

 女王陛下の剣となり盾となり、宇宙を、陛下を──君を守る。


                                        fin.


こめんと(by ひろな)          2002.3.11

はい。今年もランディ様BD企画はいたします。もちろん!
で、第一弾のこのお話、実は書いたのは、か〜な〜り、前です。半年……いや、もっと前かな? ちょっと諸事情によりUPがずいぶんと遅くなってしまいました。
これは、女王陛下に忠誠とそれ以上の愛を誓う、ランディのお話。私のランリモ観は、実はこういう感じだったりします。たとえばパラレルで学園ものだったりしたら、いかにも幸せな家庭を築いてフツーに幸せな暮らしをしていそうな二人ですが、それが女王陛下と守護聖という立場だった場合、ランディは、やはり守護聖としての自分を取ると思うのです。私のランディは、“したいこと”より“すべきこと”に準じて動く人なので。女王陛下に永遠の忠誠を誓う。それが恋するほどに愛した人ならなおさら。
そうしたら、そんなランディにとって、天レクの、女王陛下と補佐官がさらわれたという出来事は、とても大きなダメージになるのでは。大切な人は自分の手で護りたいランディにとって、たった一人の愛しい人を──女王陛下を、護ることができなかったという事実は、もともと向上心の強い彼が更なる向上・成長を望むようになるには充分すぎる動機だと思います。それが、sp2〜トロワのランディ急成長の原因、と。まあ、そのワリにはトロワのランディくん、見てくれはスゴイ成長してるのに中身は成長してるんだかしてないんだか、って感じですが(^^;)。
前述の通りUPはとても遅くなってしまいましたが、このお話、私が初めて書いた“ランディ視点”のお話だったりします。このあたりから、書きたいもの、私が書いていかなきゃいけないもの、というような形が、何となく見えてきたような気がします。──驕りかも知れないけれど、きっと私にしか描けないランディ像というものは、存在すると思うのです。
至らない点も多々ありますが、それでも私はこれからもランディを書いていきたい。アンジェリークというゲームの世界を、その中に生きる人々の物語を、その生を、描いていきたい。そう思うのです。


BACK




Parody Parlor    CONTENTS    TOP

感想、リクエストetc.は メールフォーム