春一番


「今度はまた、ずいぶんと元気のいいのが来ましたね……」
 窓の外を見下ろして、肩をすくめてオスカーが呟く。
 腕を組み、窓に並ぶようにして壁に背を預けるという、行儀が良いとは決して言えない
その姿勢に、部屋の主はかすかに咎める眼差しを向けた。
 いや、もしかするとそれは、どこかからかいを含んだその口調に対するものだったのか
も知れない。
「オスカー、」
「16にしては幼く見えますね。少し、故郷の弟を思い出します」
 言ってオスカーは、部屋の主の金の髪を見つめてかすかに目を眇めた。
「主星の出身だそうですね」
「……ああ、そのようだな」
 静かに返して、ジュリアスは机上の書類に取りかかるのをやめ、立ちあがるとオスカー
の隣に並んで窓の外を見やった。窓の下では、栗色の髪の少年が一人、幼い子供たちの相
手をしている。窓を閉じていても、時折笑い声が聞こえた。
「オスカー。そなた、ランディに剣の稽古をつけてやることにしたそうだな」
「ええ。──なかなか面白いですよ」
 口端を歪める笑い方に、紺碧の瞳が問いかける。
「何でも、早く立派な守護聖になりたいんだそうです。あれもこれもといっぺんにやるの
は無理だからまずひとつ選べと言ったら、迷わず剣を選びました」
 そう言って、その時の様子を思い出したのか、オスカーがまた笑みを浮かべた。
「見かけはあんなボウヤですが、芯は強そうですね。鍛え甲斐がありそうです」
「ああ。先日少し話をしたが、意志の強い良い目をしていた。守護聖としての自覚も充分
にあるようだ。その意欲をうまく導いてやれるよう、そなたも気にかけてやってくれ」
「ええ、もちろん。我々の新しい仲間ですからね」
 自信に満ちた表情でオスカーが答え、ジュリアスが無言で頷きを返す。
 その厳格さにより皆に畏怖されている光の守護聖は、今はその美しい横顔に穏やかな微
笑みを湛えている。表情を和らげたオスカーも、ジュリアスの視線を追って再び窓の外へ
と目を向けた。
「勇気を運ぶ風の守護聖、か。あいつに似合いですね。──この季節にも」
 女王の力に護られ常春と言われる聖地にも、穏やかな四季の巡りが存在する。
 ランディが聖地にやってきたのは、春の息吹を感じさせる、さわやかな風の吹く日のこ
とだった。




                                        fin.


こめんと(by ひろな)          2002.3.28

は〜い、ランディ様お誕生日おめでとうございま〜〜っす!!\(^o^)/
と、いうことで(?)。前回は退任間近なランディ様でしたが、今度は新任ほやほや(笑)なランディ様です。皆さんも頭切り替えてくださいね〜(笑)。
このお話は、私がアンジェパロディ小説を載せたサイトを作るきっかけにもなったお二人の方へ捧げさせていただくために書いたものです。──例によってオフ会に向かう途中で書いていたのですが書き終わらなかったのですが(学習能力無し)。そのお二人がジュリ様FANとオスカー様FANだったこともあり、自然と登場人物はこの三人に。っていうかオスカーとジュリアスだけに近い(苦笑)。ランディ様は子供らと戯れています(笑)。
ホントは軽口叩くオスカーさんとか、色々とネタを混ぜ込みたかったのですが、テンポ悪くなる……というか収集つかなくなりそうなのですっぱり切ってしまいました。そしたらこんな短くなっちゃった(^^;)。ま、いっか?(よくない?)


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