姫君と三人の騎士(前)「気に入らないねぇ……」 腕を組み、アイシャドウとアイラインとマスカラとで美しく飾られた瞼を半眼に伏せて、 オリヴィエが呟いた。 「……何がだ」 問い返すオスカーも、こちらはもちろんノーメイクだが、似たような表情をしている。 「わかってるんでしょ」 思いっきりイヤそうに眉を歪めて、オリヴィエが冷たい視線を返す。 「──────────あの、ぼうやのことか」 別に、“あのぼうや”が気にくわないわけではない。いや、むしろ自分を慕ってくっつ いてくる様は微笑ましく、弟のようにかわいいとさえ思う。 気にくわないのは。 彼ら二人が何よりも──ここだけの話、女王陛下よりも──大切にしているリュミエー ルが、新入りの子犬をことのほか気に入っているらしい、ということである。 「──どうかしたのですか? お二人とも、難しい顔をなさって」 かの人の奏でる楽にも似た美声に、二人ははっとして顔を上げた。そこに立っていたの は、腕にハープを抱えた、たおやかな水の麗人。──二人の想い人その人である。 「リュミちゃん、──どうしたの?」 オリヴィエが尋ねると、リュミエールはにっこりと花のような笑みを浮かべた。 「ええ。もうすぐお茶の時間ですから、あなたたちを誘いに来たのですよ」 「なんだ、もうそんな時間なのか?」 純粋に驚いた様子のオスカーに、リュミエールも驚いて首を傾げる。 「ええ。──ご存じなかったのですか?」 呆然とする二人を前に、リュミエールは再び、くすりと微笑みをこぼした。 「ふふっ、ずいぶんと熱心に話し込んでいらしたようですね」 熱心にというか、必死にというか。 二人がちらりと視線を見交わしたとき、遠くから、リュミエールさまぁ────!と呼 ぶ声が聞こえた。三人そろって振り向いた先には、手に何やら籠らしきものを抱えた元気 な子犬──もとい、新入りの風の守護聖ランディが駆け寄ってくるのが見える。 「リュミエール様っ──あ、オスカー様オリヴィエ様も、こんにちは! リュミエール様、 これ、さっきディア様がくださったんです。もうすぐお茶の時間ですよね、良かったら皆 で食べませんか?」 「おや、これはハーブクッキーなのですね。では今日は、クッキーのハーブが活きるよう に、ストレートティーにしましょうか」 「はいっ! じゃあ俺、ルヴァ様にもお声かけてきますね!」 「ええ、おねがいしますね。──いっていらっしゃい」 来たときと同じく、あっと言う間に小さくなる背中を見送って、オリヴィエが呆れたよ うに溜め息をついた。 「おーおー、ずいぶんとなつかれちゃってまぁ……」 美しく整えられた眉と同じカーブを描く口元から察するに、呆れているのではなく拗ね ているようである。 「オリヴィエ? どうしたのですか? ランディが何か……」 「さあ、行こうリュミエール。こんなヤツは放っておけばいいさ」 「ですがオスカー」 いいからいいから、と肩を抱いて歩みを促すオスカーを、オリヴィエがキッと睨みつけ る。 「ちょっとオスカー! アンタ何どさくさに紛れてリュミちゃんに触ってンのさ!」 「おまえの目はフシアナか。これはエスコートしてるって言うんだ」 「エスコートしてる、ですってぇ〜!? ──手つきがやらしーんだよその手がぁっ!」 「あの、オスカー、オリヴィエも……。私は女性ではありませんから、エスコートの必要 はありません。──先に行って準備をしていますから、ちゃんと仲直りをしてから来てく ださいね」 オスカーの手をはずして二人を見比べ、リュミエールはわかっているのかいないのかわ からない発言をする。しずしずと去っていく後ろ姿を呆然と見送り、二人は同時に溜め息 をついた。後半戦に続くッ! こめんと(by ひろな) 2001.5.3 ぐはぁ〜っ!(吐血)ごめんなさいいいいい〜〜〜っっ!! ランリュミ、終わりませんでしたぁ〜っ! なので、とりあえず書けてるトコで、キリのイイトコまでをUP。おい、これのどこがランリュミじゃ〜っ!?とか言われそう(^^;) しかし最後までいってもランリュミ未満くらいで終わる可能性大(爆)。 と、とりあえず、なるべく早めに続き書いてUPします……。 |