恋人へのご褒美

──written by 平 遊@Fairy Pack's Trick



(あっ・・・)
 やっと訪れた日の曜日。
 朝早くから目が覚めて、ランディはいそいそとオリヴィエの私邸へと向かった。
 だが、たどり着くより早く、向こうから歩いてくる人影に気づき、大きく手を振る。
「オリヴィエさま〜っ!」
 小さく手を振り返してくれたオリヴィエに嬉しくなり、ランディは駆け寄って声を掛けた。
「おはようございます!・・・こんな早くからどこへ行くんですか?」
「ん?買い物に行くんだよ。あんたと一緒に☆」
「えっ・・・」
 当然のように答えるオリヴィエに、ランディは暫し戸惑う。
(あれ・・・俺、約束なんて、してたかな・・・)
「ん?行きたくないの?なら別にいいけどね。ワタシ1人でも。」
「あっ・・・いや、その・・・行きますっ、俺、オリヴィエ様と一緒に行きます!」
 慌てて返事をしながら、ランディは“しまった!”と、顔をしかめた。
 オリヴィエの顔に、してやったり、の笑みが浮かぶ。
「じゃ、行こっか、荷物持ちくん☆」
「・・・・はい・・・」
 意気揚々としたオリヴィエに腕をとられ、ランディは大きな溜息を吐きながら、転送装置へ
と向かった。


「オリヴィエ様が、好きなんです。」
 まっすぐに、宝石などよりよっぽど美しいと思えるオリヴィエの瞳を見つめて、ランディが
そう告げたのは、もうだいぶ前になる。
 守護聖同志とか。先輩として、とか。
 そんな感情ではごまかしきれないと感じ、思い切って告白したのだ。
 対する答えは、何ともオリヴィエらしいもの。
「・・・あと先考えずに突っ走るあんたの行動力には、さすがのワタシもお手上げだね。」
 言葉通りに、軽く両手を上げて肩を竦め、オリヴィエはランディに言った。
「そんなに好きなら、ワタシをあんたの虜にしてごらん?言っておくけど、そんなに簡単には
いかないからね☆」
 以来、ずっと続いている、日の曜日ごとのデート。
 オリヴィエと一緒にいるのは、ランディにとってはこの上ない至福の時、なのではあるが・・・
「・・あの・・・まだ、買うんですかぁ?!」
「な〜に言ってんの、こんなの序の口。ほら、グダグダ言わずにさっさと来る!」
「・・・はぃ・・・」
 さすがのランディも、オリヴィエの買い物に付き合うのだけは、どうにも苦手であった・・・。


「はぁ・・・・」
 ようやく、オリヴィエの欲求が収まり、近くのカフェに落ち着いたのは、日も暮れかけた頃。
 ランディの両手には、抱えきれない程の紙袋の山ができあがっていた。
「お疲れさん。ご褒美に奢ってあげるよ。何飲む?」
「え・・・っと・・・」
 額の汗を拭いながら、オリヴィエが差し出すメニューに目を落とし、ランディは多数あるメ
ニューの1つに目を留めた。
「トロピカルフレーバースペシャルにします!」
「オッケィ。じゃ、ワタシは・・・」
 ウェイトレスの女の子に声をかけ、手早く注文を済ませると、オリヴィエはぐったりとして
いるランディを眺め、微笑んだ。
「だっけど・・・よく、こんな大荷物抱えてついて来たもんだね・・・まったく、驚いちゃうよ、あ
んたには。」
「・・・・だって、オリヴィエ様が、こんなにたくさん買うから・・・」
「バカだねぇ。ワタシは、あんたがいつ根を上げるかと思って、わざとかさばるものばっかり
たくさん買ってたんだよ。気づかなかった?」
「え・・・・えぇぇぇぇっ!」
 ランディの素っ頓狂な声に、すぐ側に居たウェイトレスが、驚いて飛び上がる。
「ランディ・・・」
「あっ、ごめんなさい!」
「いいえ。」
 オリヴィエにたしなめられ、慌てて頭を下げるランディにクスクスと笑いながら、ウェイト
レスはランディの前に鮮やかな液体の入ったグラスを置いた。
「トロピカルフレーバースペシャルです。」
「わ、ぁ・・・・」
 ピンクと黄色は、オリヴィエの髪の色と同じ。
 淡く霞かかったような淡いブルーは、まるでオリヴィエの瞳のよう。
「戴きます!」
「はい、どうぞ。」
 おそるおそる手を伸ばしてグラスを持ち上げ、何故だか妙に緊張しながら、ランディはグラ
スの中身を口に含んだ。
 とたん。
(・・・・わぁ・・・おいしい・・・)
 口いっぱいに広がる、フルーツの香り。
 さわやかで、ほんのりと甘く、それでいてすっきりしていて・・・
「ねぇ、どんな味?」
「え?」
 じっと見つめるオリヴィエの視線にドギマギしながら、ランディは思わず口に出していた。
「オリヴィエ様みたいな味です。」
「・・・は?」
「・・・あっ・・・いえ、あのっ、そのっ・・・」
「ふふっ・・・」
 初めこそ、あっけにとられていたオリヴィエだが、すぐに口元に笑みを浮かべ、頬を朱に染
めて焦るランディを手招く。
「なっ・・・何ですか?」
 素直に中腰になり、顔を寄せたランディの耳元で、オリヴィエは囁いた。
「ワタシにも、味わわせてよ、ワタシの味のジュース。」
「いいですよ。」
 さっとグラスごと差し出す腕を止め、ランディの隣に移動すると、さりげなく体で死角を作
りながら、ランディの唇を人差し指でそっとなぞる。
「あんたの口から、飲ませてよ。ワタシ味のジュースを、さ。」
「・・・お、オリヴィエさまっ?!」
 オリヴィエの言葉に。見つめる視線に。
 ランディの心臓はもう、爆発寸前で。
「ほら・・・早く☆」
 導かれるままに、再度ジュースを口に含むと、ぎこちない動作で、薄く開かれた形の良いオ
リヴィエの唇を塞ぎ、中身を注ぎ込む。
 その間、たったの数秒。
 何も考えられず、目をつぶることさえ忘れて、ランディは目の前の長い睫をただただ見つめ
ていた。
 やがて、溜飲の音と共に、オリヴィエの瞳が開かれ、すっと唇が離される。
「ん、おいし☆。程良く合わされた色んなフルーツ味と、あんたの唾液が織りなすハーモニー
が・・・」
「オリヴィエさ・・・」
「ランディ。」
 長い指が、声を上げかけたランディの口を塞ぐ。
「人の言葉を遮る時は・・・kissが一番効果があるんだよ・・・試してみる?」
(・・・俺・・・誘われてる・・・?)
 混乱した頭でやっとそれだけを理解し、誘うように瞳を閉じて待ち受けるオリヴィエの唇に、
ランディは再び口付けた。
(“恋人”として、認めてもらえたのかな・・・)
「・・・んふ、頑張ったあんたに、ワタシからのご褒美。・・・気に入ってもらえたかな?」
 ぺろりと唇を舐めながら、ニッコリと笑うオリヴィエに、ランディは頬を染めながらも思い
切り頷いた。
「もちろんです!」
「そ、よかった。じゃ、またお願いね☆」
 極上の笑みを浮かべ、オリヴィエは伝票を掴み、さっと立ち上がる。
(え・・・・・また、って・・・・えぇぇぇっ!それって、一体・・・どっちの事、なんだろう・・・???)
「待って下さいよ、オリヴィエ様〜!」
 情けない声を上げ、両手に荷物を抱えてランディはオリヴィエの後を追いかける。
「ほら、早く来る!ワタシの荷物持ちは、あんたしかいないんだからね☆」
「・・・え・・・それって・・・」
 喜んでいいやら悲しんでいいやら。
 複雑な表情を浮かべるランディに構うことなく、オリヴィエは颯爽と歩いてゆく。
(しっかし・・・何ともぎこちないキスだね。今度ワタシがじっくり教えてあげなきゃ。)
「オリヴィエさま〜、待って下さいってば!」
 背後からヨタヨタと追いかけてくるかわいい恋人の声に、オリヴィエはクスリと小さく笑い
を漏らした。

                              Fin



さんくすめっせーじ(by ひろな)     2001.7.19

いやんv もう、ランディってばかわいいvv
遊王子と、互いの萌えカップリングを交換して書いてプレゼントし合いましょうということになって、先にいただいてしまった風夢ですぅ〜v る〜らった〜っ♪(笑)
意気揚々とお買い物をするヴィエ様と、荷物係のランディ(笑)。その場面を想像するのは難しいことではありません(笑)。萌え萌えv 余裕ありまくりなヴィエ様がカッコいっすね。でもちゃ〜んとランディのこと好きなのねv(きゃv)
“トロピカルフレーバースペシャル”私も飲んでみたいです。オリヴィエ様の味か……じゅる(爆)。てゆーかランディ、出たな、どかーん!てな発言で、笑わせていただきました。専属荷物持ちに命名されて、嬉しいやら悲しいやらなランディの表情、目に浮かびます(笑)。もう、この子ってばすぐそういう顔をするから、ついついからかいたくなっちゃうんだよね〜♪(by夢様)
遊王子、ホントにホントにどうもありがとうございました。風夢2も楽しみにしていますv
ひろなもがんばってチャーオス書きますよ!



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