Lesson of Body Communication

──written by 平 遊@Fairy Pack's Trick



「ランディ、これをオリヴィエの所まで届けてくれないか?」
 オスカー様にそう言われて、断れる訳が無い。
 日頃お世話になってるし、何よりオスカー様は俺の頼もしいアニキ分だし。
 でも。
 本当は嫌だったんだ。
 オリヴィエ様の所へ行くの。
 オリヴィエ様が嫌いだ、っていうんじゃないんだ。
 その逆。
 好きだから。
 ずっと、憧れている人だから。
 私邸なんて行ってしまったら。行って2人きりなってしまったら。
 俺は何を口走ってしまうかわからない。
 だから、すごく嫌だったんだけど・・・
「あ〜ぁ・・・早く届けて、さっさと帰って来よう・・・」
 溜息を吐きながらも、俺は緊張した面もちで、オリヴィエ様の私邸へと向かった。


(・・・留守なのかな?)
 いくら呼び鈴を鳴らしても、誰も出てくる気配がない。
(じゃ・・・留守だった、って事で・・・)
 いくらかかるくなった気持ちのまま、その場から立ち去ろうとした時、背後で扉の開く音が
した。
 振り返った先に見えたのは、扉から顔だけ出しているオリヴィエ様。
(・・・お、オリヴィエ様っ?!)
「誰?・・・あぁ、ランディ。ごめんね、ちょっと今、みんな出払っちゃっててさ。さ、入って。
ワタシしかいないから、遠慮はいらないよ。」
(・・・い・・・居たのか・・・でも・・・えっ!い、イキナリ2人っきり?!・・・どどど、どうしよう・・・)
 突っ立ったままの俺に、再び扉が開き、オリヴィエ様が顔を覗かせた。
「ランディ?何してんの。ちょっと今、ワタシ手が離せないから、早く入って。」
「は、はいっ!」
 思わず裏返った声で返事をし、仕方なく、俺は言われるままに中へと入った。
 入った、はいいが・・・
「なっ・・・・!!!」
 閉じた扉に背を押しつけ、俺はそのままオリヴィエ様の姿に釘付けになった。
 きっと、着替えの途中だったんだ。
 オリヴィエ様の体のラインは、薄い部屋着を通してはっきりと浮き上がり、俺の脳裏に焼き
付いてしまった。
 慌てて目を逸らしたって、もう遅い。
 頭の中には、何故だか部屋着を取り払ったオリヴィエ様の裸体がクルクルと回っていて、い
くら頭を振ったって、全然消えてなどくれない。
「・・・そんなところにへばりついて、何してんのさ?早くおいでったら。」
「・・・・はぁ・・・・」
 おいで、と言われても・・・
 冷や汗が、背筋を伝う。
 ギリギリの所で、体の反応は抑えられている物の、この先部屋の中にまで入ってしまったら、
俺は一体どうなってしまうだろう?

 聖地に来た時から、オリヴィエ様は俺の憧れだった。
 いや、理想の女性像に、限りなく近い人だったんだ。
 オリヴィエ様が男であるってことは、もちろんその日の内に分かったけれど、それでも、初
めて見た時のあの感動は、その後もずっと俺の中に残っている。
 オリヴィエ様を、女性として見ている訳では決して無いけれど、そんなこと、到底できやし
ないけれど、それでもオリヴィエ様は、俺にとっては恋愛の対象である事には間違いなくて。
 もう、先輩守護聖として尊敬しているとか。
 そんな事では誤魔化せない位、俺はオリヴィエ様が好きだから・・・
(どど・・・どうしよう・・・?)
「ラ〜ンディ〜!は・や・く☆」
 きっと、俺をからかっているのだろう、オリヴィエ様の甘い声。
 ・・・俺はめちゃくちゃ、この声に弱いんだ・・
「は・・・はいっ!」
 またも裏返ってしまった声で大きく返事をし、俺はおそるおそる、オリヴィエ様の入っていっ
た部屋へと足を踏み入れた。


「ね、ちょっとこれ、留めてくれない?」
 部屋に入るなり、オリヴィエ様は俺に、無防備な程にはだけられた背中を晒し、ファスナー
の上のホックを指し示す。
(・・・抱きたい・・・)
 限界だった。
 もう、我慢できない、抑えられない。
 これ以上、オリヴィエ様に近づいてしまったら、俺はっ!!!
「・・・できません、俺・・・」
 一歩後ずさり、俺は小さく謝った。
「え・・・?」
 怪訝な顔をして振り返るオリヴィエ様の顔を直視できずに、俺は俯いて唇を噛みしめた。
「・・・できないんです、俺には・・・」
「・・・・なーに、言っちゃってんの?たかだかホック閉めるだけじゃない・・・それとも何?ワタ
シの頼み事が聞けないっていうの?」
「そ、そうじゃなくって!」
 慌てて大きく首を振るが、どうもオリヴィエ様はご機嫌を損ねてしまったらしい。
 オリヴィエ様は、不機嫌そうに顔をしかめ、斜めに俺を見下ろした。
「ふ〜ん、そういう事。オスカーの言う事ならホイホイ聞くのにねぇ・・・あいつに言っておか
なきゃね。誰の言うことでもちゃんと聞くように教育しておけ、ってね。」
(違うのに・・・)
 悔しくて、俺は再び唇を噛みしめた。
 ピリっとした痛みが走り、鉄くさい味が口の中に広がる。
(そんなんじゃないのにっ!)
「ランディ?」
 美しいマニキュアを施された指が、顎にかかり、淡いブルーグレーの瞳に、双眸をのぞき込
まれる。
「んふ、冗談だよ。・・・ん?ちょっとあんた・・・血・・・」
 ゆっくりと、僅かに眉をしかめたオリヴィエ様の顔が近づいてくる。
 長い指が、俺の唇に触れる・・・
(オリヴィエ様っ)
 頭の中で、閃光が炸裂したような感じ。
 気づいた時には、オリヴィエ様の上にのしかかり、口付けていて、驚きで見開かれた瞳で、
オリヴィエ様は俺を見ていた。
(な・・・ななっ、俺っ!!!)
「ごっ、ごめんなさいっ!」
 慌てて飛び退き、俺は、これ以上は無理だという所まで頭を下げた。
(どうしよう・・・俺、何てことしちゃったんだっ!)
 視界の隅で影が動き、オリヴィエ様が立ち上がる気配。
(・・・どうしよう・・・)
「ねぇ、ランディ。」
 声に、体が震えた。
「・・はい・・・。」
 きっと、オリヴィエ様は怒っているに違いない。いや、俺のこと、軽蔑しているかも・・・。
 そう思うと、怖くて顔も上げられなかった。
 だけど、
「顔、上げて。ワタシを見て。」
 優しく囁かれて、抵抗できる訳なんて、無い。
 おそるおそる顔を上げると、オリヴィエ様は艶やかな笑みを浮かべて、まっすぐに俺を見て
いた。
 押し倒した時の衝撃で、上半身を覆っていた布が捲れ落ちていて、露わになった胸元に、目
が釘付けになる。
 全身が、まるで心臓なってしまったかのように脈打つのが分かった。
「ランディ、あんたワタシに気があるの?」
「えっ・・・」
 ストレートな言葉に、頷くことも忘れてただただオリヴィエ様を見つめる。
「ワタシのこと、抱きたい?」
(・・・えぇぇぇぇぇぇっ!)
 あまりに驚いて、俺はポカンとした顔をしていたんだと思う。
 オリヴィエ様は小さく吹き出して、ゆっくりと俺に近づき、耳元に顔を近づけてきた。
「ワタシ、あんたなら許しちゃうけどな。ぜ・ん・ぶ☆」
「は・・・・へ・・・」
 俺の思考回路は完全にショートしてしまったようで、まともな言葉すら出てこない。
「ね、ランディ。ワタシのこと、抱いてみる?」
「あ・・・・・ぁっ!」
 フイに下腹を包むように撫で上げられ、思わず鼻から声が抜けた。
「ん、準備は万端、ってとこかな?んふっ、おいで、ランディ・・・」
「・・・・は・・・・んっ」
 からかうように囁かれ、口付けられながら、俺はオリヴィエ様に誘われるままにソファへと
倒れ込んだ。


「じゃぁまず、キス、してもらおうかな。」
 言われるままに、淡いルージュに口付ける。
 正直言って、キスなんてそんなにしたことなかったから、どうしていいかわからなかったけ
れど、とりあえず、小さく開かれた唇の隙間から舌を入れてみた。
「んっ・・・」
 合わさった唇の隙間からオリヴィエ様の吐息が漏れて、伏せられた長い睫が細かく震えてい
る。
(・・・オリヴィエ様・・・)
 俄に、今の自分の行為が現実感を増して、腰が一気に熱を持った。
(あっ・・・・)
 オリヴィエ様の舌は、まるでそれ自体が別個の生き物のように俺の舌に絡みつき、頭の芯が
痺れてくる。
(まず・・・い・・・)
 爆発してしまいそうな兆しに慌てて唇を離すと、不満そうなオリヴィエ様の瞳が俺を見上げ
た。
「もう、終わり?」
「いやっ、あのっ・・・俺・・・」
「ふふっ・・・いいよ。あんたの好きにしてごらん。」
(好きに・・・ったって・・・どうしよう・・・?)
 色っぽい瞳で笑いかけられ、俺はもうどうしていいかわからなかった。
 だいたいが、こういう行為自体、初めてで・・・
 頭では、どうするものなのかなんて事くらい、わかってはいるけれど、何しろ俺は、無防備
に裸体を晒しているオリヴィエ様を目の前にして、舞い上がってしまっていて。
 しかも、制御不能な体を持てあましてしまっていて、オリヴィエ様に触れるどころじゃなかっ
た。
(どうしよう・・・?)
「やれやれ・・・困った子だね。」
 ゆっくりと、オリヴィエ様が半身を起こし、俺の腕が強く引かれる。
「あっ・・・」
 バランスを崩してオリヴィエ様の胸に飛び込んだ俺を、からかうような瞳が覗き込む。
「セックスは初めて?」
「・・・はぃ・・・」
「オッケイ。」
 情けなくて恥ずかしくて、逸らそうとした俺の頬に、オリヴィエ様の唇が触れた。
「そーんな顔、しないの。誰にだって『初めて』はあるんだからね。大丈夫、ワタシがゆっく
り・・・教えてあげるからさ☆」
「おっ・・・オリヴィエさ・・・はっ、んぁっ・・・」
 痛いくらいに張り詰めた俺の股間に、オリヴィエ様の指が絡みつく。
「今日は・・・ワタシに任せてごらん。これじゃツライだろ?」
 囁く吐息がゆっくりと近づいて来て・・・唇が重なった。
 割り入ってきたオリヴィエ様の舌は、ひらひらと俺の口の中を舞い、舌が絡め取られる。
(あぁ・・・キスって・・・こうするものなんだ・・・)
 そんな事を想いながらも、俺の体は次第にオリヴィエ様の手に高められ、口付けられながら
俺は、体内の熱い液体を迸らせた。
「んっ・・・ふっんんんっ」
 細い糸を引きながら、オリヴィエ様の唇が離れる。
「どう?・・・良かったでしょ?」
 欲情の解放と、緊張の解放と。
 同時に解放されて俺は、ポーッとした頭で大きく頷いた。
 目の前のオリヴィエ様の顔が、ぼやけて見えてきて・・・グラリと揺れたかと思うと、そのま
まソファの上へと体が倒れ込む。
「まったく・・・しょうがないねぇ、あんたは・・・」
 苦笑しながら、オリヴィエ様は俺の前髪を掻き上げ、額にキスをしてくれた。
「緊張・・・しちゃったのかな?ふふっ、じゃ、少しそこで休んでなよ。ワタシはちょっとこれ
からでかけなきゃならないから、さ。」
 均整の取れたキレイな裸体がベッドから降り立ち・・・振り返った。
「今度は・・・緊張しちゃだめだよ、ランディ☆」
 軽いウィンクと共に、オリヴィエ様が部屋を出ていく。
(今度は・・・?えっ、ってことは・・・今度も・・・ある?!)
 脱力したはずの体に、再び熱が舞い戻る。
(オリヴィエ様・・・俺・・・俺っ!)
 おさえきれない感情を持てあまし、俺は側にあったクッションをぎゅっと抱きしめた。

                              Fin



さんくすめっせーじ(by ひろな)     2001.8.5

ふひゃははは(壊笑)。どうしましょうかこのかわいいランディくん。
遊王子にあげたチャーオスとのとりかえっこ第2弾、っていうか私は1本しか書いてませんが、遊さんは先日UPした『恋人へのご褒美』と、もう一つ、これをくださったので〜す♪
タイトルからしてドッキドキですよ! うひょ!
オリヴィエ様ったら、もしかしてランディの気持ち前からわかってて、こう仕向けたのかしらとか疑ってしまいますo(^o^)o←喜ぶなよ……。
風夢、ばんざ〜いっ!\(^o^)/ るらら〜♪(壊)



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