2人で出かける約束をしていた、休日の朝。 私邸へ迎えに行った俺の目の前に、何やら訳のわからん機械が突き出される。 「なっ、見ろよこれ!すげーだろっ!」 瞳を輝かせているゼフェル様を見るのは、めちゃめちゃ好きや。 子供みたいに弾けた笑顔をしてはるゼフェル様を見てると、なんやこっちまでウキウキした気分になってくる。 「くーっ、いいデキだぜ、我ながら。」 「・・・また、徹夜して作らはったんですか?」 かがみこみ、顔を覗き込むと、ゼフェル様は動揺を隠しきれずにじりっと後ずさる。 「なっ、なんで・・・。」 「なんで、て・・・瞳、真っ赤ですやん。」 「う・・・うるせーっ、オレの瞳が赤いのは生まれつきだっ!」 ぷんっ、と顔を背け、ゼフェル様は勢いよく立ち上がる。 「出かけるんだろ?さっさと行こうぜ。」 (・・・しゃーない人やなぁ・・・) 強がる背中に、思わず苦笑が漏れてしまう。 ゼフェル様の様子を見れば、昨日から一睡もしてないのは一目瞭然。 眠たくて仕方がないハズやのに・・・。 「ゼフェル様。」 背後に近づき、そっと抱きしめると、細い肩がびくりと強ばる。 「んだよ?」 「出かけるんは、また今度にしますわ。せやから・・・今日は休んで下さい。」 「えっ・・・・」 無防備に向けられた瞳が、胸に甘い疼きを呼び覚ます。 (ゼフェル様・・・) 「べっ、別にオレは平気だぜ?1日くらい寝なくったって、どうってこと・・・」 「1日じゃないですやろ?」 「・・・っ!何で知ってんだよっ!」 悔しそうに見上げる瞳に、保護欲が掻き立てられる。 隠そうともしない勝ち気さに、ついついからかいたくなってしまう。 「それは言われへんなぁ。」 「・・・っ!!とっ、とにかくっ、1日や2日くらい、どーってことねーよっ!予定通り、とっとと・・・」 それでもまだ強がるゼフェル様の耳元に口を寄せ、俺は低く囁いた。 「ゼフェル様・・・俺な、何や今日は、ゼフェル様と2人きりでゆっくり過ごしたい気分なんです・・・頼みますわ・・・」 「・・・そーゆーことじゃ、しょーがねーな。」 満足そうに頬を緩めるゼフェル様に、さらに一言付け加える。 「おおきに。ほな、今日はゼフェル様の寝顔でも見ながら、ゆっくりさせてもらいますわ。」 「なっ・・・・何言ってんだよっ!オレはぜってー寝ねぇからなっ!!」 再びつり上がって俺を睨み付けるゼフェル様の瞳には、普段のような力強さが見あたらない。 (ほんまは、眠たくてしゃーないくせに・・・・意地っ張りな人やな。) 頬が緩んでしまいそうになるのを慌ててごまかし、軽くひきよせて素早く額に口付ける。 「なっ・・・なにす・・・」 「意地っ張りを直すおまじないです。」 「意地なんかっ!」 「それに・・・」 まっすぐに、ゼフェル様の瞳を見つめながら、俺は言った。 「ほんまのところ、俺も今、眠たいんですわ。ここんとこ、仕事押してて睡眠不足が続いてますねん・・・なぁ、ゼフェル様。2人で仲良う昼寝でもどうです?」 目の前で、吊り気味の瞳がゆっくりと細められる。 「・・・しょーがねぇな。それじゃ、付き合ってやるよ。」 シングルにしては、だいぶ広い。 けど、男2人で寝るには少しばかり窮屈なベッドに、ゼフェル様と2人、身を横たえる。 腕の中のゼフェル様は、軽いキスを交わしてすぐに、まどろみの中へと落ちていた。 (あない“寝ない”て騒いどった人は、誰やろな・・・) まだあどけなさを残す寝顔のこの少年は、この宇宙にとって欠くことのできない大切な存在で、そんなことは重々承知していはいるものの、それでもやはり、時にはこうして独り占めしたくなってしまう。 意地っ張りで跳ねっ返りで、可愛くて愛おしい。 鋼の守護聖、ゼフェル様。 (あんた、ほんまにわかっとんのやろか・・・?) 胸を満たす温かな気持ちを、言葉にして伝えた事は無いけれども。 拒まれてはいない、という、確かな証。 俺の腰に回された、すらりと伸びたしなやかな腕。 すぐ側に感じる、規則正しい寝息。 無防備に晒している、安らかな寝顔・・・ (俺、あんたのこと、好きなんやで、ゼフェル様・・・) 少し固めの前髪を掻き上げ、秀でた額に、両の瞼に、キスを落とす。 「・・・んっ・・・」 軽く身じろぎ、吐息を漏らした唇にも、触れるだけの軽いキスを。 「・・・ちゃ・・・り・・・?」 うっすらと開いた、焦点の合わない瞳でほんやりと見つめられ、飛び上がりそうになる心臓を宥めながら笑顔を向けると、安心したように再び瞼は閉じられた。 ほんまはな。 もっと一緒にいたいんや。 もっと色んな話して、色んなあんたを知りたい。色んな表情、見てみたい。 せやけど。 こうして寝ているあんたを眺めているのも、ええもんやな。 いつもは照れてもうて、あんまりキスさせてくれへんけど、寝てる時のあんたはえらい素直でおとなしいから、キスもたくさんできるしな。 なぁ、ゼフェル様。 俺もあんたも男やから。 あんたの事は、めちゃくちゃ好きやねんけど、これ以上の事はせえへんつもりや。 せやからな。 キスくらい、させたって。 あんたとのキスは、許されたギリギリのラインのスキンシップやから。 俺にできる、最大級の愛情表現やから。 「・・・頼むわ、ゼフェル様・・・。」 「・・・ん?」 再び双眸がわずかに開かれ、俺を見つめる。 「イ・チ・マ・ン・カ・イ・ノ・キ・ス・ガ・シ・タ・イ」 1音1音区切って告げた俺の言葉に小さく笑い、ゼフェル様は半身を起こして唇をペロリと舐めた。 「いいぜ・・・クッ・・・でも、唇、腫れちまいそうだな。」 「腫れるほどキスできるんやったら・・・本望やわ・・・。」 お互いに笑いながら見つめ合い、ゆっくりと唇を近づける。 “この胸の温もりが、あんたに全て伝わるように。1万回のKissを、愛しいあんたに・・・“ Fin さんくすめっせーじ(by ひろな) 2001.10.13 おわわ、クチビル腫れそうとかチャリコレのコメントに書いたら、そういやこっちでゼッくんが言っていました(^^;)。 ってなわけで欲張りひろにゃんはチャリコレだけでなくチャリゼももらってきてしまったのです♪ えへv プラトニック・ストイックなチャーリーさん。いいですねぇv 微睡んでとろとろなゼフェも、めちゃかわいい……v 遊にゃん、こんな素敵なお話フリーにしてくれてどうもありがとう!! |