ふわふわ
　　　　　　　　　　ゆらゆら
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ぷかぷか
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　さらさら

ゆれる　　揺れる

ただよう　漂う

うかぶ　浮かぶ

まいとぶ　舞い飛ぶ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　惑う


夜空に遊ぶ　ちょうのように

波間に遊ぶ　くらげのように

ふわふわ　　　　　　ゆらゆら　　　　　　ぷかぷか　　　　　　さわさわ

夜よりも濃い　髪の色

長い髪が　風に揺れる

夜空に舞い飛ぶ　オオムラサキ

「わたし、やっぱりよるのうみがすきだわ」

満月の夜　あなたは必ずここへ来る


さらさら　ふるえる

ぷかぷか　まいとぶ

ゆらゆら　　　ふわふわ　　　　すやすや　　　　　　はらはら
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　こぼれる

うかぶ　　　およぐ　　　ただよう　　　ながれる

手をのばす


「いかないで」

「いかないで。ツキノ」

つかまえられない　オオムラサキ 　　────「行かないで。月乃」

手を伸ばしても届かない月

空の中にあっても

海の中にあっても


「カイト？」

僕を見つめる　虹彩がきらめく

「行かないで。月乃」

「どこへもいかないわよ。へんなカイト」

漆黒の中　月の色 　　────「どこへも行かないわよ。変な海杜」

うそだ。

あなたはすぐに遠くへ行ってしまう。

僕の手をすり抜けて。

海の中を漂う。夜の中を流れる。

ちょうのように。くらげのように。

そして言ってしまう。
「あなたがすきなんだ」

「わたしもすきよ」

うそだ。

……うそじゃない。ほんとじゃないだけだ。

森の中のちょう。海の中のくらげ。
いつもそこにある月。

つかまえられない。とどかない。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　閉じこめてしまいたい。


ふわふわ
　　　　　　　　　ゆらゆら
　　　　　　　　　　　　　　　　　　ぷかぷか
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　さらさら

　　　　　　　ゆられる
　　　　　　　　　　　　　　　　　ただよう
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ながされる

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　とらわれる