【眠森談義 座談会編  第2回】

 
「はい、皆様こんにちは八重垣悟です。眠森談議・座談会編第2回、時間も押してますんでどんどん行きましょう。」
「しかし今回UPタイミング最悪だね。第4回の本放映が終わった直後やん。なぁにをモタモタやってんだいって感じですが。」
「そう言われないよう、とにかく頑張りましょうよ。ね。それしかないでしょう。」
「そうですね、参りましょう。あ、どもども、わたくし木村です。」
「アナタの場合まぎらわしいんですから、ちゃんとフルネーム言って下さい。」
「木村智子ですっ!」
 
■オーキッド・スクエア(第1幕からの続き)■
「このシーンでね、私、あれっと思ったんだけど、実那子って多分、直季が思ってるより気の強い女みたいに思うなー。『人生一寸先は闇、なかなか面白い人生だ』と切り返されるとは…直季も考えてなかった気がするな。」
「ああ、それはあるかも知れませんね。俺が守ってやらなきゃと思っていた相手は意外としっかりしてたと。」
「うん。実那子ってさ、おじさん死んでから1人で生きてきた訳でしょ? そしたらやっぱ、親兄弟にすっぽり包まれて生きてきた女の子よりはしっかりしてると思うよ。ある意味したたかだろうし。」
「面白いでしょうねこれね。最後に実那子が直季を助けたら。」
「美しい王子様を守る女戦士アマゾネス! うわー、それはそれでいいかも知んない!」
 
■ライティングデザイン中の直季■
「コート裏返すのがいいですね。あの白いコートは直季のトレードマークなのかな。それと帽子と。」
「あの帽子って、金田一のに似てるなーとかちょっと思った。んでもこうやってクリエイティブな職場にいる人って、みんなすごくカッコよく見えません? 男でも女でも。」
「いえてますね。TV局のADなんて、そういうのに憧れて入ってくるんでしょうね。仕事が少々キツくても。」
「うん。ウチの会社とかだと、設計士がいる訳ですよ。1級建築士が。そういう人と話してるとやっぱカッコいい。」
「何につけてもプロフェッショナルってカッコいいですよね。」
「SMAPのコンサのライティングとかも、こうやってデザインするんだろうね。あとスマスマのトリビュートとか。」
 
■直季の部屋■
「レモン切ってる直季の手つき! さっすがビストロキングやねぇ。ナイフさばきがサマになってんもん。」
「こういう些細なシーンに、やっぱ出ますねぇ。」
「出ますねぇ。『丸裸にしてあげましょうよ』っていう直季の表情も好きだな私。レモンをギューッとね、まるで生き血絞るみたいにしてさ。」
「あれ何飲んでんですかね。焼酎かな。ジンとか、もしくはウォッカ?」
「なんだろね。ウィスキー系じゃあないことは確かだし。薫るリザーブ持ってこないのがいいわ。」
「案外日本酒かな。冷やしてレモン絞ると美味しいし。特に八海山はいいですよ。」
 
■実那子の部屋■
「これっていきなり卵溶いてるんで、なに食っとるんだと思いましたらば、ちゃんと画面手前に大皿と残ったお野菜が映ってましたね。お鍋したあとなんだやっぱり。」
「そりゃ、いきなり卵雑炊作らないでしょう。」
「だよねー。あ、あとあとぉ、あたし、前にロンバケ論でも書いたんだけどぉ。」
「なに急に語尾伸ばしてるんです。」
「輝一郎が『あちっ!』てやったとき実那子が出したのもやっぱウェットティッシュだったね。雑巾じゃなくて。」
「…恋人の口拭くのに、ふつう、雑巾…は出さないんじゃないですか?」
「おやそうかい?」
「そうですよ。当たり前じゃないですか。怒りますよ僕だったら。」
「はーん……。そうか…。だからリコンしたかなあたしゃ。」
「ノーコメント。このシーンのポイントは他にありますか?」
「うまいなヤエガキ。うーんとね、これまたH・Kさんに言われて気がついたんだけど、輝一郎のお母さんの失踪宣告が成立したのって、ばっちし事件当日でしょう。輝一郎は今35歳。ハタチの時ったら15年前じゃん。これは意外な一致でしたね。」
「はっはー…。まさか偶然てことはないでしょうからね。」
「うん。なかなか面白くなってきました。」
「地方の大学、ってどこでしょうね。東京じゃないってことでしょ?」
「群大じゃねぇだろな…。前橋だぞ、ほしたら。高崎市の隣。…いやコレ案外、福島だったりなんかしてねー!」
「ありえません? それ。」
「ありえると思う。あ、それとね、あと1つ。」
「はいはい。」
「これはねー、ホントは次回、第3回で語るべきなんでしょうけど、今コレ読んでるヒトの中でまだ第3幕の放映見てないって人はいないと思いますから言っちゃいますけど、実那子のカーブ…じゃないドロップの話。お父さんとキャッチボールしたっていうの。あれも直季から移植された、彼の記憶なんですかね。」
「んー…。てことになるんじゃないですか? グローブが真新しかったのも、とすればうなずける訳ですし。」
「でもさー。文集の表紙まで付け変える人が、グローブ汚すくらい気がつきませんかね。」
「ああ、それもそうか。」
「もしもよ? 実那子が本当はキャッチボールなんかしたこともなくて、ドロップなんか投げられないとしたら、直季はあの手紙に嘘書いたことになるよね。嘘の記憶を植え付ける手助けを。…するかね彼がそれをさ。でもそうじゃなくて本当に、以前の彼女はキャッチボールとかしてたんだとしたら、事件の前の実那子は福島にいたんでしょ? なんで群馬の直季がそれを知ってんの。」
「とすると? やっぱり智子さんの言う『殺人事件直季目撃説』が導かれる訳ですか。直季は事件よりも前から実那子のことを知っていたと。」
「うん…。何でもかんでもそこへ持ってっちゃうのは色メガネだと思うけどもね。でもあの真新しいグローブは、本当に実那子へのクリスマス・プレゼントだったんじゃない? 今までのが古くなったからお父さんが新しいのを買ってくれたんだよ。でもそれを使う前にあの事件さ。だってホレ、事件はイブの夜だべ?」
「なるほどねぇ…。」
「あたし思うんだけどさぁ。そもそも記憶って移植できるもんかぁ? フロッピーじゃあるまいし…。催眠術かけてビデオでも見せればいいんだろうけど、直季の頭が覚えてることをどうやって画像変換すんのよ。脳に電極でも差し込んで? ―――まさか直季のお父さんてのはアレかね、法律で禁止されてるような脳外科手術でもやってんのかしらん。知ってる? 事故とかで意識の戻らない患者の脳幹に、最後の手段として電気刺激与える治療法があるの。もち家族の了承を得てね。成功した例をNスペで紹介してたけども、失敗したらああた、カンペキ1発で廃人やん。」
「脳幹…って、そんなのがアタマの中にあるんですか。」
「うん。脳のど真ん中にある、電源スイッチみたいなとこね。脳ってさ、痛みを感じる神経はないんだってね。だから頭蓋骨に針が通るくらいのアナあければ、意識のある人間にだって、そういう刺激は与えられる訳よ。」
「どっかの教団がやってたみたいなことですね。」
「あ、脚本の野沢さん…ひょっとしてソレからヒント得てたりして。―――直季の頭のこのへん、パカッて頭蓋骨取れたら怖いよね。でもってもしや、それを隠すためにあのロン毛?」
「なんか違うとこ行ってますよ話が。」
「戻しましょう。えーと、だから何でしたっけ。」
「実那子のキャッチボールの話してたんですよ。」
「そっか。んじゃ次いきましょう。」
「がたっ。」
「なんだそのリアクション…」
 
■ミルトニア騒動■
「コロンビア産のミルトニア、ってわざわざ断ってるけどさ、ミルトニアって原産地がコロンビアだからね、別に驚くこたないのよ。カトレアとかに比べるとあんまり見かけない、主に鉢植えにされる小型の蘭でね、目にも鮮やかな赤い色なんだわ。いえもちろん他の色もあるよ。ちょっと暑さに弱いかな。」
「電話で注文するのに『ミルトニア』って指定するのは、けっこう詳しい人なんじゃありません?」
「うん。普通、蘭つーたらカトレアくらいしか思い浮かばないよね。あとはせいぜい胡蝶蘭かな。ミルトニア、って言ってくるところが、ただもんじゃないって気がするね。」
「『よく勉強してるでしょ』の人なのかなやっぱり。」
 
■ボヤ騒ぎ〜新居のマンションへ■
「これは実那子にはキツイでしょうねー。京都では火事出したらそれから三代、近所づきあいナシだっけ?」
「まあ近所迷惑には違いないですからね、特にアパートなんかでは。」
「大家のおばちゃんがリアルですな。いるいるこういう人、って感じ。そして引っ越した先に中傷のビラ、か…。手の込んだことするなぁ。」
「一難去ってまた一難、ですよね文字通り。会社が立派だから信用する、かあ。そんなもんなんですかね。」
「そんなもんそんなもん。特に銀行でローン組むときね。勤務先が一部上場かどうかって、やっぱ大きいもん。」
「智子さんて借金に詳しいですよね。まさか大王ですか?」
「似たようなもんかねぇ。人生なかなか面白いっすよ。」
 
■直季の仕事場■
「あは! このシーンあたし好き好き。仕事してる直季って大好きさ。」
「照明マンって、高所恐怖症には絶対無理だって言いますよね。ピンスポって高いんでしょう?」
「高いよ。そこいらの普通の公民館だってビルの3階から4階はあるもん。高いだけならまだいいの。暑いんだよアレのそば。夏なんかもぉ汗だく。ヘタすりゃ火傷するからねー。」
「でもやっぱりこのシーンでも、実那子って直季が思ってるより勝ち気みたいですね。」
「言えた言えた。やぐらには登るは助けてもらって礼は言わないは。」
「…それにしちゃこの2人、妙に息が合ってる気しません? あのボックスでの会話なんて、怒鳴りこんできたというより、ほとんど痴話喧嘩のムードでしょう。」
「実那子ってさ…やっぱ直季が気になるんだと思うなー。ビデオリワインダー本文の方にも私、意識して彼の容姿は書いてないんだけど、ダレが見たって超美形やが。江頭2:50だのハウス加賀谷だの…直季がああだったら実那子も即、警察行くっしょ。」
「美しい男は得ですねぇ。」
「いや、そうとも言い切れないかもよー。某コンピュータ・メーカの営業さんなんだけどね、こいつ、はっきし言っていい男。その彼が言ってたけども、女の子に好きですって告白しても信じてくれないんだって。『誰にでもそうやって言うんでしょ』とか…おいおいそりゃねぇだろうよって、よく思ったって言ってた。そうかもねぇ。あんまり美形だと男も女も損するよ。過ぎたるは及ばざるが如しってね。」
「ことわざ好きですね智子さん…。」
「笑う門には福袋! このシーンで直季はさ、『引っ越す時大家に住所教えたか』って、マジで聞いてるよね。『教えたりはしてないだろな』、ってニュアンス。それに対して実那子曰く『あなたにエサ与えるようなものだ』とは…知らないんだからしょうがないとは言え、彼にしてみりゃ切ないだろな。」
「でも彼も悪いですよ。嫌われよう嫌われようとしてる感じだし。今の話じゃないですけど、こういう美形にニヤッて笑われたらかえって不気味かも知れませんよ。単に欲望満たすための女ならウィンク1つでゲットできるでしょう直季は。そんな美形が、目的も明かさずつきまとってくるっていうのは…別の意味で怖いんじゃないかな。変質者とか、犯罪の匂いとかしますよ。」
「拓哉ってカメラの角度によって、ものすごく冷酷な感じに映るもんね。まぁ拓哉はともかく直季って、案外ダンサーの女とかにモーションかけられることあんじゃないかな。こんな男にライト当てられたら、脱ぎたくもなるだんべぇ。」
「群馬弁ですか。」
「そうだぃねー。あたしゃそう思うんさぁ。」
「…ま、実那子に催眠術ですか? かけてるお父さんが、直季には魔法使いに見えたかも知れませんね。」
「うん。けど、これさぁ、平気で父、父って書いてるけどほんとに父親なん?」
「とりあえずTV誌とかの人物相関図ではそうなってますよ。」
「血がつながってなかったら面白いけどな。でも直季のお母さんてどうしたんだろ。そのへんも気になるポイント。」
「お母さんていえば輝一郎のお母さんはキーパーソンでしょうね。どこで何やってるんだろう…。」
 
■実那子を訪ねてくる国府■
「彼が探してるのはやっぱ実那子だ、とここで判りますね。」
「うん。住民票移してないとしたら、引っ越し先調べるのは至難の技だからなー。マンションは輝一郎名義だろうし、運送会社のセンからたぐるしか…。」
「どこの運送会社が来たか、国府はおばさんに聞くべきでしたね。」
「あ、なるほどっ! 八重垣くん鋭いっ!」
 
■新しいマンション〜オフィスにいる輝一郎■
「真っ先にフォトスタンド飾るの健気だな。こういうの嬉しいですね。」
「うん。彼と2人でこの部屋にいる気分になりたいんだろうな実那子は。判るぞ、うん。」
「この2人いいカップルですよね。このまま幸せにしてやりたい気もするなぁ。」
「そうだねー。そうは問屋が卸さないだろうけど…。このシーンには気になる点が1つありまして。実那子と話し終わった輝一郎は携帯切って机に置くんだけどね、その時カメラが意味ありげに携帯をアップにするの。これ、なんでだろぅ。『輝一郎は携帯でかけてたんだよ』と視聴者にインプットするみたいなんだよなぁ。きっと何かあるぞこれ。輝一郎と携帯。チェックチェック。」
 
■実那子の記憶■
「窓の外が八重桜。たいした意味ないと思うけどね。おやソメイヨシノじゃないやってチェックしちゃった。」
「このおじさん…なんかすごく『いい人』って感じしません? 苗字違うから母方ですよね? お姉さんか妹の娘である実那子を、一生懸命支えてやったんだなぁ。」
「そーだね。このおじさんがいてくれて、実那子はラッキーだったと思う。」
「おばさん…って出てきませんね。このおじさんずっと結婚しなかったのかな。」
「どうだろうねー。死別したとか離婚したとか。子供もいない訳でしょ? これまたチェックポイントですよ。直季の環境にも母の姿はなさそうで、実那子のおじさんもそう、輝一郎もそう…。『母』ってものに何か重要な鍵があるんじゃないかしら。」
「母親に…。」
「うん。あとねー、実那子が段ボールにしまった荷物ね。あの中に植物図鑑があるでしょ。おっ!と思ったね私。」
「おっ?」
「そ。心に傷を負った者って…植物に走るような気がして。昭和天皇しかり実那子しかり。」
「しょっ、昭和天皇ですか?」
「実那子はさぁ、原っぱで本読んで、図鑑とかもめくってたんじゃないの? そこらの雑草をさ、これはスズメノテッポウ、これはコオニカタビラ…なんて、名前調べて覚えたりしたと思うよ。昭和天皇の名言にあるじゃない、雑草、という名前の草はないって。子供時代の実那子は、寂しかったんだろうなー。あの植物図鑑がそれを語ってるよ。」
「深読み…みたいな気もしますけどね。」
「とにかく優しいおじさんでよかったよ。実那子も足向けて寝らんないでしょう。」
「この人も案外キーパーソンだったりしませんかね。なんで突然工場を人に譲って東京に出てきたのか。誰かと何かトラブルでもあったのかも知れないし。」
「チェックポイント多いねー眠森! さすがは本格ミステリー!」
 
■新しい家具が来る■
「なかなかいい業者やん。きっと実那子のこと『若奥さん』とか呼んだんだろうねー。」
「そうでしょうね。実那子が綺麗だからサービスいいんですよ。」
「ウチの会社の営業マン、奥さん綺麗だとハリキッてアポとってますからね。」
「そんなもんですよ男なんて。」
 
■国府と春絵■
「第1幕でもそうなんだけど、国府のシーンて、幸せの絶頂、って感じの実那子のシーンと必ず対になって登場するのね。これだって、テーブルだソファーだっていそいそ並べてる実那子に対して、中華料理屋の上っぱりを着た春絵の薄幸そうなこと。同じ女でどうしてこうも違うかねぇ。神様は不公平だよ全く。」
「第1幕では…あれですか、地獄、って言ったシーンの直後が、輝一郎と一緒にマンションの下見に来る実那子でしたっけ。」
「そうそう。輝一郎の胸を枕にしてウトウトと。」
「春絵さんも気の毒ですよね。しかしどこで知り合ったのかなこの2人。」
「うん。真犯人かどうかは別として国府は実那子のお姉さんが好きだったんでしょ? で、刑務所に15年。仮出所して転がり込んだのが春絵のとこで、兄さんって人も2人の仲は認めてるらしい…。何だろなこの人間関係は。キーポイントなのか、はしょってるのか。」
「春絵にしてみれば実那子みたいな女、傷つけてやりたいでしょうね。」
「幸せな若奥様。グサッとやりたいかも知れないね。」
 
■部長と輝一郎の会話■
「組織って何なんだろうなー。どんな大企業も結局は、個人の感情で動いてるんだよねー。だからサラリーマンてのはあんなにも大樹のかげ求めて右往左往…。源氏物語の昔から変わっちゃいない。」
「智子さんのそういう台詞って真実味ありますよね。」
「だてに14年間サラリーマンやっちゃいねぇやね。見てきましたよいろんなことを。だからフクシマ君の苦労も判るってもんさ。」
「いきなり登場ですかその名が。」
「胃が痛くなること多いと思うよフクシマ君は。私に言ってくれればいつでもいい子いい子してあげるのに。」
「それってマジです…?」
 
■輝一郎をつける敬太■
「敬太が出てくるといきなりお笑いモード。いいですねこういうのって。」
「ここで笑えるのはなんたって迷彩色のズボンだよね。そんなカッコでロビーにいたら、かえって目立つちゅーに。」
「写真撮ったあとつまみ出されたんじゃないですか。」
「ありえるね。ほいでこのシーン。輝一郎の乗ったタクシーのナンバーひかえちゃったぜ私。品川55、21の…」
「…なんの意味があるんですか?」
「いや、特にないけど。」
 
■直季の部屋■
「曰く因縁付きの画商の男に会ってる輝一郎の証拠写真なんて、これは大きいよねー。直季も感謝せなアカンね敬太には。」
「敬太って…やっぱ魔性の男なんですかね。輝一郎を追い落とすのがずいぶん嬉しそうで。」
「うん。敬太って多分、いつも陽気な道化役かって出てるけど、けっこうコンプレックス感じてきたと思うよ。直季は容姿をひけらかしたりはしないけど、どっかゆったりと落ち着き払っててさ。物に動じないところがあって。こういうのを『いいな』と思うと同時に、チキショ、って思うと思うもん。」
「第1回めの座談会でも出ましたけど、彼が寝返ったら怖いかも知れませんよね。」
「これさ、今は輝一郎っていうスケープゴートがいるからいいけど、由理の一件が引き金となって確執が生じたら、直季、けっこうヤバいと思うよ。」
「ロミジュリの有名な台詞。このへんは元演劇部としてどう見ます。」
「うーん…シェイクスピアって台詞が文語調なんでねぇ。どういう意味かをあらかじめ理解してしゃべるんですわ。リズムつけないとダラダラしちゃうし。…それはともかく私、こういうとこでポロポロ泣く女って嫌いだな。」
「…言うと思ってました、僕。」
「ここで泣いて何になるつーの。世の中に自分の気持ちしかなくなってさ、回りが見えなくなっちゃうの。いっちゃん嫌いだこういう女! 実際その場にいたら玄関から叩き出してるかも知んないっ!」
「こわ…。」
「ソファーに登るのはいいよ。ジュリエットの台詞言うのもいいよ。そうしたい気持ちは判るさ。でも涙がこみあげてきたら部屋は出てけ。近くの公園でビービー泣きな。こういう自己憐憫はムシズが走るんだあたしゃ。」
「…はぁ。」
「ドラマ的にはいいと思う。キャラとして由理が今ここで泣くのは必要なのかも知んない。でも個人的にはムカつくね。…直季! こんな女は捨てなさいっ! 遠慮はいらんぞ! あーたが感じてる罪の意識は、由理がどうこういうよりは、愛してもいない女とズルズルつきあっちゃったことでしょ?」
「ここで呼びかけてどうするんですか。」
「4年間だけのつきあい。いいじゃねぇかよそれでもう。…と言いつつ由理のキモチも判るな。体が言うこときかねんだよなこういう時って。定期的に与えられてた悦楽をプツンと絶たれるのは、けっこう辛いね女にとって。」
「………」
「その相手との初めてのセックスでイケるなんてウソだとあたしは思うぞっ。肉体関係にも時間という熟成が必要なの。4年間は大きいでしょう。残酷な男だよ直季って。」
「結局どっちの味方なんですか。」
「判んねっす。あたしもまだまだ未熟でしてね。」
 
■オーキッド・スクエア■
「中村園長、いい人だね。レジ出てから、ちっちゃな鉢に霧やってるのがいいや。蘭は乾燥を嫌うからね。」
「一緒に渡してるパンフレット、あれは何なんだろ。育て方のQ&Aとかかな。」
「腰越人材派遣センターの紹介パンフだったりして。」
「それじゃパラレルワールドですよ。」
「面白いやん。遊び心遊び心。」
「―――ペットの病気には、イナガキアニマルクリニックをよろしく。」
「宣伝すんなっ!」
 
■マンション前の夜道■
「ベランダに出てきた直季の立ち姿! いいねぇヨダレもんだね!」
「ああ、あの腰をキュッとひねった?」
「そうそうあの立ち方。イロっぺー! ジュリエットなんぞ目じゃないねっ!」
「ああいうところが、木村拓哉の面目躍如ですよね。見せ方心得てるっていうか。」
「ホントだねー! あのブラインドを、シャッ!て下ろすのもいい演出。」
「BGMも効いてますよね。ドラマチックで。」
「ボレロっぽいよねあの曲。不安を盛り上げる感じ。いいですなぁ。」
「…さてでは眠森談議・座談会編第2回、このへんでまとめたいと思います。とにかくいかに効率よく本放映に追いつくかという重大問題抱えてますんで、もぉ大変なことになってます。例によってご意見ご感想は、下記アドレスまでどんどんお寄せ下さい。」
「あ、実は早速おハガキ頂きましてねぇ。」
「ハガキじゃないでしょう。」
「そう言った方がラジオっぽくていいやん。北陸では12月に雷が鳴りますよとのご指摘を賜りました。ありがとうございます。まぁアレは福島県ですからね、気候も北陸とはまた違うかも知れませんが…とにかく日本でも冬の雷はありえるんだということが判りました。木村智子ヒトツお勉強になりましたっ! シェイシェイ!」
「では次回第3回を、どうぞお楽しみに。パーソナリティーは私、八重垣悟と――――」
「フクシマ…」
「同じネタ2回はつまんないですって智子さん。」
「…木村智子、でしたーっ!」
「次回までに何か面白い小ネタ考えてきて下さいね。」
「あーい。」
 

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