【眠森談義 座談会編 第4回】
「いやあーっとうとう追いついた! 追いついたよ八重垣くん! さあさあまずは何をおいてもカンパイといこうや! 眠森談議、本放映に追いつきました記念―!」
「ちょっとちょっと…駄目ですよ本番中にお酒なんか飲んじゃ。全く…健康診断で先生に呆れられたんでしょ?」
「まぁまぁそれはそれでさ。今回もハリキッていきましょう! ―――八重垣悟と!」
「え、自己紹介逆にするんですか? えー…木村智子がお送りする!」
「「眠森談議座談会編・第4回〜!」」
「うーんハモりも絶好調! てきぱきてきぱきいきまっせ!」
■直季の部屋■
「先週から引き続いてのスローイン。ビデオ録画を前提とした入り方なのかねコレは。CM明けに若干かぶせてくれる番組多いじゃない、最近。」
「そうですね。あれはきっと、ビデオのためのサービスなんでしょうね。」
「田中が風邪で倒れた…かぁ。人使い荒いぞぉ芹沢先輩。」
「ライトセービングって確か有限会社か何かじゃなかったでしたっけ。零細企業じゃしょうがないですよ。」
「労災とか、ちゃんときくんかね。雇用保険とか企業年金とか。」
「…そんなこと気にして眠森見てる人って智子さんくらいだと思いますよ?」
「トリTのコンセプトは、オリジナリティ&リアリティなんだから、いいのっ!」
■輝一郎に打ち明ける実那子■
「トオルさん背高いよなー。美穂さんがちっちゃく見えるもんねぇ。」
「でも木村拓哉って、逆にあんまり背が高くないからいいんじゃないですか。一種可愛いげっていうか…一分のスキなくビシーッと決まる、っていう良さじゃないんですよ彼は。」
「うん、SMAPってみんなそうだと思う。大なり小なり。日本人てそういうの好きだもんね。判官贔屓じゃないけども。あんまり完璧だと魅力半減。」
「言えてますね。で、5人の中で、まぁ一番、一通り揃ってるっていったら木村拓哉なんでしょうけど、その彼にしても、近ごろの日本人にしちゃあ”中背”ですからね。」
「おいおい話が眠森離れてるって。次いこう次。」
■イベントホール・直季と輝一郎■
「これってさこれってさ! 第2幕で実那子がアトつけてった時に、あの倉庫みたいなとこでライティングしてたあのプランだよね。」
「ああ、そういえばそうですね。クイーンステージX、とかってなってる、この『X』に見覚えが…。」
「こういうトコがさ。シナリオが全部できてるがゆえに、可能な演出なのかもね。先がどうなるのか判んなかったらマズ無理でしょお。」
「確かに。ストーリー自体には関係ないけど、凝ってますよね。」
「まぁ『全部できてる』とは言っても? 第1幕だって100%一緒じゃなかったし、カットされたシーンもセリフもかなりあるけど、少なくとも筋立ては変わってないってコトだよね。」
「直季って、会社内ではけっこうチカラあるのかなぁ。スタッフに対して態度デカくありません?」
「あは。役職の1つも付いてんのかもねー。」
「プランニング課の課長とか…」
「くわーっ、にゃーわね! 間違っても『課長!』とか呼ばれてほしくないねぇ。」
「でもなんで輝一郎は直季を殴らなかったんですかね。世間体とか、そういうのだけじゃないって気がするな。」
「するする。第5幕の予告編見ちゃってるから特にそう思う。輝一郎はタダの『実那子ちゃん大好きオトコ』ではないと思わなければ。」
「ひょっとして自分のことも、この直季って男は知ってるんじゃ…とか思ったんですかね。」
「だろうねー。んで、現に知ってると思うよぉ。直季のこったから。」
「でも眠森って、絶対ビデオとっとくべきですよね。で、最終回で謎があきらかになったら、もう1度全部見直してみるんですよ。ああ、このシーンにはこんな意味があったのかって、別の楽しみ方できると思いますね。」
「うん、その通りだね。ウチでもさ、是非やろうぜ。『リメンバー・オブ・眠森談議』!」
「男2人がにらみあうこのシーンも、直季と輝一郎の正体が判ってから見たら全然違って映りますよ多分。」
「―――”違って”っていえばさ。気がついた? 第4幕って演出が澤田鎌作さんて人なの。確かに雰囲気が中江功さんとちょっと違うべ。」
「え、そうなんですか? 演出家変わってるんだ。」
「光の使い方がねー。特徴あるなーって思って。このシーンもそうだよ。直季が行っちゃったあとの輝一郎。一瞬逆光になるのね。ああこの男にも何かウラがあるぞと、それを言いたいんでしょうな多分。」
「演出家の意図によってイメージが180度ガラリと変わるのは、映像と舞台の一番の差ですからね。」
「そうだね。舞台もそうだけどさ、程度がね。映像の方がテキメンだよね。」
■日刊福島■
「これさ。『日刊フクシマ』って書くと笑えるね。フクシマ君ファンクラブの会報みたい。」
「あ、いいかも知れませんよそれ。『日刊フクシマ』。」
「What‘s upのコーナー名としてもどお? 『週刊フクシマ』でもいいや。なつかしの『週刊欽曜日』みたいっ!」
「新聞記事ってこういうふうに閲覧するんですねぇ。僕、図書館とかにあるこれっくらいの…ぶ厚い縮小版しか知らなかった。」
「ああ、あたしも。あの手回しの機械がさ、昔なつかしい謄写版とか映写機とか、そんな感じでいいよねぇ。」
「謄…写版?」
「あれっ、八重垣くんの世代だともう知らない? 小学校とかにあったの。薄―いパラフィン紙みたいなヤツに鉄筆でカリカリ書いてね、トイレットペーパーの芯みたいなとこにインクを塗って。それで文集だとか遠足の歌集だのを作るんさ。」
「ふーん…。僕なんかだともうワープロですからね。」
「それにしてもこの交通事故の記事は気になるね。長男、てまさか直季のことなの?って思ってる人多いんじゃない?」
「実那子に植え付けた交通事故の記憶は実は彼のもので、だから直季にも身寄りはない。精神科医のお父さんは育ての親…。そういう展開になりますよね。」
「なんかやだなー。境遇が似ている2人…『TK』してるってぇ。」
「やだなってことはないでしょう。ただし、そうするとお粥食べながら直季の言った、心臓に持病のあったお母さん…ていうのが引っかかりますよね。」
「そうなんだよねー。なかなか複雑なストーリーだよこれは。」
「ほんっと予想つきませんね。」
■仕事に打ち込む実那子■
「ここ、リアルで好き。祥子に怪訝がられるほど仕事に打ち込んじゃうっていうの、実にありえる話だと思う。」
「バケツ蹴とばして歩いてるのが笑えますよね。」
「水たまりがバシャッ!ってなったりね。…あ、そうそう、”澤田演出の特徴”かどうか知らないけども、今回ってさ、音楽が効果的に使われてんねー。このシーンでもさ、新聞記事のこと考えながら仕事してる実那子にかぶってずっと音楽流れてんのに、『実那子!』って呼ばれてハッとしたとたん、ぴたりと止むの。世界が変わった、って雰囲気、見事に出てるよね。」
「オーキッド・スクエアの裏。客に見せない農場っぽいところとか、見えるのも面白いですね。蘭の説明だけしてるキレイな仕事じゃなくて、泥んこになって花育てるのが嫌いだったら、出来ない仕事なんだな。」
「だよねぇ。新宿渋谷丸ノ内のOLなんかに比べれば、実那子って素朴な女かも知れないね。見た目美人だからそうは思えないけど。」
「一流商社マンにはかえって新鮮に映るのか。なるほど。納得。」
■レストランにて・実那子と輝一郎■
「このレストランから見える夜景、第1幕のバーとそっくりだと思いませんか?」
「思う思う。あれっ?またあのバー?とか思っちゃった。直季たちがオープンイベントの準備してたっぽいビルも見えるしね。」
「ロケ地が同じでセットだけ変えたのかな…。」
「あ、それは言えるかもよ。で、ドラマの設定としてはアレだよ。同じビルの中にある店同士で階が違うとか。バァは19階でレストランは18階。」
「そうですね。でもここでの輝一郎も怪しいな。実那子は調べた記事をコピーして渡してるんですから、同級生の国府だってことはすぐに判ったはずなのに。」
「そう。そこなのよポイントは。大森でなぜ直季を殴らなかったか?ってのもさ。かかわってそうな気がすんねー。」
「こんなに信じてる輝一郎が実は…なんてことになったら…」
「実那子はショックよ。大ショック。輝一郎は最初から知ってて彼女に近づいたんだろか。だとしたら恐るべしだけど…。そういや第1幕のランチシーンで実那子は祥子に言ってたっけな。何かウラがあるんじゃないかと思った、って。」
「とすると? まさかあの異臭事件は…輝一郎が実那子に近づくために仕組んだことだとか。」
「うわ、すっげ! 輝一郎カルト信者論!」
「いや別にそういう訳じゃあ…。」
■車の中■
「ここはねー。言いたいコト、すっげーたくさんあるんだけどね。―――ま、やめとく。」
「え? なんでですか?」
「うーん…。あまりにも“批判”になっちゃうから?」
「どうしたんですか珍しいですね。さんざズケズケ言ってきたくせに。」
「それとはさぁ。度合いが違うんだわぁ。言うとしても最終回のアトにしたい。」
「はぁ。まぁ…智子さんがそうしようって言うなら仕方ありませんけど。」
「要はね。『男性作者の目から見た女性キャラの特徴と限界』っていうコトなんだ。」
「重たそうですねー!」
「ね。だからよす。12月に送る。」
「判りました。覚えときます。」
「で…このシーンでよかったのはBGMだね。アコーディオン…じゃねぇか。バンドネオン? アンティーク・オルゴールっぽい、切なげなワルツ。」
「ああ、いいですねあの曲。」
「サウンドトラックに入ってるのかな。買った方、教えて下さ〜い!」
■直季の看病をしてやる実那子■
「ここはサービスカットでしょう! 『キャー!』モンだよ。」
「あの氷枕の音がリアルでしたね。ちゃぽん、ていうかタプン、ていうか。ああいう音しますよね。ひやっと冷たくて少しゴムの匂いがして。」
「そうそう! あれってさ、『お母さん』の記憶だと思わない? それで直季も母親の話とか始めたんじゃないかな。」
「看病してもらったら男は弱いですからね…。」
「直季のベッドは壁ぎわにあるから、実那子がどこに立ってても逆光になるんだよね。光を背負った聖母マリア? そんなふうに見えたかも知んないなぁ。」
「こないだ智子さん言ってましたね、『母』の存在に何かの意味があるんじゃないかって。」
「言った言った。ほいでねー! ガラリとミーハー路線の話題だけども、このシーンてさぁ! お粥食べてる直季…つーか拓哉の! 口の中で奥歯のぶつかる、コクン、て音がねぇ! うきゃあああーったまんないーっ!」
「ほらほらっ、マイクふり回さないで下さい!」
「これさー! What‘s upでも聞こえるんだ! 葉書とか読んでて、口閉じた時なんだろうね、コクン、と奥歯の音がするんさぁ! 拓哉を生身の男として感じられる瞬間っ。きゃっ、恥ずかしっ!」
「似合わないもの―――夏場のコタツ、木村智子の『恥ずかしい』…」
「なんか言った?」
「…彼女いない歴2週間、って直季は言ってますよね。てことは放送は4週に渡ってても、ドラマ上の時間としてはそんなもんなんですね。」
「うーん…彼女いない歴2週間か。…ボチボチ、したくなる頃だよね。」
「まぁたコレだ…。どうしてそうあっちこっちにポンポンポンポン話飛ばすんですか。下手のテニスじゃあるまいし、ボール取りにいく僕の身にもなって下さいよ。」
「よくさぁ。『タマッテル』とか言うけどもアレって、一定量すぎるとちゃんと筋肉に吸収されちゃうんだってね。吸収されてどうなるのかなぁ。アミノ酸か何かになるのかな。」
「知りませんよそんなこと。僕、別に不自由してないですから。」
「セルフ?」
「………………………」
「あれ、怒った? もしもーし! サトルちゃーんっ!」
「次、行きましょうか…。」
■濱崎邸■
「父と子の会話、ね。…あたし思うんだけどさ、このドラマね、脚本家としては多分、輝一郎って書きやすいんじゃないかな。謎の男・直季はハナから謎めいてなきゃいけないけど、輝一郎って現実世界に足つけてる男やん? 意外な黒幕にするにしても悲劇の好青年にするにしても、ピッタリと射程距離に収まってくれるっていうか、手綱通りに走ってくれるキャラだと思うな。…リワインダー書き起こすとね、そういうのよく判る。ドラマ見てるだけだと、あくまでも役者さんの雰囲気・個性・演技力が前面に出てくるけどさ、文章だけで追うとね、けっこう判るよ。」
「へぇ、そういうもんですか。…しかし酒瓶持って失踪しますかね。」
「あー…それさぁ…。『作品』だと思ったんだけどねぇ最初に聞いた時。輝一郎が上手く描けなかった絵と一緒にさ、姿消したんだって思った。でも何度も聞くと…確かに酒瓶て聞こえる…。」
「睡眠薬とアルコールで、神経おかしくなってたんですよきっと。」
「そうなんだろうね。果たして何があったのかねぇ。」
「輝一郎の母。キーパーソンbPでしょうからね。」
■中華街にて■
「今回、敬太の出番はここだけでしたね。」
「うん。ちと寂しいね。いい味出してんのになー。」
「春絵のお兄さんて国府のムショ仲間だったんですね。春絵は多分、面会か何かに来て国府に惚れたんじゃないですか。」
「鉄格子を隔てた恋…か。ロマンチックやねぇ。国府が本気だったかどうかは判らないけど。」
「国府は、とにかく1日も早く刑務所を出たかったんでしょうからね。」
「そう。出所した後の寝ぐらとして、春絵をキープしたんじゃないかしらん。」
「そういう面もあったのかも知れませんね確かに。」
■実那子を探す国府■
「妙に腰の低いこの態度。さも前科者って感じで存在感あるね。さすが陣内さんだぜ。」
「春絵に隠れて何してんのかと思ったら、植物園回りしてたんですね。」
「きっとさ、どっかで聞いたんだろね。大庭実那子は植物園にいる…。」
「喫茶店じゃなくてよかったですよね。」
「あー、そらそうだ。探しきれるモンじゃない!」
■直季の部屋・由理の訪問■
「ここのしょっぱな。マイクロソフトのCMかと思ったよあたしゃ。」
「僕もです。てっきりそうだと。」
「ウィンドウズだもんね画面ね。モロ。」
「あ、そうそうこのマシン、やっぱ98NXみたいですね。こないだビデオ見てチェックしました。」
「やっぱそうかぁ。美術協力NEC。まぁ大したコトじゃないけど…。」
「でもこのシーンですけどね、第3幕以降、由理のキャラクター変わってません? なんだかすごく”普通”じゃないですか。」
「ああ、そうなんだよね。最初はもっとさ、エキセントリックな感じしたけど。」
「話さっきも出ましたけど、シナリオが全部できてるっていっても、撮りを進めていくうちに、追加修正削除けっこう出てるんでしょうね。」
「言えるかもね。実那子・直季・輝一郎あたりのキャラ設定は動かなくてもさ、周辺キャラって多少の調整、入りそうな気がする。」
「ま、必要なことでもありますよね。」
「そだね。必要だと思う。…で、このシーンの極めつけは、由理を見送る直季だね。窓枠に頭をコンコンってやるのがさ。何も言わずに帰っていった由理に対する男のホンネみたいなモノ、よく出てたと思うなー。『女』という性(さが)そのものに対する、男の保護本能つーか。」
「そんな本能があるんですか?」
「はて?」
■路上でのフラッシュバック■
「このシーンでしょう? H・Kさんが遭遇しそこねたのは。」
「そうそうここここ! 駆けつけたら終わってたって話。」
「回りの人たちってみんなエキストラなんですね。短いシーンの1回の撮影に、膨大な数の人間が動くんだろうなぁ。」
「これさ、実那子が過去を思い出す直前に、ブロロロロ…ってオートバイが走り抜けてく効果音入るっしょ。あれがまた効いてたね。」
「はいはい入ってました入ってました!」
「フラッシュバック中のBGMもいいよねー。ホラー調でね。」
「あの場面て、犯人の顔は映ってないんですよね。本当に国府なのかどうかは、いまだに誰も知らないってことか。」
「そういうことだよね。お父さんの血がピシャッて飛んで靴下にシミ作るの…。あれ、ゾーッとするだろうな。ショックでかすぎて悲鳴なんか上げられない。」
「実那子の記憶を眠らせたことそのものは、必要不可欠だったんじゃないですか? そうしなかったら彼女はきっと、おかしくなってましたよ。」
「だよねぇ。それは事実だろうなー。」
■マンションで、実那子と輝一郎■
「このシーンについてもさぁ、さっき12月送りにしたのと同じテーマで言いたいことあんだわ。だから一緒に、最終回のアトに話すね。」
「そうですか。判りました。」
「…んじゃ、次。」
「へ? もういいんですか?」
「しょうがないじゃん。ココではまだ言うべきコトじゃないと思うし。」
「そうですか…。じゃあまあ、次へ。」
■直季の暴挙■
「…とか何とか言って智子さん、要は早くここへ来たかったんじゃないです?」
「んま、何てことお! 私は思うだけよぉ。実那子ちゃんこの時セーター着てて正解。前あきブラウスだったらやばい。」
「いえ僕に言わせればですね。直季の部屋でもっと正解ですよ。実那子の部屋だったら輝一郎が来ちゃいますでしょ。」
「場所が実那子のマンションで、彼女が心配な輝一郎は予定よりすごく早く来ちゃって? あらまぁバッタリハチあわせってか? いえーい、修羅場修羅場―!」
「てゆーかほとんどコメディですよ、そうしたら。」
「そうだよねー。実那子にしてもさ、襲われかけたことを輝一郎には隠したいハズだもん。男と女が部屋で2人きりになったら、大人なんだからある程度は同罪よ。実那子が未成年ならイザ知らず。」
「確かに世間はそう見ますからね。」
「さぁてどこへ隠すかな直季をな。冷蔵庫、クロゼット、バスルーム、ベランダの軒先…」
「『もう1つの眠れる森』ですかね。」
「笑っちゃうねー!…って、こんな話で盛り上がっちゃイカンよ八重垣。若いねぇキミも!」
「僕のせいですか!」
「このシーンではさ、私としてはむしろ実那子が逃げてったあとの直季の表情にジーンと来るね。」
「直季の回想も綺麗ですよね。彼女に襲いかかろうとしてふと思い出す、子供の頃の自分の想い…か。」
「やっぱりさ、ここで鳥の声がするでしょう! 象徴的だよねー、森の思い出ね。実那子が町を出るって聞いて夢中で走ってきた直季の前を、車は走っていっちゃうんだよね彼女を乗せて。直季はいつまでもいつまでも、道の向こうを見てたと思うよ。はー…。いいねぇ、美しき純愛だなぁ!」
「澤田演出、って話になるのかも知れないですけど、『いなくなってほしい』って言われたあと直季の映像の前を、黒と赤の2色がサーッと流れ落ちるの。あれもすごくいいと思いますね。」
「うんっ、あのビジュアルはよかった! 実に斬新だったねぇ!」
■マンションの前・実那子■
「無意識にショールを引き上げるのがいいね。女心女心。」
「輝一郎もピンと来てるとは思いますよ? 彼女の様子、あきらかに変だし。」
「『用意して来るね』って言われてさ、何も外で待ってなくたって…とは思うけどもね。直季の部屋が気になったかなぁ。」
「何となく、行かない方がいいかなって雰囲気、実那子から感じたのかも知れませんよ。」
「結婚するまでは一緒に住みたくないって言う男だもんねぇ。」
「着替えておりてきて、ドアの内側で笑顔作る実那子の表情もよかったですね。」
「うん。直季とは何もなかったのよ、って自分に言い聞かせてね。」
「群馬に向かう道…あれって関越だってすぐ判りました?」
「判りました。景色に見覚えあるもん。練馬から乗って、一路、北へと。」
「東京から群馬へ向かう定番コースですもんね。」
■オーキッド・スクエア前・国府■
「うーん…来たね来たね来ましたねぇ、いよいよぉ!」
「祥子に近づいてくカメラが国府の視線なんですよね。『あの、』って言う声が妙に暗いんで、祥子はビクッてなったんでしょうね。」
「そのあとの口調がまた一転して丁寧なんだわ。実那子はここに勤めてるって判った瞬間の表情。いいよなー陣内さん。」
「建物を見てじっと立つラスト、思わせぶりですねー。音楽がこう、ドラマチックにクレッシェンドして。」
「弦楽器のフューチャーが危機感をあおるよ。第5幕は多分、ストーリー急展開だろうね。この第4幕ってどっちかいうとエピソード重視でさ、筋そのものはあんまり進んでないでしょ。ほんと、ここで追いつけてサイコーだよぉ! また延びてたらヒサンだった!」
「…はい、という訳で、今回晴れて本放映に追いつきました。次回からは週に1幕ずつ、じっくり追っていこうと思います。お疲れ様でした智子さん。大変でしたでしょう。」
「は。好きでやってるとはいえ、大変だった! 月末月初の忙しい時期に重なってさぁ、もお眠いのなんのっ! まさに眠れぬ森だったっ!」
「でもこれで少しはマイペース取れるでしょ? 1日くらい執筆お休みしてもらって。」
「うん。ああっこれでやっと『さよなら五つのカプチーノ』が見られるぅ!」
「それでは皆様、また次回にご期待下さい。パーソナリティーは私、八重垣悟と、」
「日刊フクシマの木村デスクでしたー!」
「…前回よりは面白いですね。」
「ほんと? やりいっ!」
第5回めへ
インデックスに戻る