【眠森談義 座談会編 第5回】
「おおっ八重垣さん! お待ちしておりましたっ! 本日もよろしくお願いしまーす!」
「ちょっ… あーあーあー、なにお店広げてるんですか。まさかこれ1人で食べる気ですか?」
「いいやんいいやん、バーチャルワールドなんだから。なんつったってアナタ、輝一郎の大学が福島だったって予想が当たったんだもの、祝杯の1つも上げなくては!」
「祝杯って…食べるもんばかりじゃないですか。」
「まっさか本番中に酒飲めないっしょー! だから食いもんで我慢するの! さぁさぁ座った座った。マイクはここね。―――はい、それでは参りましょう、眠森談議座談会編第5回、スタートっ! いぇー!」
「い、いぇー…」
「もっと盛り上がれよぉ! こうやって、ね? こうやって、いぇー!って。」
「はい、いいからほら、始めますよ。」
■森へ入っていく実那子と輝一郎■
「アレですよね、今回のリワインダー編、今までと違いますよね。」
「おおっ判ってくれたかぁ! そうなんです、びしっとノベライズしてみましたぁ!」
「なんで急に第5幕からそうしたんですか。」
「うん…。実はある人に『読みづらい』って指摘を受けてのぅ。前回まではさぁ、セリフを独立させないで文章の中に折り込んじゃってたでしょ。あれは確かに冗長なんだよねー。だらだらしちゃう。」
「ああ、セリフをね…。」
「カギカッコでくくるってコトはさー、一言一句たがえてませんよってイミでもある訳でねー。前回までは、全部のセリフをきちっと拾ってはいなかったのよ。だからカギカッコで独立させるなんてできなかったの。」
「今回からはじゃあ、きっちり拾うわけですか。」
「…まぁ、そのつもりです。100%じゃないと思うけども。カセットテープ、書いちゃ止め書いちゃ止めして。」
「やっぱり速記はやるべきですね。」
「べきだね。てゆーかやるけども。いま案内書取り寄せてる最中。」
「で、このシーンについてはどうですか。」
「うーんとね、ハンモックが枯葉まみれになってるのが象徴的かなーって思ったけども、『ちゃんと片づけて帰れよ直季!』と思ったのも事実。」
「あの森って、まさか全部伊藤家の所有なんですかね。診療所がある場所は、少なくとも自己所有の土地でしょ?」
「さぁねぇ。案外借地じゃないの? 森を丸ごと所有してるなんてあーた、税金かかってしょうがない。管理責任だって発生する訳だからねぇ。―――コレも謎の1つに上げとく? あの診療所の土地は自己所有か借地か!」
「こんなこと言ってるのって…ぜったいウチだけだと思いますよ。」
■診療所にて■
「乖離性健忘、って言ってたのねー。コレはH・Kさんのドライメモで判った。『かいぎ性? はいり性? 何て言ってんの!』って思ってたけど。」
「何ですか? かいぎ性健忘って。」
「いやな会議の予定をコロッと忘れる突発性の病気だね。しかも伝染性が強いから気をつけないと。」
「あいかわらずワケわかんないですね。」
「ここさ、子供時代の直季が実に可愛いね。寝てるとこなんか、実那子かと思った。」
「寝てるとこっていえば、直季の部屋の机の上にグローブがチラッと映りますよね。細かいとこ落とさないなーこのドラマ。スタッフも気合入ってるんでしょうね。」
「ん、実にいいことだ。澤田演出も絶好調ね。小屋に入ってく3人を見て直季がさ、ふーっ…とついた溜息がそのまんまカムフラージュのイントロにかぶる。うわ、にくいぜ!とか思っちゃった。」
「ヤマタツのブレス、ですね。」
「そうそう。まりやさんて彼の奥さんだっけね。What’s upで言われて思い出したよ。」
「あと、このシーンで。僕があっと思ったのは、直季パパのマリッジリングですね。死に目にも会えなかったとか言って、今でもちゃんとしてるんですよね。」
「あの歳で結婚指輪してる男性って少ないかも知んないなー。歳とって判る、若い頃の自分の傲慢さかぁ。直季ママなら美人だったろうね。きっとかーちゃん似だべこの息子。」
「あ、男の子は母親に似た方が幸せだってよく言いますよね。」
「拓哉ってパパそっくりなんじゃないっけ? 彼は不幸なんか?」
「いや俗説ですよ俗説。」
「直季パパってさ、コーヒー大好き人間なのね。ビデオ見たあとでなぜか部屋の中で立ち話してさぁ、実那子がコーヒーのお代わり断るでしょ、こうやってちょっと手上げて。牛乳ならねぇ、ぐいぐいっていくんだろうけどね。」
「その気になって見ると、輝一郎の動きって意味ありげですね。俄然、怪しい男bPだからなぁ。」
「それと、も1つ気になったのが、実那子って、この診療所出てからもう一度入院したのかね。窓の外に桜が咲いてたあの病院に。」
「そう…なんじゃないですか? 逆なはずはないですし。季節からいっても。」
「だよね。今昏睡から覚めたことにするために、わざわざ入院し直すなんて、手の込んだ隠蔽策だなぁ…。」
■実那子たちが帰ったあと、小屋の前■
「この、斧をガッて振りおろすとこね。印象強いや。」
「また音楽があそこで切り替わるでしょう。そういうところ、うまいなぁ演出が。」
「コーヒーでも飲んでくかって、やっぱりパパはコーヒーが好き。」
■車中での会話■
「この、今ならどこへでも行けるっていうの、重たい意味あるよねー。輝一郎の投げた最後のコイン、あるいはダイス。」
「智子さんて、もう輝一郎が犯人だって思ってます?」
「犯人…ていうか…少なくとも怪しいとは思う。記憶を失う前の実那子を知ってて、それを伏せて彼女の婚約者やってる男がさぁ、何でもないよってことはありえないもん。」
「何でもない、はないでしょうね。多分。」
■直季と父親の語らい■
「母さんの命日忘れた発言。ここから『濱崎麻紀子の墓に花束供えたのは、この2人のどっちかだ』なんて話も出てるらしいですよ。」
「あー、なんかそんなこと聞いたぁ。…んでもそれはどうかねぇ。中之条から横浜ってチョー不便だぜ。車で行くにしても電車で行くにしても。」
「地元民としては気になりますか。」
「なるね。本籍神奈川、現住所群馬の木村智子としては。」
「ああそうでしたね。」
「なんかこのドラマさ、あたくしにゆかりの土地ばっか出てきて嬉しいったらありゃしない。由理の実家が千葉県市川市だったりしたらどうしよう。」
「…どうしようもないでしょう。」
「ないけどさ。…あ、このシーンのラスト、コーヒーすすってる直季のアップで、ちょっと目がうるんでるように見えるのもナイスだと思う。」
■敬太と輝一郎の同盟■
「なんでこんなビルから出てくんだと思ったら、敬太ってフリーライターだっけね。この出版社に仕事もらってんのかも。」
「ほんっとにそういう、ストーリーとは関係なさそうなとこチェックする人ですよね。」
「むしろそういうのが気になるんだってば。作り手の個性って些細なとこに出んだからぁ。」
「でも敬太はやっぱり、直季を売りましたね。」
「売ってくれたねー。やると思った。これはもう以前からハッキリ伏線引かれてたし。判りやすかったね。」
「ただ…今後敬太が本当に輝一郎とベッタリで動くかどうかは判らないところですね。ダブル・クロス…いわゆる二重スパイ、やろうと思えばできるでしょう。」
「そうなのそうなの。かなりヤバイ立場になってるね敬太は。輝一郎の後ろにいるヤクザ屋さんに消されなきゃいいんだけっともねぇ。」
「タイトルバックで、彼、木の枝から飛び降りるでしょう。あれって意味シンかも知れないですよ。」
「案外どっかから突き落とされてお亡くなりに?」
「ありえますよね。けっこう登場人物が死ぬって、どっかでプロデューサーが言ってたんでしょ?」
「由理が倒れるのも…そうすると何か意味があるのかな。」
「いくらでも深読みがきくようになってるんですよこのドラマは。」
「だろうねー。読みすぎると自分から迷路に入ってっちゃう仕掛けになってる。」
「What’s upで言ってることって、僕はあんまり信用しない方がいいと思いますね。振り回しにかかってると思う、あのおとこは。」
「言えた。とにかく話題を盛り上げようとしてると思う。」
「なんか…出演者も巻き込んでの”全員営業”やってません? 眠森。」
「組織力で来るか。いいねー。好きだねそういうの。」
■ベランダで、直季と実那子■
「出ましたロミジュリ! ロンバケではスーパーボールを上下に投げて、こんだ野球ボールを前後に投げるか。やるもんだねぇぇ。」
「これ、実那子は直季を待ってたんですかね、ベランダで。」
「うーん…ずっとは張ってなかったろうけれども、彼が帰って来るのが見えたんじゃない? んで、部屋に入ったらアイツはすぐにベランダに出るだろうと思ったの。煙草吸う人間の部屋ってさ、留守の間に匂いこもるもん。彼の部屋に行ったことのある実那子にはそれがピンと来た!」
「そこまで背景付けするんですか?」
「直季は実那子の前で何度も煙草吸ってるしさ、向かい合って話してると、何かの拍子に煙草の匂いって、ふっ…と漂ってくるんだわ。―――うわ、いま想像できた。直季のあのコートってさ、こうやって抱きしめるときっと、煙草の匂いとかしちゃうんだー! きゃぁぁぁーっ、せくしー!」
「…そんな、ポップコーンわしづかみにして食べないで下さいって。でもそういえば輝一郎って、煙草吸いませんよね。どっかで吸ってました?」
「はて。…吸って、ないんじゃないか? イメージ的に吸わなっぽい気もするし、1人で徹夜してる時にもくわえてなかったよね。」
「どうでもいいんだけども、妙に気になるんですよねこういうことって。」
「吸わないとしたら輝一郎の車って、あのヤーな匂いしないんだろな。結婚しても、実那子、らくー。お部屋のお掃除簡単に済むよぉ。」
「やっぱりこの座談会って、かなりヘンですよ。」
「いや、ほんとは直季の夢の話、したいんだけどもね。これまた例の、12月以降の巻に持っていきたいの。」
「またですか? 今度は何が気にくわないんです。」
「ままま、それはアトで。…あ、そだそだ忘れるとこだった。ここでさ、実那子にいいひと扱いされた直季が部屋に入ろうとするところで、壁のポスターがチラッと見えるよね。犬のやつ。」
「犬好きなんですかね、直季はやっぱり。」
■濱崎邸アトリエ■
「ぱぱってば、やっぱスケベ親父だしぃ。モデルは他にいないとか言いながら実那子の肩をちょっと触るの。ほんとはヌードにしたいんだぜコレ。まったく人生死ぬまで青春なんだからなっ。」
「でも芸術家にとって、欲望は創作の糧ですからね。」
「おや八重垣くんらしい発言。ま、枯れちゃった人間にいい作品は作れないやね。絵も音楽も文章も。」
■墓地にて■
「キリスト教のお墓って、綺麗ですよね。なんかこう、空気がサラッとしてて、お墓参りも絵になるっていうか。」
「そうだね。これさー、やっぱ八柱霊園はやめてほしいもんね。ヒシャクの入ったオケ下げて竹箒持って?」
「とたんに主題歌がさだまさしさんになりますね。」
「そだねー。まぁさ、人の死を扱うのが宗教の最大の役割だからね、その意味で日本の国教はやっぱ仏教なんだと思うよ。『死』っていうのは暗くてジメジメしたものなんだから。お墓には暗いイメージがあって本当なのよ。」
「壇家制とか、長かったですからね日本は。」
「まぁそれはサテ置き、やっぱママが持って出てったのは酒瓶みたいね。輝一郎ワイン持ってるし。」
「ああ、うん、そうみたいですね。」
「お墓にお酒、供えること多いよね。よく一升瓶とか置いてあんじゃん。でもってそれを狙ってホームレスのひとびとが出没するらしい。」
「輝一郎のお母さん、はっきり顔映ったのは今回が初めてですね。」
「さっすが美人だねキーパーソン! でも生きてるのかね彼女は。」
「判りませんねぇ。ここで輝一郎が見たのは幻なんでしょうけど。」
■マンションで事件の考察■
「ここでの説明セリフがあったから、今回のリワインダーは、拾い出しをしっかりやった! こういう部分ってねぇ、はしょる方が難しいんだもん。」
「このシーンって、頭から尻尾までダーッと通さないで、途中にちょこちょこ別の場面挿入してるのが成功ですね。直季のシーンとか国府のシーンとか。」
「うん。ぶっ通しだとちょっと疲れるかもね。」
「実那子のお父さんて、やな奴じゃないですか。地方の政治家独特の権威主義かも知れないですね。」
「ホントだね。いるんだこういうサイテー男!」
「人間、一番醜いですね。入れ物が立派なだけなのに、自分の力だって勘違いする奴。」
「そうそう! その通りよっ!」
■仕事中の直季■
「はい、ここで間違い探しその1―! 直季の会社って、ライトセービングじゃなくライトセーバーでしたっ! お詫びして訂正いたしまーす!」
「まぁしょうがないですよ。正面にハッキリ映ったの、今回が最初ですから。」
「あ、『直季さん』って呼ばれてたよね。よかったぁ『課長!』じゃなくて。いきなりおとぼけコメディになっちゃう。」
「社長と専務以外はヒラなんですよ多分。」
「かもね。まぁこのシーンで一番びっくりしたのは朝霞が出てきたことかなぁ。『群馬に神奈川、次は朝霞かよ!』って思った。だって私住んでたんだもん朝霞のマンションに。」
「なんか智子さんて、ほんっとあっちこっち引っ越してませんか。」
「ねぇ。何者なんだだよね。朝霞って東洋大のキャンパスあるからさ、学生はワリと生息してんだぜ。…つってもあたくし東洋じゃございませんが。」
「ああ、うけたけどスベッたんでしょ? 確か。」
「はっきし言うなっ!」
■引き続き2人のマンション〜輝一郎の回想■
「うーん…。確かにこの回想シーンが出ちゃったら、輝一郎怪しい説はもう決まりでしょうね。」
「うん。―――もしもよ? 輝一郎が犯人だとすると、けっこう辻褄合うんだよね。特に国府がなぜ黙って刑に服したのか。あれ、親友の輝一郎の犯行だって途中で気づいてさ、取り調べに口をつぐんだとすればうなずける話じゃない? 輝一郎が実那子の父ちゃん殺したのは、国府に濡れ衣を着せたって知ってカッとなったから。…ほら武藤部長が言ってるじゃない猪突猛進だって。本気で怒ると怖いって実那子も言ったしさ、カッとすると前後の見境がつかなくなるタイプなんじゃないの。」
「でも…僕としては、輝一郎が犯人ていうの、あまりにもベタすぎるって気がするんですけどね。」
「そうなのネックはそれなの。あまりにもふさわしすぎて『?』かなって。…だからさぁ。実那子がしきりに不思議がった通り、両親を殺した犯人と貴美子を殺した犯人って別人なんじゃない? 輝一郎はそのどちらか一方にすぎないと。」
「ああねぇ。なるほど。そういう考え方もできるんだ。」
「まだ第5幕だし。もうひとひねりか2ひねりは、あるよ。」
■国府のアパート■
「このビーズの暖簾が効いてますね。いい小道具だな。」
「赤いドアに青いビーズ。えらくチープなとりあわせでね。春絵はつくづく哀しい星回りなんだなー。美人なのにねぇ。」
「蛍光灯の逆光と国府の横顔。これもいいや。すごく澤田さんらしいんじゃないかな。」
「水道の水、飲み干すのもいいよね。マズいぜーきっと。…いや、もっとも神奈川の水ってそんなにひどくはないのか。知ってる? 関東の中でも神奈川だけ水源が違うの。あそこだけ多摩川なんだよ。他はみんな、東京も千葉も埼玉も利根川水系なんだけどね。」
「へぇ、そうなんですか。」
「だから利根川が水不足になって給水制限とかになっても、神奈川って案外平気なんだって。多摩川が枯れたって話はそういえば聞かないもんね。」
「利根川の最上流って…もしかして群馬ですか?」
「ピンポーン! 坂東太郎の故郷は群馬だいっ!」
「全然関係ないですけどね、眠森と。」
「群馬に関係してるからいいじゃん。」
■みたび、2人のマンション■
「ここがねー! もう今回のリワインダーで一番引っかかった場面。違う個性の創った世界を自分なりに再構築するのは、ある意味不可能だと悟ったね!」
「悟ったんですか。」
「悟った。『アタシならぜってー実那子にこれは言わせない!』ってセリフが出てくんのよ。まぁそれについてをね。12月以降にまとめるつもりなんだけど。」
「あれでしたっけ? 男性作家の書いた女性キャラの…云々?」
「そ。実那子ってキャラを突き詰めた時、ぶちあたっちゃうゲンカイって奴。画面見てる分には、美穂さんのうまさに隠れて感じないんだけどもね。書き起こすと出てくる。演技っていうカバーが取れちゃうから。」
「そんなに抵抗あるんですか? このシーン。」
「ある。だから全部まとめて、12月!」
「じゃあ次いきます?」
「あ、待って待って、1個ある。」
「あるんじゃないですか。」
「輝一郎ってさ、35歳の男なんだなーと思うのね。そうめったやたらと、キスだのえっちだのに走らない。コレ、実那子の手を握った段階で、直季だったら走ってるっしょお。」
「あー…(笑)」
「なー。そうだよなー。輝一郎は大人の男。直季はまだ青い青い!」
「いや、直季は35歳になっても落ち着くとは思えませんけど…。」
「確かに個人差はあるけどね。実那子の場合もさ、27歳なんてぇのは、いっちゃん安定してるんだよな。」
「何がです。」
「だから欲望が。こう、いい高さで水平になるってゆーか。20代前半はコッレがあなた、なかなか。」
「(笑)」
「20代前半はパンチのきいた体力もある時期だからねぇ。何たって無理がきくんだよな。ほいでもって25過ぎるとけっこう安定して…30過ぎるとコレが、まぁたボルテージ上がったりするんさぁ!」
「そういうもんなんですか?」
「いや、だから個人差はあるさ。しかし統計的に見てね、そういう傾向にある事実は、あながち否めないと思うよ。」
「回りくどいですね(笑)」
「30代の体力はさ、20代の爆発力はないけども、持久走的な、息の長いパワーがあんだよね。このあたりの世代の、内に秘めたるあぶないパワーがだね、木村拓哉という希有のバーチャル・ラバーに集中してるんだと私は思うなー。彼の人気はね、そういう…いわばジェネレーション・マジックなんじゃないかなぁ。」
「えーと、またややこしい話になってきましたところで、まとめに入ろうと思います。輝一郎怪しい説を中心に、ますます波乱が予想される展開。一時も目が離せませんね。」
「なにをペナントレースのコメンテーターみたいなこと言ってんの。―――ああもう、話すのに忙しくて何も食べてないじゃん。ローストビーフが冷めちまったよ。」
「何も食べてないって、そのお皿の、そこの空間。それは何なんですそれは。」
「…行間の美…ってヤツかな。」
「まぁいいですけどね別に。―――えーと、このコーナー、最初は毎週日曜の夜にUPする予定だったんですけどね、セリフをほぼ100%拾い上げる方式にした理由から、火曜か水曜のUPになります。」
「(食べている)」
「ちょうどオンエア直前に、前回放映分を見直す形になって、まぁそれはそれでいいのかなと思いますね。それでは今回はこのへんで失礼します。パーソナリティーは私、八重垣悟と、」
「眠森の原稿書いてるうちに1週間終わっちゃうんだよぉー!の木村智子でしたー!」
「ここで愚痴ってどうするんですか。”直タイプ”ができない分、遅いんでしょ?」
「まぁまぁまぁ、本番も終わったことだし、さぁさぁワインをあけましょう。」
「そういえば『ソムリエ』、面白いですよねあれね。」
「うん。”王レス”に似てるけど味つけが違うって感じでね。眠森とセットで見るといいバランスになって、なかなか興味深いよ。…はいはいトクトクトクと注ぎまして、さぁ乾杯しようぜ乾杯!」
「うわ、このワイン、シュバル・ブランじゃないですか!」
「そうなのだ! このスモークサーモンによく合うんだ………って、おいっ、おいっ八重垣! カフ! カフ! onのまんまじゃないよ!」
「えっ、うそ! 僕さっきちゃんと切りましたよ!?」
「切れてないよっ! 筒抜けだって今の会話!」
「あっちゃー…。」
「あっちゃーじゃないって! 飲み食いしてるトコ放送してどうすんだよぉ!」
「なんかヤバいこと言いました? 僕…。」
「隣の部屋の女子大生が土曜日には決まって赤いランジェリーを干すとか言ってたと思うけどね。」
「言ってませんよそんなこと! どうしてあなたはそういう――――」 ブツッ
第6回めへ
インデックスに戻る