【眠森談義 座談会編 第11回】
「よーお八重垣くん、お早い『入り』だねー。今日もよろしくお願いしまぁす。」
「…何してるんですか。」
「いやなにね、ちょっとクリスマス気分出そうかと思ってさ。」
「何ですこの飾りつけは。クリスマスっていうより幼稚園のお誕生会みたい―――うわ、懐かしいなぁ色紙の鎖! 七夕とかによく作りましたよ。」
「まぁほら次回の座談会は、もう暮れも押し迫った頃になるしさ、華やかなクリスマス気分は今回くらいしかできないっしょお。」
「でも智子さん、自分は仏教徒だからとか言って、キリシタンの行事なんか関係ないとか言ってるじゃないですか。」
「いいじゃないか気分気分! この曖昧さこそが日本文化の神髄だと、○澤千代治も言っている。」
「駄目ですよ楽屋ネタに持っていっちゃ。」
「はいはい、んなこたいいから。ほれシャンパン。サーベルで開けてくれると嬉しいな。」
「無茶言わないで下さいよ。あれは佐竹城。僕とは違うキャラクターなんですから…。第一このシャンパン、何ですか子供用じゃないですか。」
「だって本番中に酔っぱらう訳にいかんでしょお。何言うか判んないぜ? 私。」
「偉そうに言うことじゃないでしょう。…じゃあ少し早いけど始めますか?」
「うん、始めよう。えーとシナリオはと…」
「ありませんて、そんなのは。…えー皆様、お元気でしたでしょうか。楽屋裏から入ったみたいな感じのスタートで大変失礼しました、八重垣悟です。眠森談議・座談会編第11回、オーラスももう間近ですから、気合い入れていきたいと思います。」
「はいっ木村智子どぇぇす。忘年会も何も全部パスして原稿書いてる、いったい私は何なんだといった今日この頃、でも結果的に肝臓のタメにはいいと思います。体にもいいぞ眠森談議、今日もハリキッていきましょー!」
■警察病院霊安室■
「石橋さんにはびっくりした。こんなチョイ役にこの人使って、まるでハチ公物語やんけー!とか思ったよ。」
「ハチ公物語…(笑)懐かしいですね。」
「あの映画って、ストーリーもよかったけどもさ、端役の末端まで有名人なんだもん。屋台の親父が山城さんで、宿屋のおかみさんが菅井きんさんとか…。豪華もいいけどホドがあるって感じの豪華だったねあれは。」
「まぁそれはいいですから、霊安室の話。」
「霊安室ねぇ。…今回はね、あと1回で最終会ってこともあるから、辛口は一切控えようと思うんだ。だからここはノーコメント。さっさと次行こう。」
「え? それでいいんですか?」
「いい。ここはチョー辛口だから。」
「…なんかおっかないですね。いえ僕が怖がることないんですけど。」
■商店街〜写真屋さん■
「これ、回りの通行人って全部エキストラですよね…。」
「そらそーだべ。高崎市中居町の商店街でだって、拓哉とユースケが撮影してたら人だかりができるよ。」
「中居町の商店街ですか(笑)」
「そうそう。高崎駅からバス10分。」
■土手■
「ここって多摩川かなぁ。」
「さあどうでしょう。利根川じゃあないとは思いますけど。」
「荒川、江戸川、四万十川。…違うよねまさかね。」
「違いますよ。」
「直季が耳のとこ押さえて痛がるの、これはさすがにラストの伏線だろうね。」
「でしょうね。怖いんですよね、あそこが痛むのは。」
「そ。耳ってヤバイのよ。交通事故とかにあってね、被害者の耳から血が出てたらもう、まず脳はやられてると思って間違いないんだって。現職の刑事が言ってたもん。」
「刑事の知り合いですか。知り合い多いですね(笑)」
「別に仮出所してる訳じゃないかんねっ!」
■オーキッドスクエア〜波止場■
「もうもうラストに向けて輝一郎怪しい説は一気に加速だねっ!」
「え、そうですか?」
「そうだよぉ。『これ以上国府に怯えて暮らすのは…』って輝一郎の本音でしょ。それに由理は、これから会うのが輝一郎だと思ったからこそ、実那子に手紙出す気になったんじゃないの? 負けないで下さいって言うのはさ、輝一郎がとんでもない男であることに、いずれ実那子も気づくだろうことを告げてるんだと思うよ。それにサンタが国府なら、由理は彼の顔知らないんだし、あっさり直季に写真渡したんじゃないの?」
「うーん…。僕としては、輝一郎のお母さん、麻紀子ですか? あの人が全く無関係とは思えないんですよね…。あっちこっちに出没したのは輝一郎の心情が見せた幻影だとしても、本人が本当に死んだかどうかはまだ判らない訳でしょう。」
「うん。そういうのが多いんだよねこのドラマ。謎解きとして突き放して見るなら面白いけど、ストーリーに身を寄せて見ようとすると、不満噴出。」
「まぁまぁそれは最終会以降にまとめましょう。本当に意外な結末が待ってるかも知れないし。」
「そうだね。やっぱり犯人は中村園長で、その動機は、女房に高価なイブニングドレスをねだられたのを逆恨みして…。」
「まぁたそっちに持っていく(笑)」
「それにしても招待客の数、多いよね。船1隻借り切って、参加者10名だったら寂しいもんがあるけども。」
「会社関係には一切招待状出すなってことでしたよね。大学時代の友達とかが主なのかな。」
「いや、何せ父親が世界的に有名な画家だもん。そっちのルートで嫌ってほど知り合いはいるよ。」
「ああそうか、なるほど。」
「けどさ、輝一郎と会社の一件に関するエピソードは、完全に切り捨てられたね。もし国府がこのまま何もしないで無事に結婚式挙げられたとしても、終わったらすぐに英語の通じない国飛ばされるんだべ?」
「それって、ある意味15年前の真実どころの騒ぎじゃないですよね。生活変わっちゃうんですから。」
「事実は小説より奇なりってのは、こういうのも言うんだろうな…。ほんとは無事に結婚式挙げた、そのアトが大変なんだよ輝一郎は。」
「そうですね。変なとこ飛ばされたら今はヤバイじゃないですか。内乱とか戦争とか、いろいろあって。」
「いえたいえた。日本だってあーたこれ以上景気が低迷したらさ、冗談ともかく国家の危機だぜ。」
「赤字国債の発行がどうのって言ってますしねぇ…。」
「うーん社会派だなぁこの座談会は!って単に話がそれてるだけか(笑)…戻そう。」
「今回、国府の出番はここだけでしたね。」
「あの汽笛の『ブオー』はちょっとな。”さも”って感じだったなー。」
■直季の部屋■
「祐天寺から赤坂見附かぁ。フジらしい設定の定期。」
「そうですか?」
「だって拓が持ってんのは『営団成増←→銀座1丁目』の定期だぞ。」
「だからそれがつまり、智子さん好みの設定なんですよ。いわゆるキムトモワールドって奴。」
「そっか。どうも現実のコマコマしたこと無視したハナシが作れなくてさ。」
「智子さんがもし眠森書いたら、わりとその…」
「みみっちい話になると思うよ。」
「いえそうは言いませんけど(笑)固定資産税がどうとか実那子の残業手当がどうとか、身近な題材が入ってくるんだろうなと思って。」
「私だったら由理は第4幕で消すね。―――あ、由理ってばそうそう、この由理の歩いたコース。」
「ああ、はい。」
「多分大学時代かな、お金のなかった直季が、由理を連れて歩いた道なんだろうね。そんな大したレストランとかも入れなくてさ。」
「いえてますね。ブラブラ歩けばそんな驚くほどの距離じゃないし。」
「うん。急いでスタスタ歩いたら着く頃には目まいすると思うけど、喫茶店でおチャしたり、休み休み行けば、ちょうど午後半日がつぶれるって感じかな。」
「そうですね。ウィンドーショッピングしたりとか。」
「あたしさー、前のダンナとつきあってた頃、やっぱ2人ともお金なくて、渋谷→新宿→池袋、って歩いたことあるよ。」
「え、線路の上をですか!?」
「なんでやねんっ! 酔っ払いとちゃうねんで!?」
「いや、でもそれはちょっと、歩きすぎじゃあ…」
「色んな話しながら歩いてたら、歩けちゃったって感じよ。」
「そういう意味では気の合う2人だったんですよ。僕だったら途中でパスです。」
「由理が向かったのは東京タワー…。あそこでデート、ってのは私もTKで使ったんだよね。まさか読んでるのかしらん。」
「いえそれはないでしょう多分。」
「ウチのイトコ、東京タワーに勤めてて、イベント企画とかやる部署で働いてんだよ。んでオフィスは地下にあんの。東京タワーの地下で働いてる、って何かおかしくない?」
「タワーって言われたら普通、上の方を想像しますもんね。」
■正輝のアトリエ■
「ここって何気ないシーンだけど重要重要! 輝一郎ママって福島出身なんじゃん。つまり森田家のことは知ってる…か、少なくとも土地鑑はあるってことだよね。」
「うん、僕もそれは思いました。この設定は意味がありますね。」
「あるあるきっとある。福島といえども広うござんしょうが、地名言われてピンとくるのは地元民ならではだからね。行ったこともない土地なんてさ、せいぜい県庁所在地言えるくらいしか知らねーべ。しかも、いるんだよ埼玉の県庁所在地を大宮だと思ってる奴が。」
「福島と福岡の区別がつかない人もいるんじゃないですか。」
「いるいる実際にいる! あのね、ウチの親会社でさ、新卒の男子社員は必ず2〜3年ディーラーに配属になって営業やるんだけど、その中の一人が東京本社で人事と面接した際、『家庭の事情で、できれば福島県内のディーラーに配属して欲しい』って頼んだんだって。『判った』って言われて安心してたらね、4月1日に発令された配属部署は、なんと福岡だった(笑)」
「ほんとですか。」
「ほんとほんと。今でも語り継がれてる笑い話。」
「で、その人はどうしたんです。」
「どうしたもこうしたも、発令されちゃったもんはしょうがない。泣く泣く転勤したんじゃないの? よく知らないけど。」
「うわー…残酷だなぁそれって…」
「ねー。人事課の担当の些細な勘違いで、えらいメーワクだよね(笑)」
■ビルの屋上・直季と敬太■
「このシーンは”白眉”だね! 眠森全編通して筆頭に上げてもいいんじゃないの?」
「え、最近珍しいですね、そんなに褒めるの。」
「いやさ、細かいところにはいろいろモンクもあるんだけど…いいものはいいと認めなくちゃ。このシーンはよかった。独立した1つの場面としてはね。」
「あれ(笑)何か語尾に含みを感じますけど。」
「ん、正しいぞ八重垣(笑)大いに含んでる。」
「でも確かに、直季と敬太の火花散るやりとりって感じで、緊張感も文句なしでしたね。」
「ユースケさん…よかったねぇ…。もち拓哉もよかったよ。うん。」
「殴るのか、と見せかけておいて抱きしめるじゃないですか。あれなんかジーンと来ました。」
「うんうん、いい演出だった。柵の外に出てからの敬太の涙はさ、初めは自分に対する後悔とか慚愧とか、そういうのだけなんだろうけど、だんだん直季に対する、人間対人間の感動みたいなのが加わっていくの。最後に直季の手をさ、直季が顔しかめたほど強く握ったのは、感謝の想いだったと思うのね。最後まで自分に手を差し伸べていてくれた、唯一の人間に対する…。」
「いい解釈しますね。なんか久しぶりだな智子さんのそういうの聞くの。」
「あたしも久しぶりに言った気がする。」
「やっぱり…辛口よりいいですよね、そっちの方が。聞いてても。」
「しゃべっててもこっちのがいいよ。ほんとはベタ褒めしたいんだから私はぁ! なのに出来ないからイライラすんだもん。…ッたくさー、女性キャラクターにほんっと魅力のないドラマだよね。直季と敬太と、男2人だったらこんなに純度の高いいいシーン作れるクセに、女が出てくるとどうも駄目よ。実那子相手、由理相手の直季は、キャラとしてここまで輝かないもんね。女同士の会話なんて特に上ッツラだよ。」
「まぁまぁ(笑)…。リワインダーの方も、このシーン久しぶりに熱いですもんね、文章が。」
「かも知んない。プロフィットのすべりも軽かった。」
「…あ、ご存じない方いらっしゃるかも知れないんで説明しますと、プロフィットっていうのは万年筆の名前です。」
「木村智子の愛用品ー! セーラー・プロフィット細字、これ1本でジャスト1万円。書き味最高。卒論・柿本人麻呂も『TK』もコイツで書きましたー! 第一この座談会編だってプロフィットで書いてるよ。」
「今どき珍しいですよね、万年筆って。」
「うん。カートリッジインクがなくってねぇ。5箱とかまとめ買いしてる。」
■警察〜早朝の路上〜部屋にいる実那子■
「屋上のシーンを絶賛しといて、んで、このシーンはさっそく辛口になっちゃうのさっ! でもまぁ今回は辛口セーブ週間だからやめとくけどね。」
「いや、とか言って、もうけっこう言ってますよ(笑)」
「そっか(笑)…いや、この回想シーンねぇ。こうやって見せられれば見せられるほど、なんで直季が由理に惹かれたのか、説明不足だなーって思っちゃうし。」
「ああ、つまりそういうことですか。」
「細かい引っ掛かりはもう、たんまりあるけどねー。それはまぁ重箱のスミに類するもんだからどうでもいいけどさ、1つ上げればこの、実那子にかけた電話で、『俺。伊藤直季。』って名乗ってるけど、普通フルネーム言わねぇよなとか思った。」
「そういえば直季のお父さんも、最初実那子と輝一郎に会った時、『伊藤直巳です。』って名乗ってますよね。」
「親子してやることソックリじゃん(笑)」
「でもそれは何て言うか…実際の会話と、ドラマのセリフの性格の違いでしょう。」
「まぁね。そうだと思うよ。」
■オーキッド・実那子を訪ねる輝一郎■
「中村園長、出番多いなー。クライマックスに向けてやっぱ、こいつが犯人なのかしらん。しつこいけど。」
「違いますよ。しつこいけど(笑)」
「ここのトオルさんは素に近いかもね。何かそんな気がする。『せんぱぁい…』とか言ってた町田トオル君っぽい。」
「ほんっとあぶ刑事好きですよね智子さん。」
「大好きっ! 『踊る大捜査線』がリアリティ重視のドラマでさ、あれはあれで大好きだけども、『あまりにウソっぽい刑事ドラマが多すぎる』なーんて言われると、るっせー!とか思うよ。あぶ刑事のあのセンスは日テレならではのもんだね。あの派手派手な軽快さはフジにはない。」
「ドラマにも局の特徴は出ますよね。」
「出る出る。大いに出るよ。」
■森の中■
「…このシーンは素通りして。」
「えっ。それはまたどうして。」
「文句タレモード炸裂するから。第11幕はあの屋上のシーンだけでいいよ。この2人の会話…これ語らせたら私、一晩中怒ってるよきっと。」
「じゃあ、よしましょう。最終回のあとの、言いたい放題編でやるんですね。」
「そういうことっす。」
■診療室■
「これね、この、一定のリズムで光当てるやつ! 私これ実際に知ってる。」
「何か治療でもしたんですか?」
「ううん。前にいた渋谷のソフトハウスでね、実験的にやったことあるんだ。なんか、脳内のα波を出すとか何とか言って…。」
「α波を。」
「あのね、社内で面白い試みやってた会社でね、半年に1回くらい、希望者募って討論会みたいなのすんの。その討論の場にライト持ち込んでね、みんなでああこう話してる回りに、カッ、カッ、てちょうどこんな感じのライト当てんのさ。α波が出てたかどうかは知らないけど、確かに議論は建設的に白熱したよ。」
「へーえ…。面白そうですねぇ。」
「ネット上でもさ、どっかのチャットでそういうのやったら面白いかもね。実際に誰がイチオシかってのは置いといて、参加者をアトランダムに2つに分けてさ…フォッサマグナか何かで。んで片方は『木村拓哉の魅力について』、片方は『木村拓哉の欠点と問題点について』を、あくまでも冷静に客観的に論じなさい、とかやんの。自分自身が彼を好きかどうかは別問題として、その立場に”仮に”立ってみてさ、いろいろ考える。こういうのってフレキシブルな発想の訓練にもなるんだよね。」
「智子さんて、そういうのすごく好きそうな感じしますね。」
「いや私からするとヤエガキ君て、こういうののパネラーが似合ってるよきっと。」
「理屈っぽいんですかね、僕ら。」
「SEだからなー2人して…。おおまた話がそれた。実那子が昔を思い出すシーンよ。」
「ここでですね、僕が思ったのは、…15年前の実那子は殺人現場を全て見たはずだとか言ってて、ほんとは見てなかったわけですよね、2階に行ってて。」
「ああそうなのよねー。父親と母親が刺された『瞬間』は見てないの。実那子が見た国府は、貴美子抱いて泣いてたんでしょ? それって彼自身が車の中で刑事に説明したのと何も変わんないじゃない。実那子は決定的瞬間は見てないんだよ。」
「もしくは、まだその瞬間までは思い出していないか、または…記憶そのものが事実とは違ってしまっているのか…。」
「直巳が言ったもんね、フラッシュバックで思い出した記憶も、事実と等しいとは限らないって。」
「でもそうすると実那子の思い出したこと自体が、あてにならないって話になりません?」
「そうなんだよね。とすると所詮はこのドラマ、推理しろって方がどだい無理なんじゃないのかな。」
「うーん…。かも知れませんね…。」
「これさ、もし本当に、実那子が見たのはこの、貴美子抱いてる国府の姿だけだとしたら、実那子が証言台に立たなくて国府ラッキーだよ。実那子が『犯人は国府です、私は見ました。』って証言しちゃったら、ほぼ間違いなく死刑(笑)今ごろ生きてない、君は。」
「そういうことですよね。それって笑っちゃうな。」
「笑えるよマジ。」
「でもこのとき直季って、けっこう真剣な顔で見てるじゃないですか。実那子の記憶が戻るより、彼が何か思い出すんじゃないかなって感じしましたけどね。」
「それ言えた! 最後に大バケすんのはもう直季しかいないと思うし。」
「最終回は人間ドラマだって、野沢さん何かの雑誌で言ってませんでした?」
「へっ、笑かす… あっいえいえ何でもっ!」
「僕にごまかしてどうするんですか。聞こえましたよちゃんと。」
「おおそっか。いえね、別にごまかしてはいないけどさ。」
「まぁとにかくあと1回ですから、泣いても笑っても次が最終回です。」
「うん。ビシーッとシメようね八重垣くん。」
「ええ、きっちりまとめましょう。…といった訳で今回はですね、けっこうあっさり目の座談会になりましたが…次回が重たいですから、敢えて辛口控えめでお送りしました。イブの夜、僕たちを待っているものは何なのか、見届けたいと思います。それでは来週までご機嫌よう。パーソナリティーは私、八重垣悟と、」
「年末年始も下手すりゃ出勤、原稿いったいどうすんだぁ〜!の木村智子でしたーっ!」
「……さぁてさてさて飲もうぜ食おうぜぃ! ちゃんとしたアルコール入りのシャンパンだぜぃ!」
「じゃあ、シャンパン・タワーでもやりますか?」
「お、やろうやろう! グラス6つしかないけど。」
「十分ですよ。下から3、2、1で重ねれば。」
「そだね。…うー…なんかバランス難しい…。」
「え、ちょっと待って下さい、カフ下げてないですよカフ!」
「ああこれはワザと。皆様にもこのね、ミニ・シャンパン・タワーのしょわーって音をお届けしようと思って。」
「6つじゃ大した音しないですよ?」
「まぁいいからさ。…よしっ!できた。じゃあついでついで。」
「いきますよ。」
「おしっ! そーよこの音この音! しょわぁぁぁ……」
「うわ、こぼれ………」
「あ―――っ!」 ガッシャーン! …ブツッ
第12回めへ
インデックスに戻る