あとがき 〜葛生先生について〜  


東京・渋谷の道玄坂。
プライムを過ぎてYAMAHAを過ぎて、左手に京王線の車庫を見るあたりに、1本の桜の木が生えています。
その角には1階が和菓子屋さん(有名な老舗です)のビルがあって、2階が美容室。この美容室のオーナーAさん。真っ赤なセーターがよく似合う、このかたが葛生先生のモデルです。
Aさんの名誉のために申し上げますが、彼はモーホーではありません(馬鹿、怒られるぞっ!)。
「『TK』には、拓のスクールの先生を登場させよう!」と思った時、ふっと浮かんだのがこのかたでした。だってすごくセンスのいい先生なんだもの。
さてここで語りたいのは葛生の外見じゃなく、内面。
彼は一言で言って『キムトモワールドの化身』に他なりません。
花を使って表現するさまざまな情景やイメージ。
拓を見つめて彼が漏らす耽美的な溜息。
女の由布子よりももう少し文学的な、言ってみればロココ風の称賛。
ぴんと張った襟にネクタイを締めた拓の、その胸元の清々しさに、蕩(とろ)けんばかりの視線を注ぐ彼。
命も財産も全て、注ぎきって惜しくないと思うほどの愛弟子。
…言ってみれば古来日本の伝統的な『衆道(しゅうどう)』の精神ですね。もし拓が身売りをしたら、葛生は5億や6億、ポンと出すことでしょう。
恋愛関係ではなく、芸術とか文学とか、そういう立場で拓の『大切な人』になりたい…
それが葛生のただ一つの願いです。世に許された関係は、最初から無理なんですもの。
拓の肉体と男としての愛情は、彼が愛したどこかの女に。
けれど彼のアーティストとしての才能は、他の誰にも渡さない。
拓の感性を育てることが、葛生の愛の成就なんですね。
いいな、こういうの。
私がもし現実の『木村拓哉』と係われるとしたら、恋人や友だちというよりも、葛生先生の立場を選ぶかも知れない。スタッフ、というよりは、彼のブレーン。
生き馬の目を抜く芸能界、ライバルの多い競争世界。bPの座に君臨する彼は、今や完全に追われる身。
追う者より追われる者が辛い。これは何にしてもそうでしょう。
彼がそこで、輝くために。持てるエネルギーの全てを注ぎ込めたら。
男女の愛より強く太い絆を、育てることができるような気がします。
…そうか。人間、容色衰えると愛はそこへ行くのか。(笑)
 

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