●西側の安全保障をズタズタに切り裂いたモスクワ条約・共同宣言とローマ宣言

 ソ連=現ロシアは「トロイの木馬」戦略を実行中


 一、西側を騙す露国の「トロイの木馬」戦略

 

 去る五月二十四日、ブッシュ大統領とプーチン大統領はモスクワで「米露戦略攻撃戦力削減条約」に調印し、また「新たな戦略的関係」と題された「米露共同宣言」に調印した。さらに五月二十八日にはローマで、「NATO・ロシア理事会」の設立を謳う「ローマ宣言」が、ブッシュ、プーチンおよびNATO各国首脳が参加して調印され、NATO・ロシア理事会の初の首脳会議が開催された。そして六月二十六日、カナダで開催された主要八カ国首脳会議G8で、二○○六年からロシアをG8の正式メンバーにするとの声明文が発表され、同年のサミットはロシアで開催することが決まった。

 アメリカ政府は、これで冷戦終結後の新世界秩序が確立したと有頂天になっている。

 だが、アメリカをはじめ西側自由主義国は、ソ連=現ロシアの「ソ連の解体と民主主義と市場経済の新生ロシアの誕生」という超高等な演技=謀略に、完璧に騙され洗脳されてしまっているのだ。さらにロシアの独裁者たちは、「国の経済的・軍事的弱体化と対米欧協力路線」を演じることで、西側諸国を驕慢にさせると同時に、西側の信頼を勝ち取ってしまった。とりわけ昨年九・十一アメリカ同時テロ後の、反テロ国際同盟の一翼を担うことでより一層の信頼を獲得していった。ロシアは西側の内側へまんまと入り込んでしまったのである。

 ロシアの独裁者たちは、ロシアの戦略的圧倒的優位を確立するべく努力を継続し、それが成ったら、反撃に転じ、旧ソ連諸国、旧東欧諸国、そして西欧、中東、日本等を侵略征服していくのである。ロシアは「トロイの木馬」戦略を実行しているのである。

 歴史はこれらの条約、共同宣言、声明文を、全体主義侵略国家ソ連=ロシアの謀略に敗北して締結させられたもので、西側自由主義国の安全保障をズタズタに切り裂き、国家存亡の危機に追いやったものだと断じ、締結した指導者たちを非難することになるだろう。米国など西側もいずれは気付くことになるわけだが、なんとしても取り返しがつかなくなる前に気が付いてもらわなければならない。私は米国等の一日でも早い覚醒のために微力を尽していく決意である。私の主張に共鳴された方も、是非ともアメリカ政府、議会、軍、シンクタンク等へ働きかけて頂きたい。

 

 二、米露戦略攻撃戦力削減条約は完全な誤り

 

 五月二十六日の産経新聞は、「露、『核の米優位』暗黙了解」の大見出しと、「弱体化認め大幅譲歩、10年後の保有、最大1対3の可能性」の小見出しを付けた記事を書いていた。少し引用しよう。「米露が冷戦時代の『核戦略思考』から〃脱皮〃を決断した背景には、ロシアの弱体化、国際テロの脅威、中国の台頭など国際情勢の変化が色濃く反映されている。(・・・)今回の合意は(・・・)大量の核を支えきれなくなったロシアが戦略核保有の『不均衡』と自らの『弱体化』を初めて実質的に認めた点に特徴がある」。

 これが米国政府をはじめ西側諸国政府の共通認識であると断じてよい。

 まず、米国をはじめ西側諸国は、一九九一年の「ソ連八月革命」を真実だと盲信してしまっている。新生ロシアを反共産ロシアであり、民主主義と市場経済という基本的価値の点で我々西側と同じ陣営にある、と思い込んでしまっている。この点は後で触れることにしよう。

 次に米国等は「ロシアは経済的。軍事的に弱体化して、財政的にせいぜい最高でも千五百発の戦略核弾頭を保有出来るだけだ」と信じ込んでしまっている。それはロシアの演技と嘘プロパガンダに洗脳されてしまった結果である。先の産経新聞の記事の中にも、ロシアの著名な軍事専門家フェルゲンガウエルの「実態は千七百発さえ維持・管理能力がないロシアは、経済力に相応な千五百発程度まで削減せざるを得まい」との意見が引用されていた。「1対3」というのは、彼によれば十年後にロシアは千五百発で、米国は二千二百発プラス保管の二千四百発を保有したい意向であるからである。

 「ロシアの経済的崩壊と軍事的弱体化」は、九○年代以降一貫してプロパガンダされてきたことである。西側のマスコミにそうした記事は氾濫してきた。西側はロシア政府やロシアのマスコミが発表する声明や数字を、まともに検証することすらしてこなかったのだ。頭から正しいと鵜呑みにしてきた。「ロシアのGDPはソ連時代の数十分の一になった」という嘘もそのまま信じられている。米国はこの認識の下で新条約を策定したのであった。

 

 三、ロシアの「弱体化」は演技である

 

 だが、本当にGDPが数十分の一になったのであれば、国民所得も数十分の一になることだから、既存の経済組織はほぼ全滅することになる。国民は生きのびるために、職場を捨てて海外へ逃げようとするか、農村へ逃げようとし、また空き地に畑を作っていくことになる。国中が大混乱し、大騒乱となる。何百万、何千万もの餓死者で国中が埋まることになるだろう。当然のことながら、そのような国が滅ぶことになる前に政府は転覆されることになる。そして再びソ連時代に回帰することになる。しかしこのようなことは、どれひとつロシアでは起きてこなかったのである。西側は嘘プロパガンダに騙されただけである。

 ロシア政府とマスコミは、二○○○年度(一月から十二月)のGDP見通しをドル換算で二千億ドル(日本円で二十一兆四千億円)、軍事費を六○億ドルだとし、ロシアの軍事費は米国の46分の1に過ぎず、だからロシアは戦略核は千五百発を維持するのが精一杯であるとプロパガンダしていた。プ−チンは同年十一月にはブレア英首相に、七百五○発がせいぜいだとさえ語っていた。西側はこれについても疑うこともなく、信じ込んできた。

 二○○○年の米国の現役兵力は百四○万人であった。ではロシアの兵力は、その46分の1の三万に割合近い数字であったろうか。違う。百二○万人であったのだ。この厖大な兵力を支えるだけの軍事費が支出されているのだ。六○億ドルであろう筈はない。さらに二○○○年九月の時点で、ロシア軍や内務省軍や国境警備隊など作戦に従事する軍人は、全部で二百十三万六千人であり、文官は九十六万六千人で、合計三百十万二千人であった。軍と治安組織に厖大な予算が使われているのである。

 最もカネがかかる軍備は何か。陸海空の通常戦力である。それに比べれば核戦力は、ひとたび配備してしまえば極めて安上がりの戦力である。五月二十五日の産経新聞は、「ロシア側としては、財政難という決定的な理由があった。ロシアでは二千発の核弾頭の維持だけでも『人件費や施設管理費などで少なくとも年間数千万ドル(数十億円)規模のコスト負担となる』(軍事筋)と推定される。老朽化に応じて、新たな核弾頭の生産も、必要になる」と書いていた。ロシアは年間数十億円の負担に耐えられないとの趣旨だが、三百万人以上の軍・治安組織を支えているロシアの財政力にとって、数十億円などとるに足らない微々たる額である。

 普通の国の政府であれば、たとえ事実であっても自国の軍事力の弱体化を繰り返し繰り返し対外的に宣伝することは決してしない。国の安全保障を脅かすからだ。ところがロシアは、この常識に反することを執拗に行なってきたのである。ロシア民族はそんなにバカ正直な民族であろうか?否。逆に常に相手を騙すことばかりを考えているのがロシア人なのだ。だから「どす黒い悪意が隠されている」と直感するのが西側の政治エリートであるべきなのに、こんな基本的なことも分からない程に思考停止状態に陥ってしまっているのが、米国ら西側なのである。国を挙げて反復されるプロパガンダの洗脳力は絶大である。

 「ロシアはGDPがソ連時代の数十分の一になり、軍事費は六○億ドル程度になってしまった」というのが、真っ赤な嘘であることがお判り頂けたと思う。ではロシアの隠された狙いは何か。米国ら西側に自分を味方だと信じ込ませ、かつ弱体化していると油断させ、驕慢にさせることで、敵の内側に入り込んでしまうことである。そして時期を見て反撃に転じ、征服していくことである。「トロイの木馬」戦略だ。

 現ロシアはソ連共産党の偽装国家である。ソ連共産党とKGBが姿を変えて、国家機関とメディアと企業と社会組織全体をテロルの恐怖で支配している。だから一九九二年の「価格革命」の「ハイパーインフレーション」の芝居も、何度かの「ルーブルレートの大暴落」の芝居も可能になる。国内におけるルーブルの購売力に大きな違いは生じていないのに、「数十分の一に大暴落した」ルーブルでドルや円に換算すれば、ロシアのGDPや軍事費は実際の数十分の一に見せることが出来るのである。

 そしてロシア政府が発表する様々なデータそのものが作為された数字である。我々はロシアのマスコミがそれを批判していないからといって、政府の発表が真実だと軽信してはならない。西側では不可能なことも、全体主義国家ロシアでは可能になる。つまりロシアにおける「自由な報道」と「自由な言論」も演技に過ぎないのである。ロシアは心底恐ろしい国である。

 

 四、新条約はロシアの絶対優位を創り出す

 

 新条約は、「前文」で「ロシアと米国は地球規模の新たな挑戦と脅威に対処するため、両国間の戦略的関係へ向け質的に新たな基盤を築くことが必要であると考え、相互安全保障、協力、信頼、公開性と予見可能性に基づいた真のパートナーシップをうち立てることを希求し」と謳っているように、米国がロシアを「友好国」ととらえる地平から、策定されたものである。「米露共同宣言」の方では、「われわれは新しい戦略的関係を構築しつつある。互いを敵とみなした時代は終わった。われわれはパートナーであり、安定と安全、経済的な統合の前進に向けて協力する」と述べられている。また新条約は前述の如く、「ロシアは経済的・軍事的に弱体化した」との米国のロシア評価を前提にして、策定されたものである。

 この新条約が今後の米露を規制する。新条約は第一次戦略兵器削減条約=START1(二○○一年末までに運搬手段を千六百基(機)に、戦略核弾頭数の上限を六千発に削減するというもの)の有効性を確認したが、未発効のSTART2は捨象した。新条約は二○一二年末の上限幅を二千二百から千七百発とし、それまでにミサイルから取りはずすことを確認するだけのものである。

 新条約はどのような状況を作り出すのか。

 (1)二○一二年末の時点での米国の弾頭数は、最大でも二千二百発と保管の二千四百発の計四千六百発である。しかし実際は、ロシアからの要求で二千五百発近くまで削減することになるであろう。なぜならば、ロシアが千五百発で、米国がその3倍を保有することは、両国の「戦略的関係」「相互安全保障」「信頼」「安定と安全」を脅かすことになる、とロシアは本条約と共同宣言に基づいて主張していくからである。

 (2)一方のロシアは、財政的に千五百発の維持が精一杯だとして、取りはずした弾頭は全て解体廃棄したと称して、全部を隠匿していくことになる。米国はロシアの説明を信じてしまうだろう。すると、これだけでロシアは六千発を保有することになり、米国は二千五百発位だから、2.4対1の優位となる。そればかりでなく、米国はSTART1を守って既に六千発まで削減してしまったが、ロシアは隠匿したり財政難を理由に解体せずに保管してある弾頭を山程持っている。驕慢になっている米国はSTART1の順守を検証することもないだろう。だからロシアと米国の戦略核弾頭数の格差はさらに拡大することになる。

 (3)米国では現在、核製造工場は閉鎖されてしまっている。二○一二年末にはその設備も技術も錆ついてしまう。急増産しようにも不可能である。しかし今もロシアでは、2ヶ所の核製造工場が稼働中である。ロシアは反撃に転ずる時、核弾頭を急増産することが出来るのである。従って戦略核弾頭数の格差は3倍、4倍と拡大していくことになる。

 (4)新条約はSTART2を捨象したので、ロシアは多弾頭(MIRV)ICBMと重ICBMをそのまま配備していくことになる。MIRVには最大10個の弾頭を装着できるから、弾頭数の優位を戦力化できるのである。

 (5)もちろんロシアは反撃に転ずる時には、START1を無視して運搬手段のICBM、SLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)、ALCM(長射程の空中発射巡航ミサイル)と戦略爆撃機も急増産することになる。ロシアはそのための能力を維持し続けていくが、「冷戦は勝利のうちに終結した」と油断し、驕慢になってしまっている米国の、ICBM、SLBM、ALCM生産能力は、十年後にははるかに縮小していることは間違いない。

 ソ連経済が停滞していた一九八○年代の後半に、ゴルバチョフは大軍拡を行なったが、八十九年の一年間にICBMを140基、SLBMを100基、短射程弾道ミサイルを700基、爆撃機を40機、戦闘機/戦闘爆撃機を625機、戦車を1700輛、歩兵戦闘車等を5700輛、野戦砲を1550門という如く、巨大な戦力を生産することが出来た。同年の米国の生産数はそれぞれ、9基、21基、0基、0機、470機、725輛、650輛、100門に過ぎない(米国防総省『ソ連の軍事力』一九九○年九月版。中川八洋教授『大侵略』二○七頁より)。

 ソ連のICBM生産量は八十六年が75基、八十七年125基、八十八年150基、八十九年140基、九○年125基である。戦車はそれぞれ3300輛、3500、3500、1700、1300である。戦闘機/戦闘爆撃機はそれぞれ650機、700、700、625、575であった(同教授『戦争の21世紀        蘇えるロシア帝国』一○七頁より)。

 ロシアはINF(中距離核戦力)全廃条約を無視してINFを密かに生産していく。査察期間は昨年で終了しているから、密かに生産しても油断している米国は気付かない。反撃に移るときには、もちろん公然と生産していく。一方の米国のINFであるパーシング2は、その技術はもはや無くなってしまっている。自由主義国は条約に拘束されるが、全体主義国ロシア(=ソ連)にとっては、条約とは戦争手段であり、相手の手足を縛るためのものである。

 ロシアは今だって、先に述べた水準に近い大軍拡を行う能力を有していることだろう。そしてロシアはこれから、米国を初め西側の資本、技術を入れて(利用して!)、エネルギー資源開発を行い、経済を強化していくのである。十年後のロシア経済は今よりもはるかに強くなっている。ロシアはその経済力を背景にして、大軍拡を展開していく考えなのである。米国は愚かにも、敵国経済を強化する旨の「米露共同宣言」や「新しいエネルギー対話」や「経済協力」の声明文書をロシアと結んだのである。

 新条約は米国のではなく、逆にロシアの戦略攻撃戦力の絶対的優位の状況を創り出すことになるのである。産経新聞が引用したロシアの著名な軍事専門家フェルゲンガウエルのあの発言も、ディスインフォメーション(嘘軍事情報)なのだ。

 

 五、ロシアは米露共同宣言でMDを獲得し、ローマ宣言でNATOを潰した

 

 ソ連共産党は何故、国家の偽装倒壊の演技までしたのか。それは米国・NATOが「ヨーロッパ戦域限定核戦争」を可能にしたからであり、それに加えて米国がSDIの開発をめざすと宣言したからである。彼らは超高等な演技によって、自らを封じ込め、さらに解体にさえ追い詰めることにもなりうるこの二つを、無くしてしまうことを狙ったのだ。ソ連にはSDI(今日のMD=ミサイル防御)を独自に開発するだけの先端技術力がなかったのである。

 一九九二年新生ロシアのエリツィン大統領は、ブッシュ大統領(父親)に対して「SDIの共同開発」を提案していた。プ−チンも二○○○年、二○○一年にはイラン、イラク、北朝鮮の長距離ミサイルに対する、「露欧米による共同ミサイル防御網の建設」を提案していた。これらは、米国のMDシステムの技術を獲得するためだ。

 そして今回の米露共同宣言によって、それが可能になっていき得るのである。共同宣言には「早期警戒システムのデータ交換のための共同センター設立をめざす。ミサイル防衛に関係した共同演習の拡大や、ミサイル防衛技術の開発のための共同研究の可能性についても、機密情報や知的所有権の保護の重要性を認識した上で検討する。NATO・ロシア理事会の枠組み内で欧州のミサイル防衛に関する実践的な協力の機会を探る」(五月二十五日付朝日新聞)と謳われている。ロシアは対米欧協力路線を続けて、MDシステム技術の獲得をめざしていく。

 今回の五月二十八日の「ローマ宣言」でNATOは事実上、最終的に解体してしまった。冷戦時代のソ連は、NATOを分断し解体することにエネルギーを注いだが、ゴルバチョフが「冷戦終結」をプロパガンダしてから、わずか十二年で潰してしまったのだ。謀略の恐ろしさである。ロシアはこれによって西側の「ヨーロッパ戦域限定核戦争戦略」も潰したのである。「東アジア戦域」も同様だ。

 ロシアがMDシステムを持てば、防御面で米国と対等になる。そうすれば、攻撃核戦力で絶対優位に立つロシアが、全体としても絶対優位を確保することになり、米国は逆抑止されることになってしまう。ロシアは全世界への侵略征服を開始する。従ってロシアの独裁者たちは、MDシステムを持った段階で、反撃に転じていくのである。

 ソ連=ロシアの謀略に敗北して、そこまで事態の進展を許してしまえば、西側自由主義諸国の存立の確保は不可能になってしまう。我々はその前に、一日も早くロシアの正体を見破らなくてはならない。

 

 六、米政府中枢にロシア(ソ連)のエージェントないし隠れ共産主義者がいる

 

 二十一世紀の自由主義陣営の最大の戦いは、ロシアの正体を暴き、攻勢的に封じ込め、そして解体していくことだ。国際テロリスト及び「テロ支援国家」(七ヶ国)との戦いが、最大の戦いなのではない。ロシアの脅威に比べれば、それらの脅威ははるかに小さい。「反テロ」を最大の課題にする時は、ロシアの脅威から人々の関心をそらせ、さらにロシアを「味方」だと思わせてしまう。米政府はロシア政府と共に、これを実行しているのである。

 様々なプロパガンダにもかかわらず、米議会には「自由を抑圧するロシアなどG8から追放せよ」との大きな声がある。ブッシュ大統領が首脳会談の直前に求めた、全体主義国との貿易を規制する「ジャクソン=バニク修正条項からロシアを除外すること」も、米上院は否決している。米政府はこういう大きな正しき世論を無視して、今回の新条約や共同宣言やローマ宣言に調印したのである。

 新条約等は、十年後もロシアは弱体化したままだ、を前提に策定されている。エリート集団たる米政府が、こんな非常識を支持するのは正気ではない。洗脳だけでなく、ロシア(ソ連)のエージェントまたは反米・親露の隠れ共産主義者が米政府の中枢にいて、彼らの奮闘によって調印されていった、と考えなければ理解出来ないことである。「[一九七二年]キッシンジャーが、ソ連が最重点的に狙っていた〃米国のABMつぶし〃に全面協力したのである。またソ連のICBM/SLBMの対米優位についてもソ連側に立ってそうなるようにまとめあげたのである。キッシンジャーが『ソ連のエージェント』でなかったと断定することは困難なことである」(中川教授『中国の核戦争計画』七十一頁)。そのとうりであり、彼の外交はソ連、中共ばかりを利した。彼の人脈はホワイトハウス、国務省、国防総省等に広がっている。権力中枢に敵の潜入を許したら戦いは勝てない。


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                二00二年七月十六日記