●対イラク戦争と日本

                   

 一、日本は対イラク戦争に参戦すべし

 

 ブッシュ大統領は一月三日、テキサス州のフォートフッド陸軍基地で四千人の兵士を前にして演説した。「対イラク戦争の準備はできている。あなたがたは征服のためではなく、イラク国民を解放するために戦うことになる」と。米国は二月には、フセイン独裁政権を打倒し親米の民主イラクを建設するための軍事行動を開始することになる。必ず米国はそうする。

 アーミテージ国務副長官が昨年十二月初めに来日した際に、日本政府は非公式に「米国が対イラク戦争を開始した場合には、日本政府は支持する」と伝えていたことが後日分かったが、こういうことは公式に声を大にしてアピールすべきである。アメリカ政府にとっては、自らの行動を支持してくれる同盟国や友好国が多いことが何よりも有難いからだ。

 もちろん日本は支持するだけでなく、英国のように同盟国の米国と緊密に連携して対イラク戦争に参戦していかなくてはならない。政府と国民がその意志を持って努力すれば簡単にできることである。

 従来の憲法九条解釈を前提にして、「日本はアメリカの対イラク戦争を支持するが、憲法の制約があり、日本にはやれることとやれないことがあるとはっきり伝えればよい」と言う論者がいるが、こんな甘ったれた考えは厳に排斥しなくてはならない。今の日本国家は国家としての体をなしていない世界で唯一の国だといってよい。そんな日本の特殊な論理は国際社会では通用しない。

 来たるべき対イラク戦争では、米英その他の国々が血を流して戦うことになる。今は米国と距離をとり批判もしている自由主義国家のフランスとドイツも、米英の軍事行動が開始されんとする頃には、バスに乗り遅れまいとして必ず参戦していくことになるのだ。それが国益を追求する国際政治の姿である。

 わが日本は、「対イラク戦争で日本は支持するのみで、軍事行動は何ひとつしなかった」と、同盟国アメリカやその他の国々から非難されるという湾岸戦争の二の舞を、絶対に繰り返してはならないのである。

 

 二、従来の反国家的な九条解釈を変更せよ

 

 日本政府と国民が、これを機会に日本は雄々しく生れ変わるのだとの強い意志を持てば、対イラク戦争への参戦は少しも難しいことではない。九条の解釈を変更すればよいのだ。二○○○年十月に出されたいわゆる「アーミテージ報告」でも、アメリカは日本に憲法九条の解釈を変更するか九条を改正するかして、集団的自衛権の行使を認めることを求めていた。

 九条の条文を、誤解される余地のないすっきりしたものに改正するのが一番良いことではあるが、そのためには国会議員の三分の二以上の賛成が必要となり、現段階では無理である。従って現在、解釈を変えることが唯一の方法なのである。従来の九条解釈は完全に誤ったものであり、誤った解釈を是正(変更)するのは当然なことである。閣議決定すればよいのだ。これによって解決するのである。

 憲法九条二項は自衛のための軍隊の保持を容認している。芦田均氏が「前項の目的を達するため」の語句を挿入して原案を修正した目的がこれである。そしてこのことはソ連すら認めていたことである。だが内閣法制局は、「九条二項は自衛のためであれ軍隊の保持を禁止している。自衛隊は軍隊ではなく実力組織だ」と否定してしまったのである。

 国家は軍隊を持つときに自衛権(個別的・集団的)行使を完全に行うことができるのである。国家が軍隊保持を禁止すれば、その国家は自衛権を「国家の緊急避難行為」のレベルでしか行使できなくなるのである。だから内閣法制局は、日本の自衛権行使(武力行使)の三要件として、(a)日本に対する急迫不正の侵害があること、(b)それを排除するために他の適当な手段がないこと、(c)必要最小限度の武力行使にとどまるべきこと、を挙げているのである。

 これによって現在の日本は、集団的自衛権の行使(武力行使)は(a)に反するから禁止されているのである。個別的自衛権の行使についても、(a)(b)(c)によって決定的に制約されてしまっている。内閣法制局が「専守防衛」と概念規定する内容に厳しく制約され、国を防衛できないものにされているのだ。

 国と国民を守る責務を憲法によって負わされている政府は、直ちに誤った反国家的解釈を是正する閣議決定を断行する義務がある。「九条二項は自衛のための軍隊の保持を容認している。自衛隊は軍隊である」と閣議決定し、前記した(a)(b)(c)と「専守防衛」概念を否定する閣議決定をするのである。これで日本の自衛権行使(個別的・集団的)は法的に米国や英国等と全く同等になる。

 軍隊保持の禁止とは、法的に本来の自衛権の行使が決定的に制約されることを意味する。私たちはこの点を認識する必要がある。九条二項の解釈を是正することが核心なのである。軍隊を持てば国際法によって自衛権行使は各国と同等になる。米国とも同等である。日本は自衛のために敵の基地等を先制攻撃することができるし、核兵器やICBMやIRBMそして長距離戦略爆撃機や攻撃型空母を保有することもできる。海外出兵も当然できるのである。集団的自衛権の行使も当り前である。もちろん、国連安保理の武力行使容認決議を受けて武力行使をすることができる。

 愛国者であれば、本来の九条を否定した従来の反国家的解釈を直ちに是正するのに、何のちゅうちょも無いはずである。国を守るのは国民の義務である。当然、内閣の義務である。不作為は憲法違反なのだ。内閣は政治生命を賭して直ちに九条解釈を是正(変更)しなくてはならない。国民はそれを迫らなくてはならない。

 十年一日のごとく非現実的な「九条改正」を唱えることは許されない。真に変える意志があれば、すぐにでも変えられるのだ。すなわち閣議で九条の解釈を変更(是正)すればよい。私益のためにそれをやらない政治家は万死に値する。政治家の資格がない。

 

 三、対イラク戦争参戦は日米同盟を強化する

 

 日本の周りは国民の自由を全否定する独裁国家の侵略国家ばかりである。アメリカと比肩する核超大国のロシア、核大国の中国、そして日本攻撃用の核弾頭・化学弾頭ミサイルノドンを実戦配備している北朝鮮である。私たちは、これら三国の日本侵略を抑止し、もし侵略が開始されたときには共に戦ってくれるアメリカ、との同盟関係なしには、国家の存立を守ることができないという絶対的な地政学的な真理を深く認識しておかなくてはならない。「真正な自由主義」を共通価値として結ばれる海洋国同盟である。
 
 北朝鮮は現在、周知のとうり瀬戸際外交を展開している。昨年十月初めに訪朝したケリー国務次官補に対して、「我々は日本、韓国を巻き込んでアメリカと戦争してもよい」と言い放っている。対イラク戦争が始まれば北朝鮮が更に様々な企てをしてくることは間違いないのだ。

 だから私たちは、日本の軍事力をソフトとハードの両面で飛躍的に強化していく最大限の努力を早急に始めていくとともに、日米同盟の強化にもこれまた最大限の努力を払っていかなくてはならないのである。そのためにも、日本は対イラク戦争に参戦しなくてはならない。日本が米国と共にイラクにおいて血を流して戦うことが、北朝鮮の攻撃から日本を、日米共同で血を流して守ることにつながっていくのである。

 もしも対イラク戦争において、日本が湾岸戦争の二の舞を演じることになれば、日本は米国から軽蔑され非難されることになろう。それは前記の如く、日本防衛における日本の国益を著しく損うことになるのである。

 日本は今日まで、世界の平和秩序を侵略者から守る仕事(軍事)をアメリカやその他の自由主義国家に任せきりできた。そして平和秩序がもたらす果実をちゃっかり享受してきた。小国ならばともかく、日本のような大国がこのように振舞うことは真に恥ずかしいことである。

 日本は今こそ、そういう誤った国家の在り方から訣別すべきである。経済大国に相応しい政治大国に脱皮していかなくてはならない。政治小国とは「無責任国家」ということだ。そしてなによりも政治大国に脱皮しなければ、北朝鮮や中国やロシアの日本侵略を抑止、防衛できないのである。

 前述した如く、日本は閣議で「正しい九条解釈」を決定し、そして「米国とイラクの間で戦端が開かれたら、日本は集団的自衛権(米国への攻撃は日本への攻撃と同じであるとする)を発動して自衛隊(軍隊)を出動させて参戦すること」を安全保障会議と閣議で決定して、国会の承認を得て、参戦していけばよいのだ。自衛隊の部隊や艦船は、あらかじめ訓練や調査目的で周辺地域へ派遣しておけばよいのである。

 また現在の国連による大量破壊兵器開発査察で「重大な違反」があれば、武力行使ができる。そして大量破壊兵器開発が明らかになれば、一九九一年四月の停戦条件は崩れて、多国籍軍による戦争の継続となる。日本も国際社会の一員として戦争に参加できることになる。

 テロ組織およびテロ支援国家=無法国家という国際社会の平和と法秩序を破壊する者は倒されなくてはならない。

 

 四、真の敵を見失ってはならない

 

 日本は対イラク戦争を米国と共に戦い、国際社会の一員としての責任を果した上で、同盟国のアメリカに同盟国の立場から重大な批判的な意見を伝えていく必要がある。

 アメリカはテロ組織やテロ支援国家との戦いを二十一世紀の戦いだと措定し、ロシアをこの反テロ戦争の共闘者のようにとらえてしまっている。明確な誤りである。イラクや北朝鮮やイラン、リビア、シリア、スーダン、キューバというテロ支援国家と(準)同盟を結んでいるのは他ならぬロシアである。また中国である。もちろんロシアと中国は準同盟関係である。

 他に敵を作りだせば、それがなければ自分に向かってくる、アメリカなどの自由主義国の注意をそらすことができる。さらに、それらの敵に対して共に戦うかのようなポーズを演じれば、自国を味方だと錯覚させていくことができる。アメリカ政府をはじめ西側の政府は、あたかも集団催眠にかかってしまったかのように、ロシア(=ソ連の偽装国家だ)の超高等な謀略に騙されてしまっているのである。ロシアはアメリカと比肩する核超大国である。

 テロ組織およびテロ支援国家との戦いにのめり込み、主敵を見失ってしまうのであっては、アメリカの国益および自由世界全体の国益が決定的に損なわれてしまうことになる。主敵を見定めた上で、テロ組織・テロ支援国家との戦いも行なわなくてはならないのである。冷戦構造は変わっていないのだ。ロシア、中国、北朝鮮、イラク等々の全体主義侵略国と自由主義国との敵対構造は全く不変である。

 

                 二00三年一月十日記

 追記 
 米英等のイラク国民解放戦争に反対する者は、テロ支援政権を擁護し、イラク国民をテロルの恐怖で支配する独裁政権を擁護する者たちである。フランス政府、ドイツ政府は深く恥じ入るべきだ。冷戦は終ったとソ連=ロシアに騙され、完全に取り込まれてしまっている。

 「人民の反戦運動」の背後には左翼勢力がいる。ロシアも大金を出して煽動しているに違いない。ベトナム反戦とは、全体主義国北ベトナムの南ベトナム侵略戦争を支持し、南ベトナムを防衛するアメリカに反対した反自由・反人道・反人権の左翼運動であった。歴史は繰り返す。

                                           ニ00三年三月十日記 

 


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