●最大限の新イラク創建協力が日本の国益

 

 はじめに。

 イラク情勢や朝鮮半島情勢が大きく動く重大な時に、長きにわたって文を発信できなかったことをお詫びしたい。私は実は、自分ではワープロを打つこともできず、妻の手助けに、全面的に頼っている存在である。この間、のっぴきならぬ事態が続いて起ってしまい、どうしても文を出すことを暫く中断しなければならなかったのである。

 

 一、最大限の対米協力が日本の国益

 

 この間、自衛隊のイラク派遣をめぐって、政府・与党と野党は対立してきた。マスコミでも論争が展開されてきた。イラク戦争は合法か違法か、自衛隊を派遣すべきか否か、アメリカ追随外交ではないのか等々が争点になってきた。

 左翼とは、自由世界の転覆を目標にしている政治勢力のことである。だから、日本共産党や日本社民党、あるいはその他の様々な左翼グループ(「平和」団体や「市民」グループを自称する者は九十九%は左翼である)、また日本のマスメディアの大半を占めている左翼マスメディアが唱える反対論は、論外である。彼らは、旧フセイン政権や金正日政権あるいは中国共産党政権等々の独裁政権を支持したり、シンパシーを抱く思想の持ち主であって、自由主義国日本を転覆さそうとしている「内なる侵略勢力」である。打倒すべき対象だ。

 日本民主党は左翼ではないが、イラク戦争に反対し、自衛隊派遣に反対し、政府をアメリカ追随外交だと非難しているような左翼的な政党であって、「責任ある野党」では断じてない。国家にとって、最も重要なことは安全保障である。日本の安全保障の根幹は、日米同盟の永久的な堅持であり、日米協力である。国際協調などではないし、ましてや民主党のような国連中心主義では、日本の安全は保障されえない。

 アメリカ中心の連合軍は今、イラクで必死にテロリストと戦い、イラク人による自由な民主主義国家建設の手助けを行っている。多くの犠牲者を出しながらも、崇高な任務を雄々しく遂行している。アメリカの同盟国として日本も、犠牲を顧みず最大限の協力をしなくてはならない。それが最高の国益となる。

 もしも万が一、連合国がこの戦争に破れ撤退することになれば、イラクは再びテロリストが独裁支配する国に戻り、無数のイラク国民が虐殺されることになる。国連などにその事態を鎮静化する力はひとカケラもない。アメリカ抜きの国連など無である。というより、米国抜きの国連は、ロシアや中国等々といった独裁国家が多数の意思で、その野望を追求する機関と化す。国際社会には独裁国家が山程あり、民主主義は成立しない。

 そうなった場合、テロリストと無法国家は中東を支配するようになり、さらに彼らは世界中でテロ戦争を強化していくことになる。だから私たちはイラクを主戦場として戦われている、この新たな戦争に絶対に勝利し、新イラクを創建しなくてはならないのだ。日本は原油の八十%以上を中東に依存している。もし中東が敵の支配に落ちれば、日本は衰退することになる。このように、テロとの戦争と新イラク創建は日本の安全保障に直結している。日本も当事者として、最大限の協力をするのは当然すぎることなのである。

 さらに日本は、核武装した北朝鮮と対決しなくてはならない。日本は国民を何十人も、あるいは百人以上も拉致されたままだ。奪還しなくてはならないのだ。その時に、同盟国アメリカの協力は不可欠である。アメリカと共同戦線を組んで戦っていかなくてはならない。

 それだけじゃない。日本の周りには、大陸国家の核超大国で独裁国家・侵略国家のロシア、また大陸国家の核大国でやはり独裁国家・侵略国家の中国がいる。だから日本は、同じ海洋国家としてのアメリカと同盟することによってしか、国家の安全を保障することはできないのである。これは不変の地政学的な真理である。海洋国家のイギリスが、アメリカとの同盟を国是としたのも同じ理由だ。

 まとめれば、今回の「イラク事態」は日本の安全保障問題そのものであること、また日本は地政学的に北朝鮮、ロシア、中国と対峙しており、同盟国アメリカの協力を得なければ国の安全や国益を守り得ない存在である。だから今、イラクでテロリストのゲリラ攻撃に遭っている米軍主導の連合軍に、日本が自らの犠牲を払ってでも最大限の協力をするのは自明なことであると同時に、義務なのである。日本は英国を見習わなくてはならない。

 日本とアメリカは共に自由主義国であり、「真正な自由主義」を共通の価値とする同盟国である。だから「親米」や「親米英」は日本の自然な国是である。今こそ日本は、自国の安全保障のために、国益のために、勇気を出して起ち上がらなくてはならない。後述するが、「イラク復興支援特措法」等を早急に抜本改正し、自衛隊を派兵して、自らの責務を立派に果し、アメリカに対して信頼に足りる同盟国であることを示していかなくてはならない。

 

 二、イラク戦争は合法である

 

 日本民主党は、米英ら連合国のイラク戦争を国際法違反だと非難してきたが、イラク戦争は完全に合法である。米英らは自衛権だけでなく、一九九○年十一月の国連安保理決議六七八号その他の決議をも根拠に開戦したのだ。決議六七八号とは、クウェートに侵攻した侵略国イラクを降伏させるための軍事制裁決議である。つまりフセイン政権打倒を命じたものであった。米国らはそれを実行に移したわけである。

 一九九一年四月の決議六八七号(停戦決議)は、イラクに大量破壊兵器の完全廃棄と査察を義務づけたものだが、それはイラクが国連査察団の前で廃棄を実証する義務を負ったことを意味する。もちろん、フセインがそれをしなかったことは周知の事実だ。よって、停戦は無効と化し、フセイン政権打倒の戦争が継続されたのである。完璧に国際法に基づいていた。

 国際法の解釈も時代によって変わる。従来の自衛の「先制攻撃」概念の拡大的解釈もしかりだ。イラク戦争の事実によって、自衛の「先制攻撃」概念も変化したのである。

 日本政府と与党が、いち早くイラク戦争を支持したことは正しかった。「責任ある野党」であれば、やはり日本の国益の観点から支持する。社民党などと一緒になって反対した民主党は、政権を任せられるような「責任ある野党」では全くない。その資格がない。党内に多くの左翼を抱え、また、弱められた内容ではあるが、左翼思想のシッポを多くひきずっている人が多くいるのである。

 マスコミでは「二大政党制」などと言われているが、アメリカの共和党と民主党のように、国家の安全保障政策、善悪の価値観で、広い意味での共通の基盤に立っている場合に、二大政党制は成立するのであって、日本の民主党をもって二大政党制などと言うのは、ナンセンスもいいところだ。民主党に比べたらはるかにマシな自由民主党が、長期に政権を担う方が、日本の国益にとって良いことは明白である。

 民主党内にいる少数派の保守派は、さっさと離党して、与党連合を組むべきだ。自らの思想の核心部分を裏切って、どうするというのか。国益の立場で身を処していくべきだ。

 

 三、悪法のイラク特措法を抜本改正せよ

 

 問題なのは、保守派の中から「イラク特措法等を抜本改正すべし」という主張がほとんど全く出てこなかったことである。もちろん、自民党の中からもなかった。識者も政府も与党も、ただただ自衛隊を派遣すると言うだけであった。十一月二十九日に、イラク復興支援のために尽力されていた二名の日本の外交官がテロリストに殺害された後でさえ、変っていない。思想的に極めて深刻な状況なのである。

 イラク特措法は悪法である。「非戦闘地域」に自衛隊を派遣するというものだが、イラクでテロ襲撃が発生していないのであればともかく、成立後間もなく、そうではなくなったことが明瞭となった。その時点で、同法は更に欠陥法になったのであり、直ちに抜本的に改正せねばならなかった。だが、小泉首相をはじめ自民党は、国益ではなく、政局(選挙)のことしか考えられず、「新しい地平」に挑戦することを逃げた。というよりも、ほとんどの人は新しい地平を考えること自体ができなかっただろう。

 もし自衛隊(陸自)がテロリストに襲撃されたら、どうなるのか。そこは「非戦闘地域」ではなくなる。最も安全な場所としてサマワを選んだ以上、陸上自衛隊はイラクから撤退するしかなくなる。法律が命じていることだ。二名の日本の外交官は、綿密な計画に基づいて襲撃されたことは明らかである。大使館付近で見張られていたわけである。テロリストは日本もターゲットにしているのだ。サマワに入る自衛隊が攻撃されるのはもはや必定である。テロリストたちが、日本の法律の欠陥を把握することも十分考えられるし、通報する日本人の左翼もいるはずだ。

 テロリストにとって、脆弱な日本は絶好のターゲットになる。少しばかり攻撃すれば撤退に追い込むことができ、敵を分断でき、大きな戦果が得られるからである。

 襲撃を受けたら、自衛隊は法律に基づいて撤退しなくてはならない。他国の軍隊は犠牲を甘受して、崇高な任務を遂行しているのに、日本の自衛隊だけが撤退することになる。他国はこれを戦場からの逃亡だと見るにちがいない。日本の信頼は地に落ちることになる。日本の名誉は霧散する。日本の国益は深刻に損なわれることになる。日本政府と政治家は、そのような事態を招来させようとしているのである。

 では、初めからイラク特措法に基づいて、「非戦闘地域が存在しないと認められる」として、派遣しないのがよいのか。その選択肢はあり得ない。日本は米国をはじめ連合国に派遣すると公約しているからだ。もし派遣しなければ、国と国との約束を破って危険な任務から事前に逃亡した臆病で卑怯な国だ、と断じられることになってしまう。その国益に与える大ダメージは前記の事態の比ではない。日本は自衛隊を送り出すしかないのである。

 では、どうしたらよいのか。首相のイニシアチブで、憲法九条の誤った解釈を是正する閣議決定を断行して、特措法等を早急に抜本的に改正すればよいのである。強い意思さえあれば、九条解釈の変更(是正)は一日で可能だ。特措法等の抜本改正も超短期で実現できる。民主主義は、過半数を取った勢力が決定するのであり、一人でも多ければ、どんな対決法案でも成立さすことができる。反対派への妥協は不要だ。

 

 四、安全保障政策の構造改革を断行せよ

 

 特措法が、対応措置から武力行使を排除し、「武力行使と一体化」しない「非戦闘地域」で実施するとしているのも、また武器使用基準に警職法を準用して、部隊防御(安全)をほとんど困難にしているのも、全ては内閣が「憲法九条は軍隊の保有を禁じている」と、左翼的・反国家的に本来の九条を歪曲して解釈しているためである。軍を保有できないとき、日本は法的に必要最小限度の範囲でしか武力行使ができないことになる。だから海外での武力行使も、集団的自衛権行使もできないとなるわけである。

 だが、芦田修正を経て憲法九条が成立したとき、ソ連を含め連合国の全てが、「日本は我々と同じく、自衛や国際平和維持のための軍を保有できることになった」と認識したのだ。これが本来の九条の意味である。日本は米国と対等なのだ。歴代内閣は故意に歪曲した解釈を続けてきたのである。まさしく憲法九条違反だ。

 小泉内閣が、自衛隊を軍と認め、他の従来の解釈も是正すれば、一日で解決する。識者、保守マスコミはこのことを大々的に社会にアピールして、小泉首相に迫るべきだ。首相、政治家、国民は本来の九条を守る義務がある。私たちは、法律的に米英ら連合軍と同じ行動ができるように、特措法等を抜本改正(恒久法化)することを要求していこう。国民は起ち上がらなくてはならない。その気さえあれば一、二週間で立法できる。政治家も国民も、「イラク事態」や朝鮮半島情勢を奇貨として、誤った安全保障政策の構造改革を断行していくのだ、という戦略的立場に立つべきなのである。

                二00三年十二月四日記


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