●イラク特措法にも違反する基本計画と実施要項

 

 一、後退させられた米軍等への後方支援活動

 

 イラク特措法は、自衛や国際平和維持のための軍隊の保有を容認する本来の憲法九条に違反する悪法であり、欠陥法であるが、「自衛隊派遣の基本計画」とそれに基づく「実施要項」は、特措法を更に大幅に改悪させたものであり、違法である。

 特措法には「自衛隊は、人道復興支援活動および安全確保支援活動を行うこととする」と述べられている。前者が主で後者が従ではない。というより、イラクで治安維持活動を担う米軍等への「後方支援活動」である後者の活動こそが主眼であった。ところが基本計画では、「人道復興支援活動を中心とした対応措置を実施することとする」とされてしまったのである。後者の活動は、前者の活動に「支障を及ぼさない範囲で」「行うことができる」とされてしまった。特措法では、安全確保支援活動を行う(任務)となっていたのに、「行うことができる」とされて、事情によっては行えなくてもよいということになったのだ。

 特措法では、米軍などの武器、弾薬の輸送はできる。だが、小泉首相は基本計画決定後の記者会見で、「武器、弾薬の輸送はしない」と否定してしまったのである。米国が最も求めていた活動である。実施要項には武器、弾薬の輸送を行わないことが明記された。首相はまた記者会見で、「自衛隊は人道復興支援のために活動する」と述べて、安全確保支援活動を欠落させた。

 これらは、特措法の実質的は改悪であり、違法行為である。国益を酷く害するものだ。

 

 二、「安全確保」で撤収するのか?!

 

 特措法では、「対応措置の実施に当たっては、自衛隊の部隊等の安全の確保に配慮しなければならない」(九条)となっていた。単なる「配慮」にとどめられていた。ところが基本計画では「当該活動の実施に当たっては、自衛隊の部隊等の安全が確保されなければならない」と変えられてしまったのである。しかも、この文言は繰り返し使用されている。

 特措法であれば、たとえ襲撃されて自衛隊に犠牲者が出た場合であっても、首相、防衛庁長官は活動を継続さすことが可能だ。しかし基本計画によれば、そうした事態は、自衛隊の安全が確保されなくなった場合であるから、当該活動を中断させねばならないし、実施区域を変更しなければならないのである。これは実質的にイラクから撤収するということだ。

 防衛庁は一貫して、「イラクで起っていることはテロリストによるテロ行為であって、国家やそれに準ずる組織が行う戦闘行為ではないから、イラク全土が非戦闘地域である」と主張してきた。これでいけば、自衛隊がテロリストに襲撃されて犠牲者が出ても、そこが戦闘地域に転化するのではない。従って、自衛隊はその後も安全の確保に配慮しながら活動を続けていくことが可能であった。

 だが、今回の基本計画と実施要項によって、「安全の確保」が活動実施の要件に加えられてしまったのである。だから、テロリストの攻撃により自衛隊に一定の被害が出れば、自衛隊は活動の中断、実施区域の変更、撤収に追い込まれることになる。しかし特措法では、「安全の確保」は「配慮」すればよく、活動の「要件」ではなかった。すなわち、基本計画等は法律の大改悪なのである。だから違法・無効だ。

 軍は国家・国益のために生命をも捧げる組織である。被害者が出たら軍を撤収する、では軍の否定であり、日本は世界の笑い者になり、国家の信用はなくなる。違法で無効の基本計画等は無視あるのみだ。我々国民は起ち上がり、責務を果さない政治を許さず、批判していこう。

              二00三年十二月二十二日記


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