●日本を名誉ある国にするために
         −北朝鮮問題−

 

 一、北朝鮮問題はなによりも日本の課題

 

 まず最初に確認しておかなくてはならないことは、独裁侵略国家北朝鮮による拉致テロは当然のことであるが、弾道ミサイル製造も核兵器製造も化学・生物兵器製造も、なによりも日本の課題であるということである。ノドンミサイルもテポドン1型ミサイルも、日本攻撃専用(在日米軍基地を含む)であり、米国本土はもちろんのこと、韓国も攻撃できない。ノドンミサイルは種々の操作によっても、飛距離を75%以下の九百km以下にすることは困難であるからだ。北朝鮮は、米国攻撃専用のテポドン2型ミサイルの開発を急いでいるが、未だ開発されてはいない。日本の自衛権の問題である。

 だから、わが日本政府こそがイニシアチブをとって、包括的解決のための共同行動を同盟国米国に提起していかなくてはならない。包括的解決とは、金正日独裁体制の倒壊である。

 仮に、米国民が何十人も北朝鮮に拉致されたとすれば、米国政府はどう対処したであろうか。問うのも愚かな質問だ。直ちに実力で奪還する。法が米国政府に「自国民の保護」を義務づけているからだ。万が一、米国政府がこの義務を果さないとすれば、法の支配に違反する「政治的犯罪」を犯したことになり、米国民がその政権を決して許さないことは明白だ。このように、米国では法の支配が確立している。

 ところがわが日本においては、歴代政権は拉致の事実を長年にわたって隠蔽してきたのであった。いわば、拉致テロとの「共犯関係」にあった。野党は北朝鮮と友好関係にあった。日本では、政府(立法・行政・司法府の意)にも国民にも法の支配の思想が欠如している。

 もし仮に、北朝鮮が米国のすぐ側のカリブ海に位置しているとすれば、米国政府はノドンミサイルやテポドン1型ミサイルの開発、核開発、化学・生物兵器開発を許したであろうか。国際法に基づいて、自衛のための先制攻撃で破壊して、自国の平和と安全を守ったであろうことは容易に想像できる。かつて、ソ連がキューバに中距離核ミサイルを配備しようとしたとき、米国は自衛のために、核戦争をも視野に入れつつ、断固とした海上封鎖を実施して、ソ連に配備を断念させたのであった。イスラエルは一九八一年六月、自衛のためにイラクの原子炉を空爆で破壊した。

 二月にワシントンで行なわれた日米外相会談で、町村外相の「いつまでも北朝鮮の不誠実な状態が続くなら、拉致問題を解決するために経済制裁を行なわざるを得ない。米国の支持をお願いしたい」との発言に、ライス国務長官は「日本を絶対的に支持する」と応じていた。

 確かに米国政府は、核、ミサイル、拉致、化学・生物兵器そして北朝鮮国民の人権抑圧といった問題を解決するために、近い将来、金正日の圧政国家を解体する考えである。それはブッシュ大統領の施政方針演説等を読めば明らかだ。しかしながら、今直ちにそれをする考えではないと判断できる。米国は目下、新生イラクの民主化支援、中東の民主化推進という大きな政治課題に取組んでいるからである。

 だからこそ、主権を侵害され、国民を何十人も拉致され(実際は百人を下らないとみられている)、北の核・化学ミサイルで直接脅威を受けている日本こそが、イニシアチブを発揮して、米国政府に具体的行動を提起し、共同で対処していくようにしなくてはならないのである。北朝鮮問題は第一に日本の問題なのだ。

 

 二、日朝平壌宣言は拉致同胞と国を売るもの

 

 金正日が横田めぐみさんの偽造遺骨を提出したこと等によって、今では日本国民の圧倒的多数が対北朝鮮経済制裁の実施を求めている。与党も民主党も求めている。そうであるにもかかわらず、総理大臣の小泉氏は経済制裁に慎重である。はっきり言えば、「対話路線」が崩壊し、日朝平壌宣言(二00二年九月)に基づいて国交を樹立して、歴史に名を残すことが出来なくなるから、やりたくないということである。法を否定した総理大臣職の私物化だ。

 日本の政治的な最高責任者である総理大臣は、日本の名誉を守るために、拉致された同胞とその家族全員を救出するために、日本を狙う核・化学ミサイルの脅威を排除するために、さらには金正日に奴隷的に支配されている二千万の北朝鮮国民を解放するために、いかなる戦略・戦術で戦っていったらいいかを先頭に立って考え、国家機関に命令していかなくてはならない。また国民を導いていかねばならない。法に基づいた政治(外交)とは、こういうことだ。

 しかし小泉氏の頭には、以上のような法に支配される政治、国益を守る政治は無い。小泉氏は反国益の私益から、拉致問題は適当なところで「解決」したことにして、総理任期中に「国交正常化」を実現して歴史に名を残したいと望んでいるのである。

 日朝平壌宣言は、一から十まで金正日の謀略に乗せられ、また乗ったもので、国と拉致被害者を独裁者に売り渡す内容である。金正日に「五人生存、八人死亡、二人入国せず」と告げられたのにもかかわらず、右宣言に調印したのであるから、小泉氏が拉致問題を切り捨てて「国交正常化」を狙っていたことは明瞭だ。金正日が一九九四年の米朝合意等に違反して密かに核兵器製造を続けていたことは周知の事実であったが、氏は「双方は、朝鮮半島の核問題の包括的な解決のため、関連するすべての国際的合意を順守することを確認した」とある右宣言に調印したのである。

 横田めぐみさんたちは生存している。だが金正日は死亡したと嘘をつき、遺骨も偽造した。これによって右宣言は無効と化した。死文化した。また北朝鮮は二00三年一月NPTから脱退し、その後何度も核兵器保有を宣言したから、平壌宣言は死文化している。小泉氏が今になっても同宣言に基づいて交渉していくとの立場をとり続け、それが許されていることに、日本の深刻な問題性が顕現している。

 二00四年五月、拉致被害者の家族五人が帰国した後、小泉氏は朝鮮総連の大会に、自民党総裁としてはじめてメッセージを送った。朝鮮総連こそは破防法によって直ちに解体しなければならない組織なのにである。この行動こそ、日朝平壌宣言の精神の具体化なのだ。もしも、小泉路線に従って国交回復が実現されるとすれば、実数は百人を下らない拉致被害者はどうなるのであろうか。全員殺害されてしまうのだ。拉致の証拠を残さないためである。そして金正日は、同宣言に基づいて日本から莫大な資金を獲得して、それでもって日本や米国攻撃用の核兵器、ミサイルの大増産に突き進んでいく。

 日朝平壌宣言と客観的には金正日と「共犯関係」にある小泉氏の路線が、拉致被害者と日本国家を独裁者に売り渡すものであることは明らかであろう。

 

 三、法は政府の上位にある−法の支配の欠如

 

 私たち日本国民は、金正日の北朝鮮との国交回復を絶対許してはならない。私には、小泉氏が文明国の原理である法の支配を踏みにじって、政府を私物化していること、「政治的犯罪」を犯していることは、明白である。彼は日本国家と日本国民の名誉を著しく汚している。直ちに総理大臣職を辞職させなくてはならない。安倍晋三氏(自由民主党幹事長代理)のように、人格的にも思想的にも優れた政治家は、自民党には少なからずいるのである。日朝平壌宣言は早急に破棄しなくてはならない。金正日独裁政権との戦いは、自らの陣容を整えるところから始まっていく。

 拉致被害者家族会、支援する会、特定失踪者問題調査会、拉致議員連等は、厳しく小泉総理を批判してきた。しかしながら、まだまだこの主張は十分には大きな声になっていない。その理由のひとつには、思想性の問題がある。もうひとつは、保守マスメディア(新聞、テレビ)が正面から総理批判をすることを控えているためである。両者は深く結びついている。

 立派な文明国家の政治は、法に基づいてなされる。文明国家の根本原理である法の支配である。日本で言われてる「法治主義」は、法の支配とは別の概念であり、法の支配を否定する場合も多い。「法治主義」で言う法とは、人間が制定する法律のことであり、法治主義とは法律に基づく行政を言う。その法律が誤ったものであっても、それに基づく行政を合法とする考え方である。その典型は、ナチス・ドイツの法治主義である。また「法独裁」を掲げるプーチンのロシア(全体主義国)もこれである。もちろん、民主主義国家の日本の法治主義はそれらとは明確に異なるものである。

 「法の支配」で言う法とは、古くから伝承されてきた永遠の真理であり、人間が制定するものではなく発見するものである。この法(コモン・ロー)を発見して明文化したものが憲法となる。だから憲法は制定法ではあるが、準・法である。

 法の支配とは、法に反する制定法(法律)は作ってはならない、法に反する法律は無効である、とする思想である。憲法の条文でも、法に反するものは無効である。例えば、前文および一条にある「国民主権」は法に反している。憲法九条の解釈、すなわち自衛のためであれ軍隊の保有は出来ないというものは、法に反しており、無効である。本来の九条は、ちゃんと自衛のための軍隊の保有を認めているし、自衛のための軍事力の行使を認めている。日本の自衛権は、米国と同等である。

 法は天皇、裁判所、立法府、行政府、国民の上位にあって、全てを支配する。これが法の支配である。無制限の絶対的な権力である「主権」は、文明国家内においては存在してはならないし、存在しない。主権は、独裁国家、全体主義国家にのみ存在するものである。だが敢えて言えば、文明国家においては法こそが主権者なのである。法の支配だ。

 さて、法は政府と国民に国防の義務を課し、またその権利を与えている。自衛権だ。また法は、政府に「邦人保護」の義務と権利を与えている。そしてこれらは、本来の憲法九条や憲法九八条二項(国際法、国際慣習の順守)でも謳われている。拉致は侵略行為である。日本は自衛のための武力行使をしてでも同胞を奪還しなくてはならないのである。国際法は、邦人保護(救出)のための武力行使を認めている。

 日朝平壌宣言に依拠して大部分の拉致被害者を見捨てて国交回復をめざす小泉外交、経済制裁の断行を回避せんとする同氏の外交が、法に違反していることは明白に過ぎよう。憲法九八条一項は、憲法に反する行為は効力を有しないと謳っている。右宣言は無効なのである。小泉外交とは、同胞の命と国家と国民の名誉と安全保障を、独裁者に売る犯罪行為なのだ。

 こんなに明瞭なことなのに、保守マスメディアや保守言論人は、小泉氏を正面から厳しく批判することをしない。保守言論人で断固たる批判をしている人はあくまでもごく少数派に過ぎない。これは、日本では法の支配の思想が欠如しているからである。「法の支配」という言葉自体が語られることがほとんどない。ここに、日本国家と国民の最大の弱点がある。

 

 四、法の支配に反する政治を厳しく批判する

 

 法の支配が貫かれる立派な文明国家においては、政治家や官僚とは、法に従って、日本国家の独立と安全を守り、法秩序と道徳秩序を守って治安を維持し、国民の美徳ある自由と権利を擁護し、国民の福祉を向上さすために、自己犠牲的に献身する選ばれた人々のことを言う。国民を支配する権力者なのではない。権力者は、独裁国家、全体主義国家のものだ。

 しかし、法の支配の思想が欠如すれば、国家機関や政治家が、自らの権力を恣意的に行使するようになっていくのは容易に理解されるであろう。私益、党益、省庁益に基づく政治に堕してゆく。政府が私物化されていく。小泉氏の対北朝鮮外交もこれである。

 そして、保守ジャーナリズム・言論人に法の支配の思想が欠落していれば、国の最高責任者である内閣総理大臣というだけで、その権威の前に正面からの批判は手控えなくてはならないという、倒錯した考えになってしまう。これは保守主義の自殺である。またそうなるのは、政府や要人を辛辣に批判すれば、法の支配の思想の無い彼らから圧力がかかり、言論界における自らの発言の機会が危うくなる虞れが現実にあるからでもある。

 法の支配の思想が無いとき、一般国民の意識は「お上意識」になる。積極的な政治参加と誤った政治への批判を放棄することになる。

 法の支配という秩序が確固として存在することによって、国民一人一人の自由も保障される。名誉ある自由主義国家(社会)たり得るのである。従って、法の支配の思想が欠如するということは、自由主義国家の生命に係る最も重要な問題なのである。保守主義=真正な自由主義とは、法の支配と自由の価値を死守して、自由主義国家日本を永遠に保守していく政治的立場であろう。だから、法の支配の思想を支持しないことは、保守主義の自己否定である。

 私たちは、法の支配を厳守して、法に反する政治(立法や司法を含む)を行なう者を徹底的に批判して、改革していかなくてはならないのである。それが、日本国家と日本民族を名誉ある国家、国民に高めていく途である。

 この国には、自分のことを権力者だと考えて威張り、その地位と権力を利用して、国際的には日本の不名誉を晒すことになるのに、自分たちに好都合の共同宣言や法律(もちろん法に反するもの)を策定して、私的利益(名声や地位保全や金)を追求して恥ない政治家や官僚が、沢山いるのである。法律にすら違反する役所の裏金作りも、政府機関の私物化の現われだ。こういう「不祥事」が、左翼をはびこらせることになっていく。私はひとりの日本国民として本当に恥ずかしいし、深い憤りを感じる。

 私たちはまた、日本の保守マスメディア・言論人に対しても原則的な批判を提起して、改革していかなくてはならない。国を愛する、国に忠誠を尽すということは、政府(国家機関)を無批判的に支持し忠誠を尽すことではないのは自明なのに、法の支配の思想が欠如していると、この誤りに陥ることになっていく。それは、保守言論機関・言論人の自殺である。

 私たちは国家を愛し、国家に忠誠を尽すからこそ、法の支配の原則から政府を厳しくチェックし、誤りは批判し正していかなくてはならないのである。国民を代表して政府をチェックするのが、保守言論機関や言論人の社会的使命である。だから、常に政府と緊張関係を保っていなくてはならない。政府との協調路線、擁護路線は社会的使命の放棄である。例えば、役所の裏金問題(警察や検察)も、保守言論こそが積極的に究明し批判し改革していくべきことなのに、熱心ではない。左翼や右翼との対決だけが、保守言論の役割ではない。法の支配の死守こそが保守言論の根幹であるから、法の支配に反する政府に対しても厳しく対決しなくてはならないのである。

 もし保守マスメディアがしっかりしていて、政府を毅然と批判できるのであれば、拉致問題は、もっとはるかに早く社会問題化して、政府も重い腰を上げていたことであろう。

 これが米国であれば、共和党系マスメディアも民主党系マスメディアも、こぞって「国民の保護」を政府に要求して大キャンペーンを続けたことは間違いない。国民も街頭に出て声を上げる。否、そもそも政府が率先して、マスコミや国民に訴えることになるのだ。こうしてみれば、日本では保守言論も政府も国民も深刻な問題を抱えていることが明瞭である。その原因は、法の支配の思想が国全体に欠如していることである。

 私たちは、拉致問題、ミサイル問題、核・化学・生物兵器問題、北朝鮮二千万国民の人権迫害問題の包括的解決=金正日独裁体制打倒のための戦いを、勝利的に進めていく中で、日本国家と日本民族を、法の支配が貫かれる名誉ある国家、民族に高めていくのである。

 

 五、誤った六カ国協議は早急に廃止すべし

 

 来日したライス国務長官は三月十九日、六カ国協議を「最良の枠組み」と強調していた。しかし、二00三年夏から始まった同協議は今日に至るまで何の成果もあげていない。この二月には、金正日は同協議からの離脱を表明して、米国に譲歩を求める姿勢を見せている。六カ国協議は誤りであり、早急に廃止することが日本、米国の国益に適っている。

 六カ国協議の開催を言い出したのは、中国やロシアであり、それに韓国と日本が乗ったのであった。中国、ロシア、韓国という親金正日国家からすれば、米北の二国間交渉より、六カ国協議の方が米国を牽制できるからはるかに好ましいからである。この動きを受けて、米国務省内の親中国派や「大物」の元国務長官のキッシンジャーたちが、言を巧みに導入していったのが六カ国協議であろう。キッシンジャーは親中反日で有名だが、私は彼は隠れ共産主義者ではないかと考えている。台湾を追い出し、共産中国を国連安保理常任理事国にしたのも彼だ。

 日本では、中国専門家を含めて、中国は自国の脅威になる北朝鮮の核保有を絶対容認しない筈だ、だから北朝鮮に政治的・経済的な圧力をかけて核の廃棄を迫っていくだろう、という考え方がかなり蔓延している。中国は、中朝国境へ中国人民解放軍を展開させて、北朝鮮に軍事的圧力をかけつつある、との見方も流布されている。いずれも全くの誤りである。

 中国は、北朝鮮の重油の八0パーセント、食糧の六0パーセントを供給している。中国が北朝鮮を締め上げることは簡単なのだ。だが、中国がそんなことをするはずもない。重油と食糧を支援し続けて金正日体制を支えてきたのである。これによって、金正日は核兵器開発・製造、ミサイル開発・製造、北朝鮮国民の人権迫害を継続できているのである。中国は、金正日の核開発製造を知りながら、米日に対して「北朝鮮が核開発を進めている証拠はない」などと嘘情報を流してきた。

 金正日独裁体制を解体しようとしているのは、自由主義国家の米国であり、独裁国家の中国やロシアではない。中露北は同盟国である。金正日には、中国やロシアと敵対したり、ましてや戦争をする理由は皆無だ。だから中国にとって、北朝鮮が核兵器を保有して強国になることは、対米日戦略上、プラスになってもマイナスになることはない。ロシアの対米日戦略からも然りだ。両国に、北朝鮮の核放棄を迫ることを期待するのはナンセンスである。中国、ロシアは、金正日独裁体制を支援する側である。親金正日の左翼が政権を握っている韓国政府も、金正日独裁体制を支援する側である。

 六カ国協議は中国が、議長国として、国際社会の中で積極的な役割を果しているという偽イメージを宣伝するための舞台である。同時に、裏で金正日体制を存続さすために暗躍している自国の活動を、隠蔽するための装置でもある。さらには、「北朝鮮の核問題」で努力している演技をして、米国に恩を売り、台湾問題で米国に譲歩を迫るための装置である。この成果は、残念ながら現れてきている。

 米国政府は、中国や国内の親中派に騙されているのである。ライス国務長官は三月二十日北京で、胡錦濤や温家宝と会談し、六カ国協議プロセスで中国が果してきた役割を高く評価したが、胡らは腹の中でニンマリしたことであろう。金正日が二月十日、六カ国協議出席の無期限中断を宣言し、中国要人との会談後の二月二十一日には、復帰に前向きな姿勢を示したことも、中国の積極的役割を嘘宣伝するための、両国の準備された演出なのだ。独裁国家の外交の基本は謀略である。

 金正日は交渉しているふりをしているだけである。核を廃棄する意思は全くない。交渉のふりをして時間を稼ぎ、核兵器とミサイルの生産に励んでいる。中国も了解していることである。六カ国協議の枠組みで、北朝鮮の核問題が解決することはない。それに、六カ国協議は拉致問題も、日本攻撃用の弾道ミサイル問題も、化学・生物兵器問題も対象にしていない。中国、北朝鮮、ロシア、左翼の韓国政府を利するだけの六カ国協議は、直ちに廃止するのが、日米の国益である。米国務省内の親中派は一掃されなくてはならない。キッシンジャーもである。

 

 六、対北経済制裁と自衛の先制核攻撃

 

 私たちは、いかなる戦略戦術で戦っていけば、拉致、ミサイル、核・化学・生物兵器、北朝鮮国民の迫害を包括解決できるかを、真剣に考えていかなくてはならない。国土を侵略され、同胞を拉致され、核・化学ミサイルの脅威を受けている日本こそがイニシアチブを発揮して戦っていくべきものだが、同盟国米国との緊密な連携、共同行動は大前提である。

 まず、私の考えの概略を述べよう。日本は経済制裁を発動する。朝鮮総連を破防法で直ちに解散させる。そして金正日に拉致被害者全員の即時解放、ノドンミサイル全てとその生産工場の即時破壊、核・化学・生物兵器の全ての即時廃棄を要求する。日米共同でこの問題を国連安保理に付託し、経済制裁の実施を求める。また軍事制裁の実施を求める。右制裁に反対する中国とロシアの正体を、国際社会に赤裸々に暴露していく。中国が裏で金正日政権を支援するのをしずらくする。中国、ロシアが拒否権を発動したら、日米は、自衛権を発動して金正日独裁政権に対して先制核攻撃する。

 韓国には保守勢力も大きな勢力として存在する。従って、日米は韓国の保守勢力と強力に連携して行動し、韓国の左翼政権に圧力をかけて、共同行動をとらせていくようにするのである。

 もう少し詳しく述べていこう。

 (1)全面的経済制裁。日本は特定船舶入港禁止法により、全北朝鮮船舶の入港を禁止し、北朝鮮との貿易を全面禁止する。それは金正日の秘密指令伝達を断つことにもなる。日本は改正外国為替・外国貿易法で、日本から北朝鮮への送金を全面禁止する。中国経由で、全品を持って北朝鮮を訪問しようとする在日朝鮮人は、再入国を不許可にする。日米共同で海上封鎖して、北朝鮮と第三国との貿易を阻止する。

 こうした全面的経済制裁により、北朝鮮の外貨収入を絶ち、独裁体制を維持するための食糧その他の物資の購入を出来なくさせるのである。それは、金正日体制を支える軍人、秘密警察を経済的に追い詰め、内部分裂と離反を促進さすことになる。また北朝鮮に、戦争に不可欠な重油や軽油やガソリンまた新兵器や食糧や医薬品の購入を出来なくさせ、金正日の戦争遂行能力を可能な限り低下させていくのである。

 (2)朝鮮総連の強制解散と国外強制退去。破防法五条および七条により、直ちに朝鮮総連の活動を停止させ、かつ解散させていく。非公然組織「学習組」や地下組織「大同江」「洛東江」も摘発し、出入国管理及び難民認定法二十四条(退去強制)を厳格に適用して、そのメンバーやその他該当者を国外強制退去させる。彼らは、日本国内で大規模な無差別テロを実行する可能性があるのだから、法に基づく当然の措置である。これらは、経済制裁の初期の段階までに処置しておかねばならない。

 (3)日米共同の自衛の先制核攻撃。経済制裁によっても、金正日が先の要求を受け入れて具体的行動をとらなければ、日米は自衛権を発動して先制核攻撃を開始する。もちろん日本は、今現在からそのための準備を開始しなくてはならない。

 多くを学ぶことが出来ると私には思われる中川八洋教授の著書『日本核武装の選択』(二00四年十月三十一日刊)の第一章「ノドンへの核攻撃なしに日本は守れない」から、要約してみたい。

 沖縄を除く日本の全てを標的にしている二百基以上の核弾頭・化学弾頭のノドンミサイル問題は、あくまでも被脅威国の日本自身が知恵を絞って熟慮し決断すべきだ。しかし日本にはノドンを破壊できる兵器がない。だから日本は米国に核トマホークの売却を要請する。第一撃用二十基と第二撃用の予備二十基の計四十基を緊急輸入する。米国との二重鍵にしておく。日本は閣議決定で非核三原則を廃棄する。NPT条約については、その旨をIAEAに説明し、一時的脱退を通告する。一カ月以下で十分だ。

 第一撃として、ノドンミサイル発射場(十五カ所前後)、ミサイル生産工場、ミサイル備蓄庫に一斉に核トマホークを投下する。全体で二十基。海上自衛隊のイージス艦と潜水艦から発射する。北の核弾頭が仮に五個完成したとすれば、ノドン五基に核弾頭が搭載され、残り一九五基以上にはVXやサリン等の化学弾頭が搭載されている。五基の核ミサイルは全て東京の皇居と総理官邸に集中して投下されるから、ノドンミサイルを一基残らず先制的に破壊するほかに、日本の安全はない。核トマホークを使うのは、通常型トマホークでは、その破壊力からして地表上の軍事基地を完全に破壊できないし、半地下や地下の工場であればほとんど破壊できないからだ。

 日本は、北朝鮮が日本の核トマホークの第一撃攻撃から逃れた、山中深くに隠していたノドンで反撃してくることへの対策も怠ってはならない。だから日本は、もし残存ノドンを発射すれば、予備の二十基の核トマホークを、平壌(金正日執務室、人民武力部《国防省》、国家安全保衛部《秘密警察》、金日成遺体安置所の4カ所)および主要軍事基地に投射する旨を、事前に宣言しておく。残存ノドンによる対日攻撃を抑止するためだ。またMDを配備する。日本は第一撃では、都市攻撃は一切しない。

 核攻撃する分担は、ノドンは日本だが、核開発施設の方は米国が担当する。

 北朝鮮では軍と党が一体となっている。軍事力が国内を支配するすべてであり、神である金正日は、軍事力を増大させることで宗教的権威を高めている。金正日を「将軍様」という神にしているのは、韓国も持っていない核弾頭と弾道ミサイルを保有していることによる。従って、日米の核トマホーク攻撃でミサイルと核施設が煙となって消えていくのを目のあたりにしたとき、人民軍も一般朝鮮人も、金正日が絶対神でないことを知り、金正日の呪縛は消えて、その打倒をめざす朝鮮人民の大反乱が生じる。核の一撃は、金正日独裁の倒壊の日である。

 以上が中川八洋氏の主張の要約である。多くの方に読んで頂きたいと思う。私は基本的に賛成である。私は第一撃の攻撃対象に、金正日も入れるべきだと考えている。但し、金正日殺害には非核の精密誘導爆弾を使用する。金正日が、強固なシェルターで防護された執務室を離れた時を、米軍のステレス戦闘機やステレス爆撃機による非核精密誘導特殊爆弾で攻撃するのである。それに合せて核トマホークの先制攻撃を行なうわけである。問題は金正日を殺害出来るチャンスがあるかどうかである。あるならば、その時を先制攻撃日とすべきであろう。独裁者が死ねば、国民の大反乱と、独裁体制の崩壊はより一層確実になるからである。

 上述のような日米による先制軍事攻撃によって、北朝鮮国民の反独裁の大反乱=大解放運動が勃発して、北朝鮮の独裁体制は倒されていく。この時、日本人拉致被害者は全員無事に解放されて、日本に帰国することが出来るのである。

 

 七、日本を真正な国家、民族にするために

 

 私は日本を心から愛するから、日本国家と日本民族には、米国や英国のように立派な国家、民族であって欲しいと切に願っている。だが、国民は今の自分のレベルに合致する政府しか持ち得ない。従って、日本国民が法の支配の思想を学び、かつ積極的に政治参加していかない限り、政治家、官僚の多くに政府の私物化を止めさせ、法に基づいた真正な政治を行なわせていくことは出来ないのである。

 対北経済制裁とそれに続く先制軍事攻撃は、法が日本政府と日本国民に課している義務である。自覚的な国民は、もっと多くの行動を起していかねばならない。友人、知人に行動を呼びかけよう。多くの人々が保守マスメディアに、貴社は法が命じる義務を履行しない小泉政権を厳しく糾弾し、退陣を迫るべきだ、とメールやファックスを送り続けていこう。多くの人々が集会や街頭キャンペーンを展開し、日本は法を守り、経済制裁・軍事制裁を断行せよ、義務を果さない小泉政権は退陣せよ、の声を挙げていこう。行動しなければ、何も変わらないのだ。

 この大国民運動を通して、日本国民と民族は、真正な国家と民族に大きく変革されていく。

 日米共同作戦に基づく金正日独裁体制の倒壊は、北朝鮮に、反社会主義・反独裁・反中露で、親日米の民主主義を志向する政府を誕生させることになる。韓国では、親金正日の左翼政権が選挙で大敗し、保守勢力が政権を奪回することになる。中国とロシアは、反自由・侵略の本質を改めて全世界に暴露されることになる。

 大陸国家で全体主義侵略国家の中国・ロシアと、自由主義諸国が対峙する上で、朝鮮半島全体を自由主義陣営が押えることは、地政学的に、日米と全自由主義諸国の安全保障に大きく裨益することになるのである。

 日本は、国際社会から大いに尊敬される名誉ある国家、民族になっていく。

 最後に。私たちは、自由世界の最大の脅威は、核超大国のロシアと核大国の中国であることを認識しなくてはならない。北朝鮮の原爆は五、六基だが、中国は原爆より遙に強力な水爆百基(威力は広島型原爆の二千倍)で日本を狙っている。ロシアの対日核は、中国の十倍から三十倍である。日本の安全保障は、日米同盟の堅持と日本の核武装によるしかないのである。

               

                 二00五年三月二十七日記


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