● 新生ロシアはソ連の偽装である
一、人類史上初の国家偽装転換の大謀略
一九八三年ソ連は、欧州戦域核戦争戦略を可能にするアメリカのパ−シングUとトマホ−クGLCMの西欧配備開始と、ソ連の弾道ミサイルを無効化し得るアメリカのSDI(宇宙防御兵器)の研究開始によって、侵略を抑止されて完全に封じ込められていくことになった。そればかりかSDIが完成し配備される近い将来において、国家存立の危機に直面することになったのである。それゆえにソ連共産党のエリ−トたちは、この未曾有の国家の危機を脱するとともに、逆に西側に対する戦略的優位を勝ち取るために、超高等な大謀略を発動していったのである。
すなわちゴルバチョフは、東欧解放を演出し、併行してソ連の政治的自由化、民主化の芝居を展開し、その上に仕上げとしてエリツィンを立てて九一年のソ連解体と民主主義と市場経済を志向する新生ロシア誕生の革命を演技していったのであった。ソ連共産党は、国家を新生ロシアに偽装したのである。
一九二一年のレ−ニンによる全面的な市場経済化という国家政策の大転換という大謀略をはるかに上回る、国家の偽装解体・転換という人類史上初の大謀略であったために、西側は完璧に騙されてしまった。西側は長い冷戦に勝利したのだと慢心し油断し理性的な分析を出来なくされて完全に騙されてしまったのである。ソ連−ロシアが流す心地よい「冷戦終結」の四文字魔語に心底から洗脳されてしまったのだ。西側は思想的に武装解除されてしまい、核戦力も通常戦力も化学戦力も大軍縮していくことになったのである。ソ連を完全に封じ込めていたパ−シングU、トマホ−クGLCMも全て解体されてしまったし、SDIは中止となった。
このような国家規模の謀略がなぜ可能なのか。なぜバレないのか。それはソ連=ロシアでは、ソ連共産党が国民を独裁支配しているからである。すなわち秘密警察KGBと内務省治安軍を使った国家テロルの恐怖によって、国民を骨の髄まで徹底的に支配しているからである。そして洗脳である。国民には一切の自由はなく、まさしく奴隷である。
ソ連時代の国民にもいくらかの自由があるように見え、新生ロシアの国民には山ほどの自由が保障されているように見えるのは、ソ連共産党中央とKGBが党員や国民に命じて演技させているからなのである。国民は自由に外国人に会って話すことはできないのだ。この禁を犯せば家族全員の死が待っている。西側の人間は、専門家を含めてソ連=新生ロシアの実態を全く知らない。国家テロルの恐怖が国家の実態を闇に隠しているのである。
二、謀略戦争を進めるロシア=ソ連
ソ連共産党は、戦火を交えずに謀略で敵国を弱体化していくという最も有効な戦い方、謀略戦争(冷戦)を実行している。ソ連共産党は、国家を「民主主義と市場経済を志向する新生ロシア。だが経済も軍備もボロボロになってしまっている新生ロシア」に偽装して、西側との協調路線をとっている。西側を油断させて大軍縮させてしまうためである。ソ連は征服を狙う西側諸国に、自国(新生ロシア)を「協力関係にある国」だと信じ込ませてしまったのである。
そして今ロシアは、START2(第二次戦略兵器削減条約)を批准し、CTBT(包括的核実験禁止条約)を批准して、「平和愛好国」のイメ−ジ(虚像)を創り上げて国際社会に自己宣伝し、かつ自由主義国内の反核団体(「NGO」などと言ってはならない。彼らのほとんどは客観的にはソ連や中国の手先の役割を担っている左翼侵略勢力である)をも使って、アメリカをはじめ自由主義諸国に〃平和〃攻撃をかけているのである。
ロシアの狙いは、ロシアの侵略手段であるICBM、SLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)を無効化するアメリカのNMD(アメリカ国土ミサイル防衛)システムを配備させないことである。またアメリカにCTBTを批准させることである。そうすればアメリカは自らの核兵器に対する信頼性を失っていくし、新型核兵器の開発ができなくなる。そしてまたSTART3やSTART4を締結して、アメリカの戦略核をより一層大削減させてしまうことである。ロシアはこれらの目標を、自らが創り上げる反核、核廃絶の国際〃世論〃の圧力を背景にして獲得しようとしているのである。
ロシアは全体主義国家であり、国民は自由ゼロの奴隷である。そして洗脳されている。従ってロシアには国民世論や自由な報道は一片たりとも存在しない。KGBの国家テロルの恐怖支配があるから国家機関員の内部告発も存在しない。だからロシアの独裁者たち(ソ連共産党が変装している)は、密かに条約を破っていくことができるのである。ロシアにとっては二国間条約も国際条約も有名無実である。一方の自由主義国家は法の支配が原則であり、条約に拘束されてしまう。
この国家の非対称があるから、ロシアの独裁者たちは核軍縮、核廃絶、NMD禁止を主張し、また各国左翼に主張させて、二国間条約や国際条約を締結しようとするのである。ロシアにとっては条約は謀略手段、戦争手段である。従って自由主義国家はロシアと軍縮交渉をしてはならないのである。
もしもこれらの謀略戦争に勝利したならば、ロシアは戦略核戦力において対米絶対優位を確立することに成功することになる。ロシアは条約を無視することが可能だからだ。ロシアは今日においても通常戦力、化学戦力、生物兵器においては対西側絶対優位を確保している。だから、戦略核の絶対優位を勝ち取ったら、ロシアは偽装を止めソ連であることを公然と名乗って、一気に西欧、日本等を含む全ユーラシア大陸を征服する革命戦争=侵略戦争(熱戦)を開始していくことになるのだ。その時ソ連は、西側各国の左翼(=非国民たる侵略勢力)には革命戦争に呼応する内乱を呼びかけることになる。
ソ連が侵略戦争を開始せんとしても、もはやアメリカは絶対優位にあるソ連の戦略核に逆抑止されてしまって、同盟国や友好国に核の傘をさし出すことが出来ず、ソ連は侵略を開始していくことになるのである。各国の左翼をも使って全ユーラシア大陸を征服し終えたならば、ソ連は続いて全世界の征服をめざしていくことになるのである。ソ連共産党はこうした二段階の世界征服戦略を堅持している。
ソ連共産党や各国の共産党などの左翼が言う〃平和〃とは、自由主義諸国を亡ぼす革命戦争(非暴力形態でも戦われる)のことであり、共産党独裁支配体制を全世界に拡大することを意味しているのである。こういう用語法を「転倒語法」と言う。左翼の用語は〃自由〃であれ〃人権〃であれ〃平等〃であれ〃民主主義〃であれ、全て転倒語である。
西側諸国は東西冷戦に勝利したのではない。冷戦は終わってはいない。ソ連=ロシアは謀略戦争という形の新たな冷戦を戦ってきているのである。そのことに気付かぬ西側は、時間の経過とともに確実に軍事的に弱体化させられて追い詰められていくから、冷戦に敗北したのは、また敗北し続けているのは西側なのである。我々がもしロシアの正体を見破ることができなければ、自由主義諸国は近い将来亡びることになってしまう!これらのテ−マについては既に「日本と自由主義諸国を滅ぼしてはならない−世界征服をめざすソ連=新生ロシアの謀略戦争−」(二月十五日記)などいくつかの文を書いた。参照してもらいたい。
三、ロシア大統領選挙は芝居である
我々は一日でも早く、ソ連共産党が西側を騙し油断させるために、国家をソ連からロシアへ偽装転換していることを見破らなくてはならない。ロシアに言わせれば、新生ロシアとはソ連の全体主義を否定した民主主義の国家である。だから独裁者たちはそのための芝居をしなければならないわけであるから、理性を持って冷静に観察し、分析評価していくならば、なされていることが芝居にすぎないことは判るのである。
私は拙文「新生ロシアの正体」(二月二三日記)で昨年十二月のロシア下院選挙が芝居であると主張したが、この三月に行われたロシア大統領選挙もまた同断である。だが西側の人間は、ソ連は冷戦に敗れて崩壊し、民主主義と市場経済をめざすロシアが誕生したのだと洗脳されてしまっているから、理性が喪失し批判精神も無くなり、ただただロシア発の(嘘)情報を盲信してしまっている。民主的な選挙でプ−チンが民主国家ロシアの次期大統領に選出されたのだと信じ込んでいる。
しかしロシア大統領選挙の実態を冷静に分析評価していくならば、「民主国家ロシア」は真っ赤な嘘だということが判る。そうすれば、九一年のソ連を解体して民主ロシアを樹立した革命も芝居であったと判る。国家の偽装倒壊であり、新生ロシアの正体はソ連であると判る。以下にロシア大統領選挙が芝居であることを明らかにしていこう。
(1)開票日、プ−チンは未だ当選(五十%以上の得票率)が決まっていないにもかかわらず、そしてあと少し待てば結果は判明するにもかかわらず(一時間後に判明)、選挙対策本部を後にして帰宅してしまったのである。これは候補者のとるべき行動ではない。実際、西側自由主義国ではそんなことはありえない。当選するとの〃結果〃が事前に判っているから適当なところで帰宅してしまったのである。
(2)当選決定の瞬間、プ−チンは居ないし、選挙対策本部の幹部も「特に祝杯はあげていない。プ−チン代行は明日も仕事が待っている」とコメントしただけであった。当選が決まった日のモスクワやサンクトペテルブルク等では、支援者たちが熱狂的に勝利を祝ったであろうか。否だ。マスコミのフィーバーはあったであろうか。否。大統領選挙があったことが嘘であるような静けさの中にモスクワはあったのである。西側の大統領選挙と比べて見れば異常さは歴然としている。ソ連時代の出来レ−スのソビエト選挙と全く同じなのである。ロシアの独裁者たち(ゴルバチョフがトップだ)はもはや、役人や様々な政党員や一般国民に正体を偽装しているソ連共産党員を動員して演技させるまでもなく、手抜き芝居でも西側を騙せるのだと自信を持っているのである。
(3)プ−チンは、抽象的には述べたが具体的な政策を公約として掲げることをしなかった。政見放送も拒否していた。それらの理由としてプ−チンは「政治綱領はあることはあるが、政敵に攻撃材料を与えたり、まねされないように、公表しない」と称していたのである。こんなことは西側自由主義国ではおよそありえない。具体的政策を公約に掲げないということは、有権者に白紙委任を要求することである。自由主義国でそんなことをすれば、落選である。プ−チンがやったことはソ連時代の選挙と全く同じなのである。ロシア国民は奴隷なのだ。
今になってもプ−チンは、具体的政策を明らかにしていない。なぜなのか。それは、芝居としてであれ自由主義的、民主主義的な政策を明らかにすれば、西側諸国にそれを利用されてけん制されることになるからである。
(4)プ−チンは、ソ連時代はKGB第一総局で十六年間活動していた。その後、KGBが名前を変えただけのFSB長官も歴任した。そして(操作された)支持率が一桁台に落ちていたエリツィン大統領が後継者に指名した人物である。本当にロシアが、全体主義のソ連を打倒する革命によって誕生した民主国家であれば、不人気なエリツィンが指名した、悪の象徴であるKGB出身のプ−チンが当選できるわけがないのだ。ナチスドイツを否定した新生西ドイツの大統領選挙に、ナチス出身者(幹部)が立候補したらどうなのかと考えてみればよい。しかしロシアではプ−チンが大統領になるのである。
ここから導き出される答えはひとつだ。ロシアとは、ソ連共産党・KGBが独裁支配しているソ連そのものであるということである。プ−チンの得票率五三%弱、ロシア共産党党首ジュガ−ノフの得票率三0%弱。両者合わせれば八三%弱の圧倒的多数に達する。これはまさにソ連そのものではないか。そもそもロシアの指導者層(政・官・軍・KGB・財)にはソ連時代の反体制派は一人も入っていない。全てソ連共産党員(出身者)だ。統一とかロシア共産党とかヤブロコなどの政党も全て、ソ連共産党の偽装なのである。
もちろん、選挙結果はロシア国民の投票結果をそのまま表わしたものではない。選挙は巧妙に統制され、また数字は操作されたものである。プ−チンの得票率を何%位にするか、ジュガ−ノフのそれを何%位にするかはあらかじめ決められていたのである。
(5)プ−チンは首相・大統領代行としてチェチェン戦争を戦った。プ−チンは「強いロシア」を体現したリ−ダ−として絶大なる人気を得たと言われている。それゆえに大統領に当選したのだという。これも(4)と同じで、本当にロシアが人道主義のカケラもない全体主義のソ連を倒して生まれた民主国家であれば、チェチェン戦争の仕方ゆえにプ−チンは逆に非難、糾弾されるはずだ。現に西側自由主義国は人道主義の立場からロシアのチェチェン戦争を非難しているのである。だがロシアではプ−チンが逆に圧倒的に支持されて大統領になるのである。ロシアが民主国家というのは真っ赤な嘘なのだ。
以上の如く、ロシア大統領選挙の内実を冷静に分析評価すれば、民主国家の選挙としては矛盾だらけであることが判るはずである。芝居である。従ってロシアが全体主義のソ連を打倒して誕生した民主国家であるというのも真っ赤な嘘であり、だから、九一年の革命も芝居であって、新生ロシアとはソ連の偽装であるのだということが判るだろう。
四、大統領就任式も謀略戦争の一環である
三月二七日、プ−チンが当選の報告をエリツィンにしたところ、エリツィンは「これから国民が選挙中の君の公約を厳しくチェックすることになるから大変になるよ」と助言したと報じられていた。私はこれを読んで「白々しい!クソ!ソ連共産党奴!」と吐き捨てたのだが、人々はまんまと騙されてしまうのである。次にプ−チンの言動を拾ってみよう。
五月六日、大統領の身分証明書授与式で、プ−チンは「国民が満足できる生活を実現するには民主的な国家機構を発展させることが必要だ」と強調したのだった。
翌七日、プ−チンの大統領就任式が各国大使をも招いてクレムリンで大々的にとり行われた。プ−チンは「憲法を守り」「国民の権利と自由を守り」「国家の主権、独立、安全、一体性を守り、忠実に国民に奉仕することを誓う」との宣誓文を読み上げたのだった。就任演説では「ロシアの歴史の中で最高権力が初めて民主的に国民の意志に沿って継承された」「ロシアは国民が誇りを持ち、自由で豊かな文明国にならなければならない」と謳い上げたのである。
なんと〃立派〃な言葉であることか。だがロシアではこれをそのまま信じる者は一人もいないのだ。ロシア人は「転倒語」として理解しているのである。ソ連人=ロシア人のエリ−トは嘘を平気でつける人種であり、いつも外国(人)を騙すことばかりを考えている人種なのである。彼らは大統領就任式での芝居を通じて各国大使をまんまと騙し洗脳していったのである。
だが、冷静になって考えてもらいたい。ロシアでは電気工事、水道工事、ガス工事、電話工事、道路工事等々あらゆる公共サ−ビス・施設の工事は、何の予告も説明もなく突然開始されるのだ。多くの外国人が体験していることである。ましてや「ご迷惑をおかけしました」などのお詫びの言葉はありえない。列車や飛行機の便が突如大幅に遅れることになっても、「都合による」の一言で済まされ、説明やお詫びなどない。そして国民は文句を言うこともせず、ただひたすら黙って従うのである。
これがロシアの真の姿なのである。ロシアの一般国民の地位なのだ。国家権力と一般国民との関係性だ。つまりロシア国民とは権利と自由を全否定されている奴隷なのである。国家権力に生殺与奪権を握られている奴隷なのである。このような自由ゼロの国民=奴隷の国で自由選挙が実施されるはずがない。そしてこのような奴隷が「プ−チンの公約」をチェックすることができないのは自明だ。そんなことをすれば命がない。エリツィンは平然と嘘を述べたのだ。そしてプ−チンの宣誓文(四年前のエリツィンも同じ宣誓文であった)も就任演説も「転倒語法」なのである。ソビエト語=ロシア語は全て転倒語である。
大統領就任式で真っ赤な嘘が語られても、ロシアにはそれを暴露し批判する報道機関は一つもない。「独立新聞」や「独立テレビ」とか様々な名称の反政権の報道機関があるが、それはロシアは民主国家であると西側を騙すために作ったものであり、本当は国家権力(つまりソ連共産党)が全ての報道機関、言論機関を支配しているのである。そして外国の報道機関にその嘘を密告する一人の国民も現れない。KGBが完璧に隅々まで恐怖で支配しているからである。また洗脳されているからでもある。
ロシアの政治社会の状態、ロシア国民の被支配状態はソ連の時と全く変わらないのである。ここから新生ロシアとソ連は同一であることが判るはずだ。九一年の革命は謀略の芝居であったのだと気がつくはずである。
大統領就任式にはゴルバチョフ元ソ連大統領も出席したが、これが全てを象徴している。ソ連を打倒して誕生したロシアのはずだから、元ソ連大統領・元ソ連共産党書記長のゴルバチョフなど招いてはならないのに、ゴルバチョフは招かれたのである。つまりソ連=ロシアなのである。ロシアはソ連の偽装なのだ。ロシア(ソ連)の最高権力者はソ連共産党書記長のゴルバチョフであり、エリツィンやプ−チンをロシア大統領に就けたのもゴルバチョフである。
五、経済混乱、社会混乱という芝居
ロシア(ソ連)の支配者は、「強いロシア」(核戦力の強化など)を掲げつつも、その一方では経済混乱や社会混乱による国力・軍事力の大幅な低下が続いているという芝居を継続していくことになる。西側を油断させたままにしておくためと、西側から経済支援としてカネと技術を奪い取るためである。ロシアは西側に、西側の征服をめざすロシアの侵略力を強化するための経済支援をさせてしまうわけである。ロシアは笑いがとまらない。謀略戦争である。(核で日本を狙っている全体主義侵略国家の共産中国へのODA供与も全く同じものである。日本政府はいつまでこのような亡国外交を続けるのか)。
ロシア発の情報によれば、ロシアでは新興財閥が国有財産を私物化し、また徴税を拒否してわが物顔に振舞っているとか、私兵を持ったマフィアがばっこして法と秩序もなくなっている、といわれている。それゆえ国家財政は危機となり、国防予算は大幅に削減されてロシアの軍備はボロボロになってしまった、といわれている。西側はこれを信じ込んでいる。情報戦争に敗北しているのである。
こんなものは真っ赤な嘘で全て芝居だ。新興財閥だろうとマフィアだろうと、そんなものはKGBや内務省軍の前にはアリンコのような非力な存在だ。プ−チンは正規軍、内務省軍、KGBを使ってチェチェン戦争を断行しているのであるから、新興財閥やマフィアの違法行為などすぐに制圧できるのだ。
プ−チンが大統領に当選した直後、ロシア海軍の原子力潜水艦がバレンツ海から、八千km先のカムチャッカ半島の軍事演習場へ向けてSLBM(非核)を発射して命中させている。その三時間後、今度はオホ−ツク海に潜む原潜がバレンツ海につき出たコラ半島の軍事演習場へ向けSLBMを発射して命中させた。これがロシア(ソ連)なのである。このデモンストレ−ションはプ−チンの力とロシアの核戦力をアメリカに示すためのものであり、その狙いはクリントン政権にNMDシステムの配備決定をさせないことにある。こういうことができるロシア政府が、新興財閥やマフィアに手を焼くなんて絶対にないのだ。すなわち西側を欺くための芝居なのである。
だが西側は、ロシア高官が言っている、ロシアの新聞、テレビが報じているというだけでコロリと騙され洗脳されてしまう。頭が良い人も悪い人も、理性を失い批判精神を無くした状態では等しい存在であり、ロシアの支配者にいとも簡単に操られてしまうのである。ロシアの支配者たちは皆超一流のプロパガンディストである。嘘をもっともらしくプロパガンダする能力に秀でている。
新興財閥とはソ連共産党(国家)が所有する企業集団のことである。またマフィアとは、本物もいるが多くはソ連共産党とKGBが偽装しているものである。そして「マフィアによる暗殺」とは、KGBがロシア国家(ソ連共産党)の「法と秩序」に違反する者を非合法に処刑しているのである。
ロシアの「法と秩序が崩壊する」状態とは、KGBも治安軍も正規軍もバラバラになって相争い、私欲を満たすために行動する状態だ。現実のロシアは全く違う。これらの暴力機関はソ連共産党によって完璧に統制されているのである。「法と秩序の崩壊」なるものは西側騙しの嘘プロパガンダなのだ。
流される情報が嘘、謀略に満ちている以上、想像力を働らかせて、抽象的・論理的な思考をしていかなければ、ロシアの実態、正体をつきとめていくことはできない。ロシア(ソ連共産党)の側に立って考えることが必要なのである。
六、ロシアは米国を凌ぐ軍事大国である
元陸上自衛隊教官の高井三郎氏が『軍事研究』九九年七月号で、「ソビエト体制が崩壊したとは言え、ロシアは依然、米国、中国を凌ぐ強大な軍事力を抱えていることは間違いない」と書いているが、全くそのとうりである。
ところが多くの軍事評論家が、「ロシアの九九年度の国防費は日本円に換算すると約四000億円にすぎず、日本の防衛費四・九兆円の十分の一よりもはるかに少ない。ロシアの軍備はボロボロになっている」等々とKGB情報をそのままに主張したり、多くの経済評論家(経済学者ではない)が同様に、「ロシアのGDPは日本の二十数分の一にすぎないし、韓国のそれよりも小さい」等々と発言する。また何人もの有名な評論家が「ロシアは経済破綻して、この先数十年は脅威にならない」などと書く。こうした誤った主張ばかりがマスメディアに載るから、みんながそう信じることになってしまっているのである。ごく少数派の正論は存在すら抹殺されてしまう。
敵(ロシア)の謀略戦争が成功するのは、主観は違っていても客観的には敵の代理人と等しい役割を果たす、こちら側の影響力ある人(有名人)の活動があるからである。ロシアは彼らを「協力者」として位置づけている。
新聞によれば、二000年度のロシアの「国防費」は日本円に換算して約五五00億円、一般歳出は約三兆三五00億円、GDP見通しは約二一兆円だとされている。だが元のル−ブルの数値がはじめから作為された数字であるし、またここには購買力平価を隠す為替レ−トのトリックがあるのである。なによりもロシアは意識的に為替レ−トの暴落を仕組んだ。そうするとドルや円で表示するロシアの国防費は実質価値の何十分の一かになってしまうわけである。
為替レ−トのトリックとは次のことだ。ル−ブルのレ−トが暴落して円やドル換算で何十分の一になろうとも、ロシアの国防費(ル−ブル)の購買力は同じである。なぜならばロシアの軍備は全て国産であるからだ。為替レ−トは関係がないのだ。ロシアの国防費の比較は、物価水準を基にした購買力平価でやらなくてはならないのである。
ロシアの若い教員の月給は五00〜七00ル−ブルだと新聞に出ていた。今これを正しい数字だとしよう。ル−ブルの為替レ−トは一ル−ブル約四円なので、二000円〜二八00円となる。ロシアでは月給五00ル−ブルでギリギリでなんとか暮らせるとしよう。しかし日本では月二000円では言うまでもなく十倍の二万円でも暮らせない。月四万でギリギリなんとか暮らせるとしよう。すると購買力平価で測ると五00ル−ブルの購買力は日本における四万円の購買力と等しくなり、一ル−ブルは八0円となる。これがル−ブルの実質価値である。すなわち一ル−ブル4円の為替レ−トは購買力平価の二十分の一になっているのだ。
だからロシアの国防費の実質価値=購買力は、円換算の場合には二十倍にしなければならず、五五00億円の二十倍で十一兆円に等しくなる。日本の二000年度の防衛費は約五兆円である。だがロシアの「軍事費」が十一兆円ぽっちであるわけがない。これっぽちではあの日本の何十倍もの兵器装備と兵員を維持できないからだ。
ソ連時代の「国防費」とは、主として国防省の事務経費や兵隊の給与などのみであり、兵器の代金は全く含まれてなかったのである。西側に対して「軍事費」を小さく見せるためである。そして西側に隠されていたソ連の真の「軍事費」は「国防費」の十倍以上もあったのである(中川八洋筑波大学教授『ゴルバチョフの嘘』五九頁参照)。ソ連時代、ICBM、SLBM等のミサイルは「一般機械制作省」(の予算)で造り、核弾頭、原潜の原子炉等は「中型機械省」で、弾薬、砲弾、化学砲弾等は「機械制作省」で、空母、巡洋艦、潜水艦等は「造船省」で、爆撃機、戦闘機等は「航空工業省」で造っていた。「国防工業省」では戦車、大砲、小火器のみを担当していたのである(同教授『大侵略』二五二頁参照)。
ソ連からロシアへの偽装に際して、西側の疑念を払拭するために多少の改善措置はなされただろうが、兵器生産の予算の全部が「国防費」に計上されるようになったと考えるのは余りにも幼稚すぎることである。多くの軍事費が巧妙に隠されているのだ。ロシアが世界最大の軍事大国なのである。
七、平時の戦争に勝利しなければならない
自由主義国家が亡ぶとすれば、全体主義国家による侵略戦争や、国内の敵である非国民の左翼による侵略(=革命)の成功、また両者の結合によってであるが、それ以前から武器を使わない侵略戦争はなされているのである。平時の侵略戦争である。
平時の主要な戦争形態は、思想戦争・情報戦争であり、謀略戦争である。ロシア(や中国)は各国の左翼(共産党・マスメディアその他)を操るだけでなく、各国政府と保守言論界をもコントロ−ルして、西側国家を弱体化する平時の侵略戦争を戦っているのである。「冷戦終結」「ロシアの経済的破綻」「反核」「核廃絶」「軍縮」「平和」「平等」「人権」「自由」等の謀略スロ−ガンはそのひとつである。
自由主義国家の指導層(政・官・軍・言論・財)が、平時の敵の侵略戦争に敗北するならば、遠くない将来にロシアや中国等の軍事侵略と国内における革命を招いて国家は亡ぶことになる。
六月上旬、米露首脳会談が予定されている。真正なエリ−トの方々には、ロシアの正体を伝えて、クリントン政権を誤りから覚醒させて頂きたい。人類の運命がかっているのである。アメリカは断固としてNMDシステムを配備し、核軍拡を推進せねばならない。西側自由主義国家の軍備(核)は正義であり、増強しなければならないが、全体主義侵略国家(ロシア、中国、北朝鮮、イラク等)の軍備は悪であり、全廃せねばならないのである。これが日本と自由世界の安全保障の真正な思想である。
二000年五月十三日記