モスクワ郊外 (Jul. Aug. 2005) *Japanese *Russian
(アルセニー タルコフスキー「いのち、いのち」より) (一) 私は予感を信じない 前兆にも 惑わない 中傷も毒も 恐れはしない この世に死は存在しない すべての人は不死だ すべてのものは不滅だ 十七歳でも 七十歳でも死を恐れる必要はない あるものはただ現実と光 闇も死もこの世には存在しない 我々はすでに海辺にいる そして不死が群れてやってくるとき 網を曳く者たちの中に私はいる
(二) 家に住むがいい−家は崩壊しない 私は好きな時代を呼び出そう その時代に入って家を建てよう それゆえ、私はあなた方の子供や あなた方の妻とひとつのテーブルにつく 曾祖父や孫にもテーブルはひとつ 未来は今、実現される 私が片手を少しあげると 五つの光はすべてあなたの処にとどまる 私はこれまでの日々を 自分の鎖骨で支えてきた 測量の鎖で時を測った ウラルを抜けるように時を抜けた
(三) 私は体に合わせて時代を選んだ 南部には行って埃を舞い上げた 雑草はむせ返り、バッタは戯れ ひげで蹄鉄に触れて予言した そして、修道僧のように死で私を脅した 私は自分の運命を鞍に結びつけた 今、私は来るべき時代にいる 少年のように鎧の上で腰を浮かせて 私は不死に満足している 私の血が時代から時代へ流れ込む 常に暖かく確かな一隅のため 自ら生命を捧げよう もし、いのちの飛び行くその針の糸が もはや私をこの世の光に導かぬなら