1話

神崎は高校の頃に生徒会長をやっていたが、そのとき俺は副会長だった。
まぁ、その手の話はよく見られることだが、実は俺たちは中学以来の関係だ。
たまたま同じクラスになり、出席番号が前後したことがきっかけで話すようになり・・・それが今でもダラダラ続いている形だ。
実はこうやって俺が副会長なんぞをやっているのも、俺自身が希望したというよりは神崎に巻き込まれたからに他ならない。

俺と違って神崎自身は人の上に立つ資質を持っているのだが、生徒会長なんかやりたくない・・・というのが彼の立場だった。
だが、彼を見逃す人間などいるはずがなく、前生徒会長に推薦されてしまった。
本人は訳あってひたすら断っていたものの、結局は断り切れず、会長となることを承諾した。
で、その彼もただで引き受けるつもりはなく、一つの条件を出した。それが・・・俺が副会長をやることだった。
その真相は今でも解らないが、俺が拒むとなると各方面を敵に回すことになるわけで、俺たちは公私ともに親しいお付き合いをすることになってしまったのだ。
ちなみに、俺たちが二人そろうとかなり絵になるらしく、女性どもの間では俺たちがカップルだと言うやつもいた。
俺のほうは受という設定(神崎×清原と表記するそうだ)らしいが、残念ながら俺たちはカップルではない。神崎には長い間想っている奴がいる・・・。





「あ、どうだった?貴之くんは」

「あぁ、元気だったよ。あいつは世界で一番かわいい!」

ったく、甘ったるい顔しやがって。うんざりする気持ちを隠し、いつも通りの質問をしてやる。

「で、ラブラブになれる見込みは?」

「残念ながら0%」

今度は一気にしゅんとする神崎。実は神崎は桐生貴之という少年に恋している。
彼は神崎の従弟で、同じ学校に通っている。
貴之くんは身体が非常に弱いが、親は忙しくそう簡単に仕事を休めなかったため(病院代を賄うためでもあるらしい)、
一歳上ということで年齢も近かった神崎が面倒を見ることになり、気づいたら好きになっていたということであるらしい。

ただ、これは非常に厄介な片想いだといえる。
身内、同じ男というのはまだしも(これ自体問題だろうが)、貴之くんは難病に冒されている。
実際に中学までは入退院を繰り返していたが、高校は彼の切なる願いということで、なぜだか通うことが許された。
だから神崎は暇さえあれば貴之くんのところに遊びに行っている。
いや・・・正確に言えばそういう名目で見守っているというべきだろう。
だからこそ、『生徒会長』という役職に縛られたくなかったのだ。
本来だったら、いつでもどこでも彼にくっついていたいはずだ。
まぁ、どちらにしろ本人は今のところは楽しそうだから問題はないのだが・・・。




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