3話

神崎は基本的にいつも学校が終わると欠かさず貴之くんと一緒に帰るか、彼の家に押しかけるのが日課だ。
親御さんが頼んでいるということもあるようだが、実際には自分が行きたくて行っているだけだったりする。
生徒会があろうと、部活があろうと、どんなに忙しくても忘れないから、方向性はどうであれ、その精神力は大したものである。俺はひそかに感心していた。

だが、気になることが起きた。
最近桐生の家に神崎が行っていないのだ。
あの三食よりも貴之くんをモットーとする男が、忙しいからといって行かないはずがない。
仮に自分が病気であっても行く(そして、貴之くんに移すなと俺に止められる)・・・神崎はそんな男だ。
それと同時に、神崎の様子が変だということにも気づく。
それは一般人から見ればまったく変わらないのだが、彼と何年も一緒にいる俺は神崎のどんな変化も見落とさないのだ。
そして、見事その勘は的中した。

神崎のことだから、そのうちちゃんと貴之くんのところに遊びに行くだろう・・・
最近は放っておいて先に家に帰っていたが、神崎を見ても家に行く様子がなく、用事がなければ寄り道せずにまっすぐ帰宅していた。
これはどう見ても異常でしかない。不思議・・・というか、不気味に思い神崎に聞いてみた。

「最近、貴之くんの家に行っていないのか?」

神崎は家でぼーっとしていた。
特に何かをするわけでもなく、ただ無為に時間を過ごしている。生気が抜けていたというほうが正しいかもしれない。

「あぁ、禁止令が出たからな」

それを聞いてなおさら俺の疑問が増える。
この男、しょっちゅう貴之くんの家に入り浸り、貴之くんにベタベタするから、時々それが出るのだ。
しかし、それは永久的なものではなく、いつも三日空けずにべったりしていたはずで、貴之くんのほうもそれを許していたはずなのだが・・・
そういう背景があっても行かないということは、それなりに重大な理由があるということだ。

「お前、まさか強姦でもしたのか?」

それを言った俺自身が信じてはいないが、そこまで嫌われるとしたら、これしか考えられない。
森川だかいう友達も現れ、多分追い詰められた神崎が嫌がる貴之くんを無理矢理・・・ということか。しかし、それを聞いた神崎が呆れる。

「本気で言ってるか?」

「勿論それはありえないな。お前はどんなことがあっても自分を押さえつけるからな。
相手が傷つくなら、自分が傷ついたほうがいい。そうだろ?まぁ・・・だから分からないんだよな。お前、一体何したんだ?」

彼は話し始めた・・・。




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