7話

さて、二人が和解してから数ヵ月後、俺は貴之くんに呼ばれた。
再び神崎と話せることになったお礼かと思ったものの、神崎を連れてくるなということだった。
一体何の話があるのだろう?



「清原さん・・・あっちゃんのこと、よろしくお願いします・・・」



はい?
いろいろ理由をつけて神崎を遠ざけた結果がこれだ。さすがに俺は聞き返した。
その言葉の意味が分からなかったこともあるが、もう一つ・・・漠然とではあるが、死に行く人の台詞の様に聞こえたからだ。



「医者も家族も隠してるようなんですけど、どうも僕の身体も限界なようです」



彼の言葉が真実ならば、俺の抱いた印象は正しかったということだ。



「何バカなことを言ってるんだ?」



荒唐無稽な話のように聞こえるが、貴之くんとの付き合いが長い俺たちにとっては、それは笑い話にならない。
だから、決して冗談で言える内容ではない。
彼が、神崎を遠ざけて俺に話すということは、それだけの意味があるということだ。
だが、会って早々そんな不吉なことを言う必要はない。そんなことがあってたまるか。
それなら、神崎はどうなるんだ。俺は否定したが、貴之くんもただ弱気になったから言ったわけではないようだ。

「お気遣いありがとうございます。
でも、僕のことは、僕自身がよくわかります。
あっちゃんには・・・もう少し時間を下さい。
心の準備ができたら話します。
あの人が寂しがらないように、側にいてやってください」

そう言われても、神崎の好きな奴は貴之くんであって、俺ではない。
本当に側にいて欲しいのは貴之くんなわけであって・・・なぜそんなことを言うのだろうか。
彼はしばらく言いよどんでいたが、振りしぼるようにして言う。

「あっちゃんはいつも僕のことばかり構っていて、人生いつも損してるんです。
友達との約束もあったはずなのに、寂しいと思った時には僕が言う前にいつも側にいてくれたんです・・・。
僕なんかと一緒にいたって仕方無いのに・・・。

もしこの身体が丈夫だったら、あっちゃんは僕のことを厄介だと思わなかったんでしょうね。

病気の弟としてでなく、一人の人間としてみてくれたんでしょうね・・・」

彼の話を聞いて、もしやと思った。俺の想像が正しければ・・・。




NEXT



サイトINDEX   サイトTOPページ   Novel