8月12日:記入者 朝比奈和真

俺の中に産まれた感情は、愛というもの、直感的にそう思った。
やっと『恭祐の弟』だからではなく、純粋に彼を欲しがっていたことに気付いた。
それを俺は自責の念や償いという言葉でごまかしていた。
そのほうが俺にとっても、そして、裕也にとっても都合のいいものだから。

あいつが俺を恨んでいた以上、彼を好きになることは許されないから・・・。
でも、俺は裕也を好きになってしまった。彼にはもっと笑っていてほしいと思う。
復讐という暗闇にとらわれないでほしいと思う。いい加減俺たちは前を向いて歩かなければならない。





恭祐・・・お前に謝らないといけないな。お前からあの子を奪ってしまうことになるかもしれない・・・。






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8月12日:記入者 樋口裕也

もう和真さんのことは諦めよう。
その源泉がどんなものであれ、抱いてもらっただけで充分だ。一緒に遊園地に行けただけで充分だ。
逆恨みしておいて自分勝手な話かもしれないけれど、今ならいい思い出だけ残して終わりに出来そうだ。
だから和真さんをひきつけておくためにわざと手をつけずに置いた恭祐兄の遺品を整理することにした。



遺品の中には、アルバムがあった。友達が多い兄らしく、いつも写真の中央に写っていた。
勿論、和真さんとの写真もあった。それは恭祐兄と二人っきりのものだけで、和真さんの性格がよく表れている。むすーっとしながら映ってるんだ。本当に微笑ましかった。
あんまり人と写るのは好きそうじゃないからなぁ・・・。兄のほうが無理言って写真を撮ったのかもしれないね。




色々探していて、めぼしいものがなかった・・・と思っていたら、日記があった。
そういえば恭祐兄はマメな人だから、そういうのが好きなんだよね。
でも、いつも開けっ広げの癖して、こういうことは秘密主義だったから、存在は知っていても、見ることは出来なかったんだ。
でも、どうしてそんな大切なものがここにあるんだろうね。
恭祐兄は何も考えていないようで本当に考えていない人だけど、これにはそれなりに意味が存在するんだと思う。だから僕は見ることにした・・・。



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