7月1日:記入者 同上

あの和真が俺に大丈夫かと聞いてきた。
普段は鈍いくせに・・・。
だから俺は笑って大丈夫だと言った。






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7月5日:記入者 同上

まぁ、あれだ。世の中はなるようになるよう出来ているものだ。
こんなことで落ち込んでいても、一銭の得にもならない。
うじうじしていれば、それだけ悪い方向に行ってしまいやすい。
開き直った者が勝ちなのだよ。だから俺は開き直る。

目下の課題は、テストだな。これが悪くちゃいけない。
そんな些細なことでも人の運気は左右されるものだ。

何、まだ時間はある。

裕也がもたもたしている間に俺はみんなが幸せになれるよう最善の策を考えればいいだけの話なのだ。






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7月15日:記入者 同上

長ったらしい期末テストが終わり、やっと全てのテストが帰ってきた。
ふふふ・・・俺様相も変わらず学年トップ維持よ。やっぱり優秀なお兄様でいないとね。
勉強なんかしていません・・・とほざいておきながら、人目につかず勉強した甲斐があるというもの。
何にも考えていないように見えて、実は俺は努力家なのだった。
専属家庭教師をしただけあって、和真も赤はないみたい。と、いうわけで後は夏休みを残すのみ。
せっかくだから、どこか旅行したいな・・・。和真と二人で行くのもいいし、裕ちゃんを巻き込むのも面白そうだ。



覚悟なさい!愛しの、マイ・ダーリン!






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7月20日:記入者 樋口恭祐

樋口恭祐の恋日記(いつの間に恋日記になったんだ)、本日が最終回?
俺の人生で最大級の嫌な予感がするんだ。自慢にはならないが、俺の勘はなぜか人より優れていて、特に、それこそ自慢になってたまるかという話だけど、嫌な予感というのは、必ず当たる。
中学になって、ねぼけてベッドをトイレと勘違いし、夢と現実が区別できなくておねしょをしたときも、食中毒で身体が絶不調のため、ついつい名前を書き忘れてテストで0点を取った時も・・・裕也が和真を好きだというのに気づいた時もそうだった。
だけど、今回の嫌な予感は今までのとは違う。



どす黒い・・・笑いにできそうにないものだった。



ひょっとして、俺の命も今日でおしまいなんじゃないか。健康診断では異常なかったんだけどなぁ・・・。




勿論、これが杞憂に終わると思ってる。そう簡単に『嫌な予感』で死んでたまるか。
だから、俺は賭けをすることにしよう。もし明日何事もなく終わり、家に帰って日記を書くことが出来たなら、俺は和真に告白しよう。
自分の心のうちを正直に伝え、和真の心を知ろう。


もし・・・俺がこれを書けないときはその時は・・・俺は予言してみる。
和真と裕也が・・・ま、そんなことはないだろうけどね。それこそあってたまるか。


遺言はどうしようかな・・・それは止めとくか。
こういうのは行動そのものが、ある道筋を決めてしまうという。
『鰯の頭も信心から』というように、『ジンクス』とか、『縁起』とかは、ただの迷信ではない。
言い換えれば、ただの迷信に終わらないからこそ、そうやって存在している。本当のことになったらまずい。






とりあえず、いつも片時も離さず持っていたこの日記は置いておこう。明日書きに、俺は帰ってくる。





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