7月31日:記入者 朝比奈和真

まさか親友の弟を抱くことにはならなかった。
俺はちょっと脅すつもりだった。
いくら親友最愛の弟でも、恭祐を冒涜するのが許せなかった。
あいつの本気が痛いほどわかっていたから、人の気持ちをせせら笑うような行為が許せなかった。




だから、釘をさすつもりだった。嫌がればすぐにやめるつもりだった。
だけど、あいつは拒まなかった。いや、むしろそれを望んでいたような気もした。
その時は頭が回らなかったので、大して気にも留めなかったけれど・・・その真相を知るのは、この後になる。




実は裕也くんは初めてだったらしい。最中も涙を浮かべていた。
強がってはいたけれど、相当痛かったのだろう。冷静になってから俺は後悔した。
挑発に乗せられるんじゃなかった。あの時何を言っても拒否しておけばよかったのだ。





俺はもう恭祐にも、そして、裕也くんにも合わす顔がなかった・・・。






隣でもぞもぞと音がした。どうやら裕也くんが目を覚ましたらしい。
起き上がろうとしたが腰に激痛を覚えたのか、うめき声をあげて沈み込む。
俺は取り返しのつかないことをしてしまった・・・。



「・・・痛い・・・」


「ごめん・・・本当に悪かった・・・」


俺にはそれしか言えなかった。今は何を言っても言い訳のような気がする。


「いいよ、別に。大切な人を失った同士そういう関係になるのも悪くはないんじゃないかなと思っていたから。
まさか本当にされるとは思っていなかったけどね。僕と付き合ってよ。嫌だと言わないよね。





兄さんを殺したのは・・・貴方なんだから」






俺はやっと気づいた。これが裕也くんの目的だった。勿論俺に嫌と言う権利など存在しなかった・・・。



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