Nummer fuenfzehn〜苦悩、ソシテ、告白〜


「冗談だったら・・・苦労しない」

頭を掻きながら苦笑いするその様は冗談には見えなくて。
俺はそれを信じていいのかな?


「ほんと?本当に俺が光輝兄のこと、好きでいいの?」


「おにーさまの言うことくらい、信じたらどうだ」

俺がそれを信じないから、光輝兄はふて腐れてしまった。
でも、仕方ないじゃないか。
俺は直に光輝兄の口から聞きたいんだから。


「本当に本当なんだね?夢なんかじゃないよね?実はこれは夢のお話です、なんて言わないよね?」




「・・・俺は夢だったらいいかと思ったけどな。何度頭をぶつけたことか。夢なら醒めてくれとも思ったけど・・・
残念ながら夢ではないらしい」





そう言って俺のほっぺをきゅっとつねる。何故俺の?と言おうと思ったけれど、何となく嬉しかったのでやめた。
俺は嬉しいけれど、兄はそういう結論に落ち着いたことに、実は納得できていないらしい。
本当に悔しそうだ。おでこのあざがそれを照明している。
相当男を好きになったのが悔しかったんだな・・・顔が緩みそうになったけれど、俺の想像に反して兄が沈痛な面持ちになり、俺はそれを引っ込めた。どうやらそんなに単純な話ではないらしい。






「まだ話は終わっていない。その・・・期待させて悪いとは思ってる。ここから先はお前の聞きたくない話かもしれない。でも・・・聞いてほしいんだ」





ここで黙り込む。俺の返事を待っていた。どういうことなのかと思ったけれど、俺は逃げないことにした。
光輝兄も自分なりに悩んで結論を出そうとしてくれる。だから、俺は、そんな兄に従おうと思っている。
そう返事しても彼はしばらくためらっていたけれど、何かを決意したのか、やっと口を開いた。






「こうやってお前らの邪魔をしてみたものの、本当はまだ俺は瞬をお前が望むような目で見れているわけじゃないんだ。
お前に冗談扱いされて拗ねていたこともあったけど・・・それは半分程度だ。
やっぱり、男同士というのは、無視できなかった。好きなら性別は関係ない・・・残念ながら俺はそう断言できる性格じゃないんだ。
お前に『キモい』と言われてそれを思い知ったよ。やはり女と付き合うのが自然なのか、




俺と付き合うことが果たして瞬にとって幸せなのか・・・




瞬には悪いと思ったけれど、今度こそお前を突き放すべきだと思ったんだ。
そして・・・それがお前の望みでもある、俺はそう思い込んでた。
俺がそう言っても、時がお前を癒してくれる、そんなずるいことも考えていた。
お前ならそのうち許してくれる・・・俺は甘えていたのかもしれない。
俺はどんな覚悟でお前が告白したのかを忘れていたんだ。
もしそれを覚えていたら、『キモい』といったときのお前の気持ち・・・察してやれたのかもしれない。
いや、忘れたというよりも・・・逃げたのかもしれないな。
お前が本気だということは痛いほどわかってた。
だから、お前を利用しなかったとは言い切れないんだ。
それについては何も弁解するつもりはない。





でも、俺はもうお前のことをただの弟と見ることが出来なくなったことも、本当なんだ。
弟に抱く以上の気持ちでお前を愛してやりたい、守ってやりたいとも思う。
今更こんなことを言ったって、信じてもらえないことはわかっている。
お前を傷つけるだけ傷つけておいて、虫のいい話だと解っている。

それでも・・・言わせてほしい。





・・・俺は瞬が好き・・・なんだと思う。





今はこんな答えしか出してやれないけど・・・もう少し時間がほしい。お前が飽きるまで・・・俺の側に・・・いてくれるか?」



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