Nummer 9.5
しかし、続いたのはただの糾弾ではなかった・・・気がする。
「責任・・・どうやって取ればいい?光輝兄が望むことなら、俺何でもする」
俺の本心。兄さんがどんな目的、手段で俺に復讐しようとも、俺は喜んでそれを受け入れる。それが俺に残された道だから・・・。
「お前が今俺のことをどう思っているかを聞かせてほしい」
彼は何を言いたいのだろう?俺が今思っていること・・・?
「だから今言ったよ。光輝兄が望むことなら・・・俺は何でもするよ」
「そうじゃない。俺のことをどう思っているか」
俺が兄さんのことをどう思っているか?
それを言えと?
あなたは残酷な人だよ。
人がどう想っているか知っているくせに、わざわざ口に出させてどうするのさ。
あぁ、そういうことか。解ったよ、そうやって俺を傷つけるつもりなんだね?いいよ、それが望みなら俺は正直に言う。
「・・・好きだよ。忘れると言ったくせに、忘れたらまた好きになっちゃった。結局俺には忘れるなんて無理だったんだ。
ごめんなさい。俺、嘘つきだね・・・」
兄さん、何て言う?俺が嘘つきだって?それでもいいよ?俺は光輝兄が好きだから。だから、そんな人に言われるのは辛いけど、だからこそ何を言われても・・・
鷺沼瞬という存在を傷つけるのなら、俺にはその痛みすらも快感となるだろう。
「そうか・・・まだ間に合うかな・・・?」
「間に合う?」
「あぁ、これは俺の身勝手な話だけどな。もし、今でも俺を好きでいてくれるのなら・・・いや、何でもない。虫のいい話だな」
自嘲的に言うのを見て俺の頭の中は「?」でいっぱいになる。
「光輝兄を好きでいるなら・・・?」
しばらく彼は答えなかった。すごく哀しそうな眼だった。今更言ってどうするのか?そんな感じだった。
「もし、こんな馬鹿な男を許してくれるのなら・・・俺と付き合ってほしい」
彼の口から出たのは、俺が最も望んでいたはずの言葉。
だけど、いや、だからこそ他人事に聞こえてしまう。
夢だったら嫌だから、信じたくない。信じなければ裏切られることはない。
「何言ってるの?冗談だろ?」
そうだ、これは冗談だ。
女好きの光輝兄が、俺と付き合いたいはずがない。
もしほんの少しでも俺と付き合いたいと思う部分があっても、それは馬鹿な俺に対する同情。
それとも・・・俺ってやっぱり暗い人間だな。兄の戦略だと思っている自分がそこにいる。
「冗談じゃ・・・」
「だって・・・ホモだろ?そんなのキモいじゃん」
だから俺は流すことを選んだ。傷つきたくなかった。
でも・・・自分を庇って言ったこの言葉が、どれだけ暴言だったのかに気づいていれば・・・。
「そうだな・・・今の言葉は忘れてくれ・・・」
それから兄は何も言わなかった・・・。