Side Shun

時間を作ってくれた光輝兄には悪いと思うんだけど、ダブルデートであってよかったとおもう。もし彼と二人っきりだったら、緊張して楽しめなかったかもしれない。それだけ光くんと遊ぶのは楽しかった。もともと彼はノリのいい性格らしい。いろんなところに引っ張られ、年寄り組は早々に撃沈し、今は休憩に入っている。

「瞬くん、ほんとーにごめん。俺ってば何も考えてなかった・・・」

とはいえ、彼にも謝るという言葉があったらしい。遊ぶだけ遊んでおいて、謝ってきた。

「別に謝らなくていいって。俺、光くんに感謝してるんだ」

「光輝さんと・・・喧嘩してるの?」

俺のトーンが低くなったのをそう受け取ったらしい。気遣うように声をかけてきたから、俺は軽く首を振った。

「ちがうよ。光くんみたいな友達が出来てよかったなって。俺、ずっと秘密にしてるから、苦しくてさ。光輝兄はあんまりそういうのを公言したがる性格じゃないし・・・。それに、あんなこと言われて光輝兄だって楽しめるはずないから」

「仲・・・よさそうなのに・・・」

「それは・・・光輝兄が優しいから。多分光くんならわかるかもしれないけど、彼、生粋の女好きなんだよ。俺が傷つかないようにって我慢して付き合ってくれてるんだ・・・。本当は文句言える立場じゃないって解ってるんだけど」

秋本さんと光くんが止めてくれなければ、勢いでありとあらゆる暴言を吐いていただろう。あれから俺は随分卑屈になったと思う。今の幸せが恐い。兄を信じようとすればするほど、自分を守ろうとしたくなってしまう。兄は本当に優しいから、ずるずるとその温かさに縋りたくなってしまう。でも、縋ってしまうと嫌われそうで・・・前に出ることが出来ない。

「ははは・・・俺って馬鹿だな」

つい自嘲的に笑ってしまったけれど、彼は優しく首を振った。

「その気持ち・・・解るよ。好きになればなるほど、現在の幸せが恐くなる。俺さ、博の前は本当に身体の付き合いばっかだったの。本気で好きになったのは博が初めてなんだ。それを自覚したときは恐かった。だって、俺汚いじゃん?こんな俺なんて好きになってもらえるはずがない、そう思ったよ。常に最悪の事態を想定しておくんだよね。そうすると、どんなことがあっても、『やっぱり』ですむから・・・。

そんで、ついつい突っ張っちゃうんだよね。素直になりたいと思うんだけど・・・まぁ、俺には無理だよ。でも・・・なんか解ったんだよね。博って口では結構エロジジイ的なこと言うし、お仕置きもよくされるけど・・・どんな俺でも受け入れてくれる・・・」

くすりと光くんが笑う。ただのお惚気でないことはよく解る。彼なりに励ましてくれているようだ。

「俺はゲイだからそういうことに無頓着だったけど、同性からの想いを受け入れるのって相当覚悟がないと無理だと思う。優しさや、同情なんかで出来るもんじゃない・・・っていいこと思いついた。瞬くんはどっちかと言うとバイなんだよね?」

そう聞かれても。俺はただ光輝兄だから好きになったわけで。でも、鳩山先生に押し倒されたとき、あまり嫌悪感はなかった。ということは、バイというやつなのかも知れない。

「つまり、俺とセックスできるかもしれない・・・ってわけだ」





はいーーー?俺、第二の貞操の危機!?抵抗する暇も与えず光くんの綺麗な顔が目の前に迫る。

「えっと・・・光くん?俺まだ光輝兄とキスすらしてないんだけど・・・」

抵抗してるんだけど、彼は無視して俺に馬乗りになる。場所を考えてほしい・・・てそんな問題じゃない!

「君は・・・どっちがいい?」

「どっちって・・・?」

上か下、彼は耳元で囁いた。こいつ、相当遊んでやがる。というか、聞かれても答えようがないんだけど、そんな沈黙をどう受け取ったのか・・・

「ふふ・・・瞬くんは後ろはしたことがなさそうだから・・・」

犯ル気満々らしい・・・・・・。今度こそ俺、貞操の危機・・・!



next