Side Koki
はぁ・・・と俺は自己嫌悪のため息をつく。あの二人が事に及ぶはずがないことくらい解っていた。あの光くんに関してはかなり遊びなれているようではあるが、最後の一線を越えるはずもない。あの子は秋本さんのことしか頭に入っていない。まぁ、つまりは彼のスキンシップというやつなのだろう。でも、あれを見た途端頭が真っ白になった。恐らく嫉妬というやつだ。俺は光くんに嫉妬したのだ。本当にくだらない。そんなくだらない感情で瞬を傷つけたと思うと、腹がたってしょうがない。
「光輝兄・・・そこにいたんだ・・・」
控えめな声で瞬が声をかけてきた
「その・・・光くんとは・・・何もないから・・・」
声におびえた色が混ざっている。俺がそういう顔をさせているのか・・・。
「心配するな。別にお前らがどうこうするとは思ってない・・・」
ため息をつくと、びくっとする。
「だったら・・・何で・・・」
何で怒ったのか。人一倍臆病になってしまった最愛の弟はそれを聞き出すことが出来ない。俺もあまり口に出したくなかったけれど、もし言わなかったら瞬は更に心を閉ざす事になる・・・。
「その・・・なんて言えばいいのか・・・お前と光くんが一緒に妖しいことをしているのを見るとだな、なんと言うか、こう・・・」
「こう?」
「・・・俺は情けないな。お前が好きなのは俺だって解ってるはずなのに・・・つまり・・・ヤキモチ・・・というやつらしい。笑いたければ笑うがいいさ」
自棄になって言った。もはや面子なんて気にしていられなかった。俺はただ瞬が大事なだけで。大事なものを見失いたくはなかった。
「光輝兄の・・・馬鹿・・・」
だけど瞬は笑わなかった。目にいっぱいの涙を浮かべていた・・・。
「お、おい、悪かった・・・だから泣くな・・・!」
なんか似たシチュエーションがあったのを思い出した・・・。瞬はぎゅっと俺に抱きつく。けど、何も言わなかった。
奇妙な沈黙だった。不思議と心地よく、優しくなれる気がする。俺は自然と瞬の髪を梳いていた。瞬も大人しく俺に身を任せている・・・。
「散々なデートだったな。これから、どこか行くか・・・」
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