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『24日、暇か?』

ある日の夕食で、光輝兄はこう言った。
それはあまりにも突然のことだった。ふと箸を止めて放った、本当に何の脈絡もない言葉だった・・・。
俺と付き合うようになってから、なんとなく光輝兄は変わった。
常識人だったはずだけど、時々彼は俺を驚かせることがある。


『まだ予定は決まってないけど・・・』

だから俺もこういうことしか出来なかった。
ちなみに、大抵はごろごろして過ごすか、バイトをするかのどっちかだ。
とはいえ、ごろごろしていると友達が誘いに来ることもあるから、完璧に何もしないで一日を過ごすことは少ない。


『そうか、それなら空けといてくれ』

『何か予定でも・・・って、まさか・・・』

本当にさらりと言ってのけたので、俺も流すところだった。
だけど、前もって言ったということで、なんとなくピンときた。
ただの一日にしか思っていなかったから・・・そのまさかであると嬉しい。


『そのまさかだよ。せっかくのイブだ。どこも行かないのは嫌だろう?』

『本当に俺でいいの・・・?』

嬉しいけれど、嬉しすぎて現実味がない。

『人に好きだと抜かしておいて、今更何を言うか?』

そんな俺に呆れたのか、少し彼は苦笑した。
あの日から彼は、苦笑する回数が増えたような気がする。
原因はやっぱり俺なのだろうか。
確かに心当たりはある。ありすぎて困る・・・というようなことを気にしても仕方がない。
そんなことよりも先に、俺にはすることがある。


『解った。空けとくね』

と即答することだった。



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