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「・・・やけに色気づいてるな、お前・・・」
と、教室の窓際でほのかな幸せに浸っていた俺をのぞきこむのが、鷲尾修一郎。
親友と思っていただけで、実は悪友だった。
「色気づいてるって・・・」
「違うのか?なんか今幸せ〜って顔して、むかつく」
むすーっとしている修一郎。俺が幸せなのが嫌らしい。多分・・・面白くないから。彼はそういう奴だ。
「そういうお前こそ鷹司さんが・・・」
その鷹司響子さんは光輝兄の友達(と言っても、彼は否定しているけど)で、かなり危ない女の人である。
結構周りを巻き込むのが好きで、修一郎と共通点が多い。
そんな二人が付き合っているとなると、なおさら厄介な存在になる・・・と思ったけれど、実際のところは互いをおもちゃとしているようで、被害が減った。
もちろん、本人には言わない。言うと、恐ろしいことになる。
「まーな。でも、お前は俺を捨てて光輝さんといちゃつくんだろ?」
修一郎がホモであるはずはないから、別に俺が光輝兄といちゃついたところで、修一郎に何か不都合な点が生じるとは思わないんだけど、彼には何か考えるところがあるらしい。
それは・・・理解したくなかったけれど・・・おそらく・・・。
「お前で遊べないじゃん」
そう、俺『と』遊ぶのではなく、俺『で』遊ぶのが彼の目的だ。
おそらく鷹司さんと二人で俺をおちょくろうという魂胆なんだろう。
「俺で遊んで何したいわけ?」
そんな質問に即答。
「俺が楽しみたいの」
ここであいた口がふさがらなかったのは、言うまでもないことだった。
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今日は世間で言うところのクリスマスイブ。
前もって休む旨は伝えておいたものの、バイト先のコンビニの店長には休まないでくれと泣きつかれ、彼のポケットマネーから同額の小遣いが出るみたいだったけど、俺はそれを断った。
お金は欲しいけど・・・この日は大好きな光輝兄と一緒にいたかった。
せっかく彼が時間を作って俺と居たいと言ってくれたんだ。だから俺はそっちを優先したい・・・。
「そういえば、今日どうするの?」
この日は空けとくように言われたけど、実際のところ、何をするかは決まっていないし、聞かされていない。光輝兄だから何か考えがあるんだろうけれど、どうせだから教えてほしいと思う。
「適当に出かけようかと思っているけど、行きたいところはあるか?」
見ていた新聞から顔を出した。確かに前々から楽しみにしていたんだけど、俺はもともとイブとは無縁だったから、クリスマスを楽しみにしていたというよりは、『光輝兄と一緒にどこか行く』事が楽しみだった。
その上、部屋にクリスマスという様子は全く感じられなく、いつもとまったく一緒で、カレンダー自体は見るから今日が12月24日だとわかっていても、クリスマスイブだとは思えなかった。
しかも彼は、講義があって午前中出かけていたから、不思議と現実味がなかった。
どうやらこの分だとそこまで何か考えてはいなかったらしい。
まぁ、光輝兄は大学のほうで忙しいから仕方ないのかもしれないけど。
ともあれ、今日俺と過ごしたいと言ってくれているようなので、そこまで問題には思わなかった。
俺はただこう答えればいいだけのことだし、それ以外には思いつかなかったから。
「光輝兄と一緒ならどこでもいい」
それが例えホテルであったとしても・・・もちろん、そんなことがあるわけないことは、わかっていますけどね。
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