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「こ、光輝兄・・・・・?」
あまりにも突然の出来事で、それこそドラマを見ているように他人事にしか思えなかったけれど、そんな俺の気持ちが伝わったのだろうか?
微笑が段々と苦笑に変化しながら、兄はもう一度俺の唇に自分のを落とした。
艶を含んだそれは軽く触れるだけだったけれど、触れたところが甘く、そして焼けつくように熱く感じた。
酔っ払って何も考えることが出来なかった。そして、ふと我に返って気づいた・・・。
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二度目にふと我に返ってしまった。
瞬にキスしてしまった。
俺自身は残念ながらキスは初めてではないけれど、彼はどうだったんだろうか?
ひょっとして・・・聞く前にしてしまった自分を恨む。
いや、普通そういうことは聞かないだろう・・・と思い直す。
いくら俺だってそこまでデリカシーにかけることはできない。
というか、こんなことになるなら、キスなんかしておかなければよかった。
女と付き合うべきではなかった。
あ、それ以前に、もし彼がすでに・・・としてたら・・・いや、そんなことがあるはずはない。
だけど、彼は結構モテるからそういう話がないというのもおかしいわけで・・・やばい、俺は今混乱している。
それ以前に、これは言い訳でしかないけれど、本当にしてしまうとは思っていなかった。
少し位いつもの関係を越えようとは思っていたけれど、あくまでもそれは『考えていた』つもりのはずだった。
目をつぶらせて軽く耳に息を吹きかけてやろうと思っていたはずだった。
だけど俺は今何も考えずにやってしまった。つまりは、衝動的にしてしまったということだ・・・。
きっかけというのはいろいろあるんだろうけれども、やっぱり瞬の言葉が大きかったんだと思う。
本気で好きでいてくれていることを改めて知ったから、ついしたくなってしまった・・・のかもしれない。
もういいや、そういうことにしておこう。これは考え出したらキリがない話だ。
だけど、実際は俺自身びっくりしてしまう。確かに瞬が風邪引いたとき、理由があって彼の身体に触れることがあったときなど、彼を見てムラムラして困ったときはあったけれど、そこまで情動するものではないと思っていた。
今まで抑えがきかないということはなかったはずだ。弟として大切とか、いろいろ言い訳をしていたけれど、まあ、キスをしたいと思うくらいは大切だったようだ。
本当に大切なものは、知らない間に自分の中に入ってくるということを、身を持って実感することになるとは思わなかった。
そのうち男同士の壁すら越えることになると、ある程度覚悟に似た諦めを持っていたけれど、ここまで早くに訪れようとは、思わなかった。
キスの一つや二つ・・・なのかもしれないが、俺たちの間ではそれは決して遊びとしてはすることができず、本当に特別な意味になってしまうのだ。
これが双方とも意識していなければ、コミュニケーションの一貫として、お遊びとしてできただろう。
しかし、困ったことに、始末の悪いことに、俺も瞬も相当互いを意識している。
心臓の音ばかりが大きくて、外界の鼓動など、微塵たりとも感じることができない。
果たして今俺はこの世界に存在するのだろうか?自分だけ違う世界に飛んでいってしまったのではなかろうか?
何か反応してくれれば俺も返しようがあったんだけど、瞬はずっと固まっていた。
お願いだから何か言ってほしい。
嫌だったなら嫌と言ってほしい。
そうしてくれないと、俺もどうしたらいいのかが分からない。
しばらく待っていたら、やっと目を開けて、ボーっとしたような感じで口を開いた・・・。
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