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「俺の・・・ファーストキス・・・」
紛れもなく、どう考えても俺の初めてのキスだった。
不意打ちで彼に奪われた。
キスの一つや二つと言いそうだけど、せめて好きな人とのキスは目を開けてやりたかった。
じっくりと光輝兄を目に焼き付けておきたかったのに・・・。
「・・・嫌だったか・・・?」
困ったように聞かれ、俺は慌てて首を振る。
彼とのキスが嫌だなんて、そんなこと、あるはずがない。
どう考えても、ありえない。
だけど、今された嬉しさよりも、苦しさのほうが勝っている。
この暴れる胸をどうやって押さえ込もうか。
いつでも俺の心臓は燃えて消し炭となるだろう。
「嫌じゃないけど・・・するなら言ってくれれば・・・」
俺だって心の準備が出来たのに。ぎゅっと兄を抱きしめて彼のキスを待とうと思ったのに・・・。
本当に余裕がなかった。
もしすでにしていたら、ここまで慌てることはなかったのかもしれない。
本当にファーストキスだから、俺はどうしたらいいのかが分からない。
すでに他の人としていれば・・・ということは考えたくない。
だけど、多分そんなこといわれたら、もっとパニックを起こしていた。
結局俺はどんなことがあっても相当混乱することになる。
「もしそう言ったら、お前は心の準備が・・・とか言って断るだろう?」
人の悪い笑みを浮かべて彼は聞いてきた。悔しいけれど・・・まさしく彼の言うとおりだ。
俺のほうが好きになったくせに、思いを受け入れてくれたら、その時は嬉しいけれど、それはそれでどうしてもその後の展開を考えて尻込みしてしまう。
もし俺に幻滅したら・・・そんなことを考えてしまうから、どうしてもそんな行為より、側にいてくれるほうを望んでしまう。
そのせいか、いつも光輝兄に無理をさせてしまっている。
夏だって壁を壊そうとしたのは、彼のほうだった・・・それなのに俺は拒絶してしまった・・・なのに、彼は何も文句を言わないで・・・。
「確かに・・・」
彼のおかげで俺は前に進めているのかもしれない。
彼が時々強引に俺を引っ張ってくれているから、なんとかやっていけるのかもしれない。
もし光輝兄でなければ、俺はずっと同じ場所にとどまっていただろう。
「だから、俺のほうからさせてもらったんだ」
照れくさそうに言われ、沈みかけていた俺の気持ちも一気に浮上した。
少なくとも彼は俺とのキスが平気というくらいには思っているようだったから。
だから、つい俺の口も緩んでしまう。
「ありがと、光輝兄」
すると光輝兄は・・・。
「もう一回・・・していいか?」
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