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本当に・・・大切すぎて困ってしまう。
人の気持ちに順位や優劣をつけても仕方ないのかもしれないけれど、恐らく俺のほうが瞬のことを大切に想っているだろう。
付き合うようなことになって解ったことだが、多分、瞬は何があっても俺から離れる用意が出来ている。
俺の負担にならないように、それが俺のためだと勘違いして・・・ふと考えてみたけれど、彼にとっての心地良い距離は、俺の思っているものより遠いのかもしれない。
だけど、俺はお前がいなくなったら平気なのだろうか?
いや・・・平気であるはずがない。
みっともない真似をしても彼を側に縛り付けてしまうだろう。
例えそれが彼にとって不幸でしかなくても、俺はずっと閉じ込めてしまうかもしれない。
例えそれが恨みや憎しみであっても、俺にしか目を向けさせない。
自分でも不思議に思うけれど、そんな男なんだよ、俺は・・・。
瞬は俺のきれいな部分しか見ていない。
俺も、彼に嫌われたくはないから、優しい兄であろうとしている。
だから、俺なんかを好きになる。
俺のその身勝手な部分を知ったら・・・呆れるかもしれない。
いや、知っても仕方がないか。
知ったところで瞬に選択をさせるつもりはない。例えそれが俺のエゴだとしても・・・。
勿論瞬は嫌だといわないだろう。言わせるつもりもない。
少なくとも、俺が知らない間に育ててしまったこの気持ちを暴いてしまった責任は取ってもらわないといけない。
でもまぁ・・・そうだな。当分は瞬には笑っていてほしいと思う。
イルミネーションの輝きも失せるほど、明るい笑顔を見せてほしい。それもまた俺の本心だ。
今まで辛い思いをさせてきたからこそ、彼には幸せになってほしい。
俺がいることで彼が幸せになれるのなら、俺は出来る限りのことをしよう。
「光輝・・・兄?」
またもや無言になった俺を、不審に思ったらしい。今日の俺は無言になってばかりだ。そう思うのも仕方のないことだろう。
「いや、寒いからそろそろ家に帰ろう」
今日は彼への気持ちを改めて考え直すいいきっかけとなった。その余韻を秘めたまま・・・というのもあるけど。
「え、ちょっと・・・まだイブは・・・」
どうやら彼は日が変わるまで遊び続けるつもりであるらしい。
バイト帰りにここまで遊ぶとは、本当に元気のいい弟で、嬉しい反面困る部分もある。
まぁ、実際にそんなことしたら職質されると思うけど。
「邪魔はされたくないからな・・・」
イブのデートと言えば響きはいいけれど、実際のところは人だらけのところを歩いているに過ぎなく、かなり鬱陶しいものがある。
それに・・・瞬の奴に変な虫がついては困る。
事実、さっきからずっと弟を狙っている女がいて、けん制するのが大変だ。
そんな俺の苦労を・・・彼は知らないだろう。
「じゃ、邪魔って・・・」
「俺と二人きりは嫌なのか?」
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