FIFTEENTH



今日行った所を順々に探し回ったけれど、光輝兄は見つからなかった。
家に帰っているのかと思ったけれど、そこにもいなかった。
こういう時光輝兄はどこにいるのか・・・何も知らない自分に嫌気がさすけれど、そうやって落ち込む暇などない。
ただ落ち込んでいても、光輝兄はどこか遠くに行ってしまう。この自分の気持ちよりも・・・光輝兄を探すのが先だった。

そこで、ふと一つの場所が思い浮かんだ。町外れにある一つの公園・・・何の特徴もないところだけど、俺たちにとっては色々と想い出の存在する場所・・・。
どうしてこんなに大切な場所を忘れていたんだろう?それに、探していない場所はそこだけで・・・俺は賭けるしかなかった。




「光輝・・・兄!」



その賭けは幸いにも成功した。決して間違えるはずのない後姿がそこにある。
呼ばれて彼は、ゆっくりと振り返る。無表情だった。怒っているのかすらも分からず、俺は動けなくなる。




(とにかく、まずはごめんなさいだ)



ひたすら謝って許してもらわなければならない。光輝兄を信じなかったこと、彼の気持ちを踏みにじったことを、償わなければならない。
でも今出来ることは一つしかない。だからまず謝ろう・・・そう思ったけれど、身体は勝手に動いて、気づけば光輝兄に抱きついていた。


「瞬・・・?」

「ごめんなさい!ごめんなさい!」

頭が真っ白だった。とにかく俺は謝ることしか出来なかった。

「光輝兄・・・せっかく俺のために・・・なのに・・・なのに・・・」

気がつけば涙があふれている。一度堰を破って出たそれは、決して止まることを知らない。
ただひたすら流れ続ける。男の癖に情けないと思ったけれど、光輝兄に捨てられる恐怖で頭が一杯だった。


「俺が馬鹿で・・・変なやきもちやいて・・・」

なおも謝ろうとする俺を強引に止め、光輝兄は強く抱きしめる。
暖かかった。大好きな場所だった。ずっとあこがれていて、願いが叶ってもその気持ちが軽くなることはなかった。どんなに光輝兄に嫌われたとしても、俺の居場所はもうここしかない・・・それを改めて思う。


「馬鹿なのは・・・俺だよ。瞬にはこんな顔、させたくなかったのに、笑っていてほしかったのに、こんなことになっちまった・・・」

「それは、光輝兄が、俺を・・・」

光輝兄はただ俺を祝おうとしてくれただけなのだ。それなのに俺は、くだらないやきもちで光輝兄を疑って、こんな顔をさせている。
俺が彼を信じていれば、何も問題は起こらなかったのだ。


「でも、泣かせたら意味はないだろう・・・?」

苦しそうにつぶやく光輝兄に、俺の胸は締め付けられる。いつも側にいて支えてくれた光輝兄にそんな顔をさせたのは、俺なんだ・・・。

「でも、俺が光輝兄を信じなかったから・・・!」



「何でいつも自分を責める?」



強い口調に一瞬震える俺。それは光輝兄に直に伝わってしまったようだ。『怒ってるんじゃない』と、困ったように話す。

「今日はどう考えたって悪いのは俺だろう?最初から言っておけば瞬だって不安になんかならなかったのに」

それから光輝兄は俺を抱きしめる力を強くする。



「本当に俺はお前以外とは付き合っていないからな」





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