First
「似合う・・・?」
「・・・・・・・・」
「その・・・変かな・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「あのー、似合わないなら似合わないと言ってくれたほうが・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「あー・・・要は似合わないってこと・・・」
トーンが下がったその言葉で俺は現実に戻った。
目の前の光景にぼーとしていたので、頭を整理することにした。ここはデパートで、試着室。
俺は休みを使ってレポートを書き上げようとしていたけれど、弟の浴衣を買うのにつき合わされていたんだった。一人で行けと言うと、寂しそうだったんで、仕方なくついていく事にしたのだ。
夏の終わりということや、彼の好みの問題もあり、なかなかいいのが見つからず、探すのに時間がかかった。やっと満足のいくものが見つかり、彼は俺に試着した姿を見せている。そんなところだ。
「か・・・」
「か・・・?」
「かわ・・・」
「かわ・・・?」
「かわ・・・変わった柄だな・・・」
思いついた言葉が、のどから出てくれない。
自分でもベタ過ぎるとはおもうけれど、口に出たのは明らかな地雷。
彼の顔が冷えていくのを感じる。俺の言葉に相当ショックを受けているんだろう。
そんな彼に俺は苦笑しながら言ってやる。
「冗談。似合うよ」
似合うのはいいのだが、似合いすぎて困る。
目のやり場に困るとは、こんな場面を言うのだろう・・・漠然とそう思った。
一応試着するものがそういう性質のものだから、服の上から軽く試着しているという形になっているが、もしこれが素肌の上からだったら・・・。
心臓に悪い。
本末転倒だといわれても、これを着せて外に歩かせるわけにはいかない。悪い虫がつく。
それより、こんなに瞬は可愛かったのだろうか?
人が言うには、カッコ可愛い系の分類に属するという噂があるけれども、いつも見ている顔だし、男だからそんなに意識はしていなかった。こんなに可愛いのなら男でも・・・いや、瞬は男だ!
でも、決して貧弱ではない。俺よりは低いけど、平均よりは(多分)ちょっと高く、すらりとした身体のおかげで浴衣を着ると色っぽく・・・って、ちょっと待て。
男にそんな感情を抱いていいのか!なんて一人悶絶している俺を知ったら、彼はどう思うのだろうか・・・。
一応はつきあっているのにそんなこと言っても仕方がないとツッコミを入れるのだろうか・・・
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