Thirteenth



その言葉は真実だ。あれから俺は女の子を好きになれなくなった。



魅力を感じないのだ。



今まで魅力だと思っていたところに、興味をもてなくなった。
今でも、誰が美人でそうでないかという、客観的な区別はつくけれども、
美人を見るたびに、瞬と比較するという、困った事態も起きている。
さらに、瞬のほうがかっこいい・きれい・可愛いなどと思うという兄馬鹿を通り越して始末に終えない状況になってきている。
つまりは、女の子ではなく、男の子のことを考えていた。

せめてもの幸いは「男性」に魅力を感じるわけではないことだ。
瞬に黙ってそういうサイトを覗いたことがあるんだけど、開いて数秒で閉じた
(なお、履歴を消さなかったから瞬に見つかって怒られた)
瞬とは付き合っても、さすがにホモにはなりたくない・・・これは変わらない。


懐いてくる修一郎くんも可愛いとは思うのだが、それだけの話だ。
それ以上の気持ちにはなることはない・・・いや、彼の場合、そういうコミュニケーションが好きなだけで、本気で俺らと恋愛したいとは思えないが。瞬もそれを解っているから、黙ってされているのだろう。
だからと言って、何で黙ってされている必要があるのか。思い出しただけで腹のたつ。あの時の親友同士にしか見られないようなほのかに甘酸っぱい空気は何だ!・・・ってヤキモチやいても仕方ないな。
瞬はちゃんと俺が好きだと言ってくれているのに。




それに、瞬にとって、修一郎くんみたいな親友の存在は必要なのかもしれない。
ありのままの彼を受け止める、それは彼にしか出来ない・・・解ってはいるんだけど・・・なんか悔しい。
俺と一緒にいるときの瞬は、あそこまで無防備ではない。甘えてはいても、常にそこから一歩はなれる用意がある。多分、修一郎くんに心を許しきっているのだ。


「そんな渋い顔して・・・何・・・?」



浴衣は失敗だったな。悪い虫がついた。大人気ないとわかってはいるものの、仕返しの一つや二つ、したくなっても仕方がないだろう。

「修一郎くん・・・可愛かったな」

「え・・・?」

「お前に触られてるときの彼、見たか?すごく穏やかそうな顔だった・・・」

嘘ではない。ただ触りあっているだけなら、俺だってそこまで腹立たなかったと思う。
修一郎くんにとって、瞬は特別なのだ。

だからそこまでの悪戯が出来る。

もしあの時俺がとんでもない答えを返していたら、確実に殺されていた。


「そ、それは・・・修一郎・・・意外な展開に目がないから・・・」

二人が共犯である事に、俺が気づいていないとでも思ったのだろうか?あの彼のウインク、確かに俺は見た。

「俺・・・修一郎くんのこと、好きだな・・・」

悔しいが、それは認めざるを得ない。彼にヤキモチを焼くのは、それだけ俺が評価しているからだ。
もし彼がくだらない男であれば、ヤキモチなんて焼く必要がない。


「俺・・・まさか・・・いらなくなった・・・?」

「可愛い弟『みたい』なものさ。もちろん『弟』も『恋人』もお前以外にいらないけどな」

くしゃっと頭をかき回してやると、安心したようだ。

「ごめんなさい・・・俺、やきもち焼いて欲しくて・・・」

「だろうと思った。そういう展開に目がない修一郎くんのことだ。食いつかないわけがないさ。多分俺らが止めなければ、やられても文句は言わなかっただろうな」

今頃『私を除け者にするなんてっ!』とこってり絞られている彼を想像して、苦笑する。
しかし、彼はそれすらも楽しんでいることだろう。
そして鷹司も絞る事に楽しみを覚えていることは想像に容易いことで・・・ひょっとして、意気投合しているかもしれない。

あまり健全ではないが。

「まさか!奴は女好きだって」

確かにな。だが、性癖とそれは別物だ・・・。

「光輝兄、他の男の話はいいだろ!?」

「まさかヤキモチ?」

「そんなに修一郎が好きなら、彼と付き合えばいいじゃん!」





瞬は拗ねてしまった・・・(ちなみに、もし俺が修一郎くんと付き合いたいといったところで、彼は面白くないと言って相手にしないだろう)。
ともあれ、男に興味のない俺だが、瞬の想いは受け入れた。
瞬の思っているとおり、最初は同情の部分もあったんだと思う。
痛くなるくらいに必死な彼にほだされてしまった、と。



でも、本当に同情だけだったのだろうか?



同情だけで男を愛することが出来るのだろうか?



まだそれは解らない。



でも・・・これだけは断言できる。






(例え理由が同情であったとしても、それが『お前』だからだよ・・・)





もし他の男だったら、お願いされても付き合うまい。



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