Third



瞬の友達の鷲尾修一郎くんが遊びに来て、瞬を連れ出した後、俺は押入れをごそごそと探していた。
一昨年くらいに買った浴衣があったはずだ・・・と探していると、何とか見つかった。
実は安売りをしていてつい買ってしまったんだけど・・・流行に左右されない柄を買っておいてよかった。
流行の柄だと、次の年に着れなくて困る。俺は流行を無視するつもりはないけれど、どっちかというと自分にとっていい物を選びたい。


最近、瞬のカッコ可愛さに磨きがかかっている気がする。些細な仕草にどきりとしてしまうときすらある。俺は彼の隣にいるのにふさわしい人間でいられるだろうか・・・?





「光輝さん、こんちは」

「・・・瞬はどうしたのかい?」

修一郎くんが来たけれど、瞬はいなかった。一体どうしたのだろう?

「今回は光輝さんと話したかったから、ちょっと捨ててきました」

『捨ててきた』という言葉に苦笑しながら、彼の真意を探った。

「左目・・・見えないんですか・・・?」





「興味本位か?」

まずは聞き返すことを選んだ。
彼がどうしてそれを知っているかはどうでもいい。
瞬に聞いたか、俺の左目の異常に感づいたかのどちらかだろう。
それよりも重要なのは、そんなことを聞く意味だ。


わざわざ知っている事実を聞くのだから、彼が知りたいのはその裏にあるものだろう。



「いや・・・瞬がそれで自分を追い詰めたのを知ってるから・・・」


「そうか、それで俺に話が・・・。君の知るとおりだ。俺のこの左目は見えない・・・まぁ、光を感じるまでには回復してきたんだけど、使い物にならないことには変わらないな」




「やっぱり・・・瞬の・・・せいなんですか・・・」




「そうだな。もし瞬とデートしなければ、事故に遭うこともなかった」



この言葉に修一郎くんが非難するだろうことは予測がついていた。そして、その通り、彼は非難の視線を浴びせる。親友想いであろう彼は、俺に『瞬のせいでない』と言わせるつもりだったのだろう。
だが、残酷に聞こえるかもしれないが、あえて俺は『事実』を言わせてもらった。
確かに瞬は悪くはない。悪いのは酔払い運転をした男だ。

だが、瞬が俺に告白しなければ、デートをすることもなかった。

それは紛れもない真実だ。仮に告白しなくても、事故で目を失う可能性は皆無ではないが、『瞬とデートして事故が起こった』という事実から目を逸らしてはいけない。原因が誰であるかと、悪いのは誰かは別問題なのだ。
勿論、修一郎くんの気持ちは、瞬の兄として嬉しい。俺が修一郎くんの立場なら、同じことを考えるだろう。しかし、俺たち・・・いや、俺はその事実を受け入れることが大切だと思っている。瞬も時間をかけてそうして欲しい。それに・・・


「だがな、俺はそれを恨んではいないさ。むしろ、誇りに思っている。左目一つで瞬が助かったんだからな。唯一それを悔やむとしたら・・・瞬がそれに負い目を感じているんじゃないかってことだ」



NEXT



TOP   INDEX