06
「お前ら、仲いいんだなぁ。まるで夫婦みたい」
俺と弥生が・・・というより、俺が他人と話しているとかなり不思議なものがあるらしい。
別に根暗というわけでもないんだが、そんなことを思っているクラスメイト、如月の軽口を睨み殺して封じる。
「おぉ恐。珍しく河合がべったりしてるからからかってやっただけなのに・・・」
「そんなに河合くんって恐いの?」
弥生の純粋な疑問に、呆気に取られる如月。
「え・・・?そういう弥生ちゃんは恐くないの?ほーんと、こいつ、目つき悪いだろ?頭はいいのに冷たい。
勉強なんか教えてくれないし・・・お願いしても、『自分でやれ』その一言」
「そうなんだ。そんな感じはしないけど・・・」
中学のころ弥生には少し勉強を教えていたから、今でもそのイメージを引っ張っているのだろう。
まぁ、それは弥生限定だったから、如月の言葉は全く外れているわけではないのだが。
「それはこいつの本性を知らないから。顔の造り自体は悪くないんだから、もう少し愛想をよくすればポイントは高いんだけどな・・・」
「そう・・・河合くんは優しいよ・・・」
褒めているような感じはしないが、別に如月に文句を言うつもりはない。愛想が悪いのは生まれつきなんだから仕方が無いとしても、優しくないのは事実。
俺が否定する前にしっかりと如月が否定してくれた。
「いや、それは刷り込みだな。周りの目があるから、優しくしているように見せてるんだ、きっと。
って、そんな演技だって普段の河合はしないって。いったい何があったんだ!素行不良じゃないんだけど・・・逆にそれが。
ほら、何か悪さしていれば『何だこいつ』で済むだろ?ほんといつも何も言わないし、変な冗談を言うと殺気を放つし。側にいると食われるよ?」
本人は冗談のつもりだったんだろう。そんなことくらい分かってる。
本気だと思っていたら、そんなことはいえるはずがない。でも、俺は冗談といって笑えないんだよ。心当たりがありすぎるから・・・。
「やだな、そんなわけ、ないじゃない」
実際にはあったがな。しかし、そんなことを認めることはできないので、俺と弥生はそろって苦笑する。
「あーあ、仲良すぎてからかう気にもなれないや」
それだけぼやいて如月は去っていった・・・。
「心臓が凍ると思ったわ」
「冷や汗ものだよね」
「何がおかしい?」
俺は心臓を鎮めるのに必死である一方で、笑いをこらえるのに必死である弥生。どうしてそこまで笑っていられるんだろうか?
「だって、今の君、かなり焦ってるもの」
「そりゃなぁ、俺たちのこと、あいつは知らないんだろうけど・・・」
「あのことは忘れようって・・・」
「馬鹿。無理だよ、忘れられるもんか。どんなに忘れたくても・・・俺の中から消えてくれないんだ」
俺が苦しむべきなのは知っている。でも・・・この心、知ってほしかった。
7
TOP INDEX