その1.5:夏目のちょっと複雑な気持ち


とはいえ、歩の大親友、夏目は複雑な気持ちなのである。
彼らは非常に仲がよく、カップルだと断言
(疑惑ではない)されることなど日常茶飯事である。
もちろんカップルではないが、ちょっとした性的関係に及んでしまったこともある。


彼は、歩になら挿入されてもいいと思っているし(といっても彼は攻なのである)、痴態を見せてもいいと思っている。
実際に彼の愛撫で何度イカされてきたことか。
本当に気持ちよくて、理性が飛ぶことはしょっちゅうである。
本来は受である歩が自分のために攻になってくれるのはうれしい。


とにかく、それだけ近い関係なのだ。


一応歩も自分に入れようとはしてくれているのだが、その都度断ってきた。
倉科に会ったとき絶対後悔するから。
そこまで努力してきたから、本当は倉科の出現は嬉しいはずなのである。



だが、素直に喜べない自分がいる。



これは嫉妬か。
俺は歩のことが好きで、彼に抱かれたく、先生など渡さずに独占してしまいたいから。
いや、そういうわけだからではない。なぜなら・・・



夏目は純粋に倉科のことを心配しているのだ。歩を知り尽くしているからこそ。




歩が生まれ変わりだということは信じている。
前自殺した理由も知っている。
だから彼には幸せになってもらいたい。
が、性格は悪すぎる。



問題はそこだ。



歩の容姿は非常に可愛い。
本当はとてもやさしくて、守ってやりたいようなやつでさえある。
しかし困ったことに、表に出てくる彼の性格は凶悪なのだ。
どのくらいかというと、邪悪といえば大抵の人は納得するほどなのである。
だが、それは生まれ変わった反動なのだろう。
冷酷な人間がはるかに可愛く見えるほどである。

まぁ、夏目はそんなところも好きだから全く問題はないが、倉科先生はどうだろうか。
彼にかかる災いが手に取るように分かり、彼はため息をつく・・・。




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