その6


最近、夏目と一緒にいる時間が少なくなってきたように思う。
先生と一緒にいる時間が増えてきたからということは否定できないだろう。
だから僕は、放課後以外はほぼ夏目といるようにしている。できる限り一緒にいたいから。



でも、最近ふと思うことがある。



今までがべったりくっつきすぎで、知らない間に僕は夏目の時間を奪い去ってしまってたんではないだろうか。
夏目は、一般的に見れば結構かっこいいほうだ。
もてるほうだといっても差し支えないが、なぜか誰かと付き合ったというのは聞いたことがない。
でも、この前好きな人がいるような話し方をしていた気がした。



あのときの寂しそうな目は忘れることができない。



夏目の好きな人は一体誰だろうか。なんか寂しいが、これが恋人だと僕に紹介する日はくるのだろうか。僕は聞いてみることにした。







「ねぇ、夏目って好きな人いるの?」

一瞬夏目の動きが止まったような気がしたが、気のせいか。抱きつきながら答える。

「やだな〜歩に決まってるじゃないか」

わーい、といって僕も抱きつく。そこに居合わせたクラスの皆さんはその光景を見飽きているらしいので、その場から立ち去る。
友人曰く、僕らの出す空気は毒らしい。そばにいるだけで自分たちの体を蝕んでいくらしい。
へんなの。僕らはただの親友なのに。他の邪魔者がいなくなったところで、僕はずっと言おうと思っていたことを言った。




「ごめんね。
いつも夏目にべったりつきまとっていて。
やりたいこともあっただろうに。
でも、これからは僕にかまわず好きなことをしていいよ。
いつも一緒というわけにはいかなくなるし、僕ももうちょっと自立しなければいけないと思うからね」


本当はいっしょにいてほしかったが、夏目を困らせたくなかった。
だけど、それを聞いた途端、夏目の顔が青くなったような気がした。そして苦しそうに遠くを見つめて言った。





「そろそろか・・・」




僕にはそのとき何が言いたいのか分からなかった。



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