その7
歩と夏目の様子がおかしい。それは俺にもわかった。
俺のところに夏目が来てからよく二人を見てみると、二人の間には独特の甘い空気があったのに気付いた。
しかし、数日で二人の間に壁ができてしまったようだ。
そのうえ、学校を休んでしまった。
熱とは本人から連絡があったが、一週間経っても戻る気配がない。
ひょっとして俺のせいだろうか。
しかし、言い訳がましいが、俺と会った次の日の時点では二人には異常がなかった。
二人に何があったのだろうか。
教師としては二人のプライベートに触れるのは好ましくはないが、これ以上放っておくとクラスにも悪影響が起こるだろう。
だから俺は教師として、恋人として、歩に聞くことにした。
「一体、お前たちの間に何があったんだ?」
しかし、それは歩自身も悩んでいるらしく、分からないと答えた。
「だけど、何もないのに仲が悪くなるようなことはないだろう。おまけに夏目は学校まで休んでいる。お前あいつに何か言ったのか?」
歩は相当考えていたが、ふと思い出して、ぽつぽつと話し出す。
「僕は・・・僕にかまわず好きなことをしていいと言ったくらいだけど・・・あとはいつも一緒というわけにはいかなくなるというくらいしか」
なるほど、多分夏目はその言葉に相当ショックを受けたのだろう。
想いがかなわないと分かっているゆえに、ずっと親友の座に固執していたのかもしれない。
だから、そういわれれば拒絶の意に取っても仕方のないことだ。
たとえ歩本人にその意識はなくても、あまりに無神経すぎる。俺は本気で怒った。これでは夏目に対して失礼だ。
「おまえな!!分からないのか、その一言で夏目の気持ちを徹底的に踏みにじってしまったっていうことを。お前の言ったことは、自分から離れろって言っているようなものなんだぞ」
離れろって言ったことは理解しているようだが、それが夏目を傷つけた理由だとは、歩はまだ分からないようだ。聞き返してくる。
「なんで?僕はただ夏目のために時間を使って欲しいから」
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