13話

紆余曲折しながらもお互いのことが必要だと気付いた二人は、まったりと愛の語らいを・・・ということは全くなく、南が森川に問い詰められるという、甘さとは無縁の展開となっていた。

「それで、どうして俺たちの仲をぶち壊したんだ?」

南が森川のことを必要としていることは分かったが、動いたきっかけは何だろうか?

「清原さんに焚き付けられたから・・・」

正直に言うなよ、心の中で突っ込んだ。
だけど、あの人ならやりそうだ・・・というか、南にそんなことができるのは、彼しかいない。
毒毛が抜け、納得してしまう自分に苦笑する。だけど、そうしなかったのは南の顔が真剣だったからだ。

「まぁ、それもあったけど、ホントは何とかしなければいけないとは思ってたんだ。
でも、どうすればいいのか全然分からなくて・・・。
それに、あんなことをしたからどうしても戻ってくれなんて言えなかったんだ。
そのときに清原さんが来て、全く相手にされなくなるって言われたから・・・ヤバイって思った」

「だけど、男同士は気持ち悪いんじゃなかったっけ?」

言葉に刺が生えている。神崎ではなく南を選んだ森川だったが、まだ南に対するわだかまりが残っている。それがこれである。
あの時南に言われたことは、いまだに心の傷として残っている。
それさえなければ森川は彼から離れることはなかったのに・・・。

「いや・・・嫌悪ってのじゃないんだ。何で自分が男を抱くなんか分からないし、
今まで勢いで抱いた女ってのはその場限りの付き合いだったから・・・あ、最近はそんな真似してないからな!?」

森川に睨まれ、大慌てで弁解する南。

「で、まぁ、その、お前とは・・・勢いで・・・ご、ゴメンナサイ・・・」

一気に委縮する南が可愛いと思ったのは、ヒミツの話。

「とにかく、俺は男とやったことないし、ダチのお前を抱いたことで、これから先自分が自分でなくなると思うと何か不安で・・・だからあんな言葉になっちまったんだ。それに、なんだか悲しくて・・・。
バカだよな、お前がそこまで傷つくとは思わなかったんだ・・・。
だけど、あの人に俺とお前は違うって言われてからは、取り返しのつかないことを言ってしまったことに気付いて・・・。
今更調子のいいこととは分かってる。だけど、俺の側にいてくれ!
お前に捨てられると俺は独りになってしまう・・・前だったらそれでも平気だったのに、お前と知り合ってからは、知らない間にそうなることが恐くなったんだ・・・」

いつも女をはべらしている南が、森川と神崎がつき合っている間にそんなことを抱えているとは思わなかった。
ここまで思いつめていたことはわからなかった。
普段は憎らしいほどかっこいいくせに、たかが自分のことでここまで情けなくなる南が可愛くも思えたし、愛しくも思えた。

「やれやれ・・・仕方ないから、お前の側にいてやるよ。
だけど、女は作るなよ?振られるたびにあんなことされちゃ、俺の身体が持たないからな」

だから、この辺で許してやることにした。
本当はそこまで想ってくれるのは嬉しいのだが、相手が精神的お子様なので、下手にそれを見せると調子付く恐れがある。
展開上そうなっただけでまだ決めた訳ではないが、いくら自分が受けだとしても主導権を渡すつもりはないので、最初に釘を刺すことにする。
案の定効果があったらしく、南がしゅんとする。

「う・・・わかった・・・そばにいてくれるだけでいいから・・・」

ほんとか?あえてそれは言わなかった。
いや、言う必要もなかった。
これは嘘をついている南の目ではない。
精一杯の想いが込められている。
無駄に南と一緒に過ごしていない森川にはそれがすぐにわかったのだった・・・。




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